売春②


 その条件を俺は悪いとは思わなかった。不特定多数のヤツと寝るのは苦痛だったし、実際男からの支払いだけで生活はなんとか成り立っていたからだ。

 俺は男の条件を飲んだ。当時の俺は本当に馬鹿だったのだ、目先の欲に目が眩んで何も見えていなかった。考えることを放棄していた。


「これからよろしくね」


 差し出された男の手を握って契約は成立した。今でもその時のことはよく覚えている。



 男は束縛の強い性格だった。

 毎日毎日大量の着信やメールを送ってきて、少しでも反応に遅れると不機嫌になった。

 俺が一日何をしていたかを事細かに聞いてきて、男以外の人物の名前を口にすると浮気をしていたのではないかと強い口調で俺を咎める。

 セックスだってやめてほしいと訴えても服では隠れない場所にキスマークを施して、少しでも抵抗すると金は払えないと脅された。

 俺の生活は男に支配され、日常生活にも支障をきたすようになっていた。男の激しい束縛からのストレスでコンビニのバイトではありえないミスを連発してあわやクビになりかけた。



 そんな折、景子と知り合う。出会いは俺が働いているコンビニへ彼女がバイトとしてやってきたというもので、新人教育をする中で俺たちはいつの間にか互いを意識するようになっていった。

 告白は景子からで、彼女は親のいない俺をずっと支えたいと言ってくれた。

 それから俺たちは付き合いはじめ、佳世も景子によく懐いた。姉妹のように仲がいい二人を眺めながら、俺は妹が高校を卒業したら男との関係を断ち切ろうと決めた。

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