宇宙人ですが、恋をしてもいいですか?

テルテル

プロローグ




警告音が耳障りに鳴り響く。


「...ダメカ」


僕は気が遠くなりながらも、なんとか軌道を立て直そうと操縦桿を握った。だがもう墜落は免れないだろう


「...アレハ」


無限に広がる真っ黒な宇宙空間の中で青く輝く星を見つけ、僕は目を奪われた。あの星なら生活に必要な酸素や食料などは確保できると確信した


「キンキュウチャクリク....」


なんとか軌道を変更し、あの星に向かうようにセッティングするとまもなく宇宙船の動作も効かなくなった。だが軌道自体は変更できたため、宇宙船は勢いよく青い星に向かっていった。

あの星には何があるのだろうか、僕たちとは違う生命体が住んでいるのか、あるいはただ植物が生い茂っているだけなのか。


大気圏に突入すると宇宙船の周りは摩擦によって赤くなっていき、宇宙船内もグラグラと揺れていた。僕は衝撃に備えて着陸の成功を祈った


数分後に揺れが収まり、すぐに自分の身体を見た。特に怪我もなく無事だったようだ


「.....セイコウ?」


着陸ができたようで、宇宙船から顔を出すと大きな建物が建っていた。建築物があるという情報から、この星には少なくとも大きな建物を建てられるほどの技術力を持っている生物がいるのがわかる。そしてこの星を支配している生物も....


「....ミツカッタカ」


この星に住んでいる生命体──ヤツがこっちを見つめていた。おそらく、見たことのない身体を持つ生物がいるから、恐怖が湧き出ているんだろう。

まだバレるわけにはいかない。なら方法は一つ、素早い動きでヤツに近づき、寄生する....



これしかない



躊躇している暇はない。僕は地面を這うように駆け、ヤツの背後に回り込む。そして身体に密着すると、一気に体内へと侵入する。侵入できれば、あとはこっちのもの。僕はヤツの身体に寄生し、身体全体を回って駆け巡り、支配権を奪うと自由に生命体の身体を動かせるようになった


「よし、成功したか」


僕はたった今ヤツの記憶を読み、この世界の文字や言語、親、常識を最低限学んだ。この星は地球で、場所は日本、この身体の主は明日から高校生になり、学校に入学することになるらしい。


「これからどうするか....」


この世界の情報を集めながら宇宙船を修理し、この人間になりすまして、なんとか生活する。僕は心に決めた。今日から、新しい生活....人間の生活を送っていくのだと

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