第13話 教官が誰か分からない……どうしよう!?




 ティルシアから調教を受けたルルはいきなり俺に全裸土下座してきた。



「ご、ご主人様っ♡ ザコなのはルルちゃんの方でしたっ♡ 今までのご無礼、お許しください♡」


「……どうしてこうなった?」


「完全に調教されてるわね……」



 俺とのエッチで正気を取り戻したマシロも流石にドン引きしている。


 いや、ホントにどうしてこうなった!?



「ルル、その、ご主人様というのは?」


「ティルシアお姉様からご主人様のことをそう呼べと言われて……」


「……ティルシア」


「お好みではありませんでしたか? ルーデルトさまは調子に乗っているメスガキが媚びてくるのがお好きそうだと思ったのですが」



 たしかに好きだけどさ!! そういう同人誌とか沢山持ってたけどさ!!



「もう少しこう、他に何か呼び方があるんじゃないか? そもそもルルは俺の従者ではないんだぞ」


「ふむ? ではなんと呼ばせましょう?」


「……お兄様、とか?」



 前世ではルルに「お兄様」と呼ばせる同人誌が多数存在していた。

 実際に彼女に兄がいたせいだろうが、俺も少し呼ばれてみたい気持ちがある。


 と、そこまで言ってから首を横に振った。



「いや、何でもない。かなりキモイことを言った。今のは取り消――」


「ル、ルーデルトお兄様?」


「ごふっ」


「……何を嬉しそうにしてるのよ、ルーデルト」



 マシロがジト目で俺を見つめてきた。


 仕方ないじゃないか、ルルのあまりの可愛さにクリティカルダメージを受けてしまったのだから。


 思ったより破壊力があったよ。



「ふふ、ルーデルトさまもお喜びのようですし、しばらくそう呼びましょうか」


「は、はい、ティルシアお姉様……」



 と、そこでティルシアが爆弾発言をする。



「これで三人目の妻ですね、ルーデルトさま!!」


「ちょちょ、ティルシア!! ルルは客人であって妻ではないぞ!?」


「よく考えてください、ルーデルトさま」


「ティ、ティルシア?」


「私とマシロさまを両側に侍らせながら、小柄な少女がルーデルトさまを気持ちよくするために腰を振る光景を♡」



 ティルシアが俺の腕に抱き付き、わざと大きなおっぱいを押し付けながら耳元で囁いてきた。


 俺はつい想像してしまう。

 


『ふふ♡ ルーデルトさま♡ 今夜もたっぷり可愛がってください♡』


『ルーデルト♡ 愛してるわ♡』


『お兄様ぁ♡ ルルちゃんのお腹の奥に、お兄様の濃ゆい『闇の力』を注いでください♡』



 ふむ。



「……ごくり。ま、前にも言ったようにそういうことは本人が決めることであってだな」


「問題ありません♡ ルルちゃんも危ないところを助けてくださったルーデルトさまに好意を抱いているようですし♡」


「そ、そうなのか?」



 誰かに好意を抱いてもらえるのは素直に嬉しいことだが……。

 それはそれ、これはこれ。もう二人も妻がいるし、これ以上娶るのは世間体が気になる。


 ましてやルルは具体的な年齢こそ『オルフガルド戦記』でも判明していないが、見た目からして十代半ば手前だろう。


 俺はロリヒロインも好きだが、別にロリコンではないのだ。

 

 よし、ルルの年齢を理由に今回は断るぞ。



「ルルはまだ幼いだろう? 娶るのは流石に――」


「ふふ、問題ありません。ルルちゃんはもう子供を産める身体なので、立派な大人の女性です♡」


「いや、そういう問題ではなくて……」


「本当によいのですか? 私たち三人を代わる代わる抱きまくれるんですよ? この世でルーデルトさましか味わえないハーレムエッチが毎日楽しめるんですよ?」


「や、やめろ、ティルシア!! そうやって俺を誘惑するな!!」



 マシロの時もこうやって嫉妬心や独占欲を煽られて暴走してしまったのだ。


 もう俺は絶対に惑わされない!!



