行き道

>そろそろ「クラブ活動」しよう


 というお誘いは、だれからともなく、2ヶ月に一度くらいの割合で、グループラインに現れる。

 「クラブ活動」=みんなで、遊ぶこと。


>秋だしね

>いいね

>どこ行く

>なにする


 4人の休みが合う日をさがす。

 果物狩り。

 地元のまつり。

 コスモス畑。

 美術鑑賞。

 有名なパン屋。

 

 行き先や、目的は、そのときどきの気分や、ノリで決まる。

 今回は、動物園。

 車出しは、ケーさん。だいたいこれも、なんとなくの持ち回り。

 そこそこ大人の4人あそびは、いつも、ゆるゆる。


 当日は、晴れた。

 9月下旬の空は、すうーっと高い。

 だというのに、行く手の山々の上にかかっているのは、入道雲だ。

 今年は、いつまでも夏気分が抜けない西日本某地方である。


 運転は、いつも元気な体育会系、ケーさん。

 助手席は、おしゃべり上手なおみやさん。

 後部座席にすわるのは、気づかい上手のしおちゃんと、うすらぼけっとしたテンテンだ。


「この前、友だちに会ってね……」

 動物園へ向かう道すがら、おみやさんがしゃべり始めた。

 

「その子の友だちが、ある日、ひとりで車を運転してて。〇〇ダムの近くを通りかかったら、後ろの席から男女二人組の声がするわけ。『ねえ、寄っていこう』『行こう、行こう』って」


 素晴らしい秋晴れである。

 気温は、へたしたら30度ある。

 秋って言うか、残・残・残暑。RADWIMPSかよ。

 なにせ、4人中3人はまだ半袖を着ているくらい。


「で、なんだか頭がぼやっとするもんだから、ダムのわきの駐車場に車を止めて、旦那さんに電話したんだってさ。『後ろから、男女の声がするんやけど』」

 

 ちなみに、長袖を着ているのはテンテンだが、これは、1週間くらい前に買った長袖Tシャツを、早く着てみたかったから。

 少々、後悔している。暑い。


「そしたらダンナさんが、『はよ、車出せ! そっから離れろ!』って言って、それではっとして発車させてぶじに家に帰ったらしいんよね」


 動物園は、郊外にあるから、少しは涼しいと良いなあ。


「で、その話をしてくれた友だちはね、『まあ、その子の思いすごしやろうけどね!』って、あははって笑うのよ。でも、わたし、そういうの聞いたら、忘れられないタイプなのよ。実家に帰るときに、〇〇ダムの横を通るのよ。どうしてくれるん? って思って!」

 

 年上を感じさせないキュートなおみやさんは、ふんすふんすと憤慨ふんがいしている。


 ドライブに音楽はつきもの。

 BGMにと、ケーさんのスマホから飛ばしている楽曲が、車のスピーカーから流れている。

 奇しくも、かかっているのは、山口百恵の『曼珠沙華』。

 別名、彼岸花だ。

 死人花しびとばなとも、地獄花じごくばなとも言うよ。


 秋だからね。

 秋だけどね。

 せめて『秋桜コスモス』であってほしかった……。


 〇〇ダムの横を通るあの道ね……、テンテンも、ときどき使うんですわ。


 ――そういうの聞いたら、忘れられないタイプなんよ。


 いや、ほんと、どうしてくれるん?


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る