レンタルつよいひと、ご利用ありがとうございます!
ユーキノクターン
0階 はじめての。
初依頼
「依頼⋯⋯来ないな⋯⋯」
スマホ画面には自身が運営するサイト、【レンタルつよいひと】の大きなロゴが映っている。趣味の料理に必要な道具にもっと力を入れるため、バイトを始めようと思い立ち、ネットで「自分の特技をお金にしよう!」という記事を見つけたので、作り方をUTubeを見ながらサイトを開設した。
料金設定がよく分からなかったため、現在は最寄りの東岸和田駅から往復の交通費+1000円で依頼を受けている。
開設から2週間が経ったが、依頼はまだゼロ。閲覧者数もわずか3人。もともとは料金を10000円から設定していた。
ページのデザインを変えるか、あるいは普通のバイトに切り替えるかと考えていたその時だった。
ぴろりん
美月のスマホが鳴った。友達も恋人もいない彼女のスマホに突然の着信。確認してみると、
〚明日、コラボ配信をしたいです!天王寺駅集合でお願いします!私のチャンネルのURLを貼っておきます!〛
【レンタルつよいひと】のサイトに初めての依頼メールが来た。どうやらUTuberのようだ。
配信経験がないため不安ではあったが、初めてのお仕事は断れなかった。URLを開くと、ページが飛んだ先は――
【ひまりんダンジョンちゃんねる】
「これっ⋯⋯七瀬さんの?!」
美月は思わず大きな声を出してしまった。
ひまりん――
つまり彼女は陽キャだ。
美月は混乱した。どうして自分だと分かったのか、あるいは偶然なのか。偶然だとしたら、なぜ無名の【レンタルつよいひと】をコラボ相手に選んだのか。美月だと分かっていたなら、どうして正反対の陰キャの自分なのか。何も分からないまま、初仕事の依頼を引き受けた。
翌日――天王寺駅東口
「えっと⋯⋯同じクラスの志田さんだよね?」
「はい⋯⋯」
「それで志田さんが【レンタルつよいひと】で、私から依頼が来たんだよね?」
「はい⋯⋯」
「私からの依頼って、チャンネルのURLが送られてきただけだよね?」
「はい⋯⋯」
天王寺駅に到着すると、確かに七瀬陽鞠がいて、せっかく配信準備をしていた。緊張しながら「おはようございます、レンタルつよいひとです」と丁寧に挨拶したが、「なんですかそれ?」というような顔で見られてしまった。どうやら誰かのいたずらだったようだ。
美月は本人確認の徹底を心掛けようと決めた。
「すいませんでした⋯⋯あの、もう帰るんで、配信頑張ってくださいね」
「ちょっと待って!⋯⋯そのいたずら、面白そうじゃない?」
「え?」
早く逃げたいという気持ちでそそくさと帰ろうとしたが、陽鞠に呼び止められてしまった。
今日はソロの予定だったが、ゲリラでコラボ配信をするのも面白そうなので、せっかくだから【レンタルつよいひと】の実力を見せてもらおう。という提案だった。
「そしたら【レンタルつよいひと】の広告にもなるし、ね?いいでしょ?」
陽鞠がかわいく押してくる。陰キャには明るすぎる光だった。
「は、はい、頑張ります⋯⋯」
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