「マ、マシロ!! マシロはどうなんだ!? マシロもこれ以上妻が増えるのは嫌だろう!?」


「どうしてわたしに振るのよ。……わたしは別に構わないわ」


「ええ!?」


「一人も二人も、三人も変わらないもの。それに、ルーデルトはわたしを大切にしてくれるって言ったじゃない。その約束を守るなら、百人でも千人でも娶ってくれて構わないわよ」



 ま、まずい。味方がいない!!


 俺は学習する男だ。このままではなし崩しでルルにまで手を出しかねない。


 そうだ!!



「と、ところで!! 三人に聞きたいことがあるんだが!!」


「はい、なんでしょう?」


「プレイヤー――教官についてだ」


「あら……」



 教官という言葉を聞いた途端、ティルシアは困ったように苦笑した。



「なぜそのようなことを知りたいのです?」


「詳しい理由は言えないが、オルフガルド王国の異世界人召喚を止める鍵がある、かも知れない」



 もう異世界人の召喚をしないよう、オルフガルド王国の極秘部隊『影』のリーダーを通じて警告した。

 しかし、魔王の言葉でオルフガルド王国が召喚をやめるとは思えない。


 そこで教官の存在だ。


 少なくともプレイヤーの分身、教官は異世界の住人であるヒロインたちを自分たちの戦争に巻き込むことに否定的な発言をするシーンがある。


 その教官を特定し、説得して味方にできたらヒロインの召喚を止められるかもしれない。



「そうですね……とても優しい人でした。見捨てられはしましたが、最後まで私の処刑には反対していたそうですし」


「仕事ができる奴だったわね。目が合う度に話しかけてくる鬱陶しい女だったけど」


「ルーデルトお兄様よりザコの男でした!!」



 ん?



「ま、待て。教官は一人じゃないのか?」


「私たちのような異世界人はまず、王国にある騎士や魔法使いの育成機関、通称『アカデミー』に入れられ、こちらの世界の基本的な知識や自分に合わせた戦い方を三ヶ月ほど学ぶのです」



 それは知っている。


 ゲームのアカデミーは実際に戦いながらヒロインの基本的な操作を学ぶ、いわゆるチュートリアルの場だった。


 教官は元々そのアカデミーに所属する人間で――いや、そうか。



「アカデミーには元から騎士や魔法使いを志す王国人もいますので、教官は沢山います。異世界人の面倒を見るのは、その中から選ばれた一人なんです」


「なるほど」



 ゲームと現実の違いだろう。


 いや、ソシャゲの容姿不明な主人公の見た目がスピンオフ漫画や同人誌の作家によって変わるのはよくあることだ。


 そう考えると逆にリアリティーがある。


 しかし、異世界人の召喚に反対している教官が分からないのは困ったな。



「王城やアカデミーに結界が張られているのが悩ましいな。『万里眼』もその中までは見えないし。どうにかしてスパイを送り込めば詳しい調査もできるが……」



 魔王軍がオルフガルド王国を滅ぼせないのは、各重要施設に張られた結界のせいだろう。

 その結界を破壊できたら魔王軍を動員するまでもない。


 一日とかからず、俺の手で滅ぼせるのに。



「どうしたものか……」


「ルーデルト様、ご報告がありマス」


「む、クロか。どうした?」


「フォルネリウス殿がお呼びデス。例のものが完成したそうデス」


「例のもの? ……あっ、もしかしてアレが完成したのか?」



 そこでティルシアたちが首を傾げる。



「ルーデルトさま、アレとは一体?」


「フフフ、とてもいいものだぞ」


「……随分と機嫌がよさそうね?」


「まあ、絶対にほしいというわけでもなかったが、いざ入れるとなると嬉しくてな」



 フォルネリウスが配下に命じてこっそり魔王城の地下に作っていたもの。


 それは――風呂だ。






―――――――――――――――――――――

あとがき

ワンポイント小話


作者「珍しく誘惑に耐えただと!?」


ル「アンタ俺のことなんだと思ってんの?」



「誘惑に耐えた!?」「主人公のビジュが分からんのはソシャゲあるある」「次はお風呂回か!!」と思った方は、感想、ブックマーク、★評価、レビューをよろしくお願いします。

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