ニートが体質なんですが…。
Ciel
0. プロローグ
シャンデリアと魔法照明をつけて明るく照らされた内部。その光を受けてほのかに輝く壁紙。この宴会場に来た人々の耳を楽しませるように絶え間なく流れる音楽と片方に用意しておいた茶菓子。
完璧に整ったこのホールでちゃんと着飾っている人々から感嘆の声が上がってきた。
「イヴリス公爵家のコレクションは やはり 格が違いますね。」
「以前から目が肥えていらっしゃいましたが、令嬢自らサポートに乗り出されたからというもの、より優れた芸術家たちを次々と見出しておられるそうです。」
「ああ。その話なら僕も聞きました。この度、イブリス令嬢が目を留めておられた画家の一人が、宮廷画家になったと聞きましたが…」
「今を時めく有名なデザイナーも、最初 に目を留められたのが、令嬢だったと…」
人それぞれが話すのは まるで誰かが口火を切るのを待ち構えていたように、思い思いの言葉が一気にこぼれ落ちた。その話の大半がイブリス姫の慧眼にまつわる話ではあったが、そこに居合わせた誰一人として、それを行き過ぎた賛辞だと捉えなかった。
そんな彼らの話を静かに聞いていた使用人のうち、召使とメイドがそっと宴会場を抜け出し、主催者用に用意された控え室へ向かい、軽く扉を叩いた。
「お入りなさい。」
扉の向こうから聞こえた許しの声に、そっと扉を開けて中に入ると、綿菓子(コットンキャンディー)のような桃色の髪と蜂蜜を溶かしたような金色の瞳を持つ、愛らしい令嬢が広々としたソファにリラックスした姿勢で腰を下ろしていた。
このパーティーの主催者、シャルロッテ·イブリスだった。
「お嬢様、本日、開いてくださいましたパーティーは無事に成功いたしました。」
「そう?特にご不満のような…そのような話はなかったの?」
「そんな話は一つも聞いておりませんでした。ご心配なさらないでくださいませ。」
「そうなの…?」
やっと安心したようにそっとほほえんだシャルロッテは、ふと何かを思い出したように、メイドに一つお尋ねになった。
「ところで、例の件はどうなった?」
「それが…、その……」
質問を受けたメイドは、答えづらそうに目を泳がせていたので、部屋には入らず、扉の外にいた召使が代わりに答えた。
「申し訳ございません。お嬢様。今回もあの方が持ち去ってしまいました。」
「…また先を取られたの?」
これで一体何度目なのかしら……。
絵画や彫刻をはじめ、あらゆる芸術品を収集し、それらを創り出す者たちを支援することを趣味としているシャルロッテにとって、今のこの状況はあまり愉快なものではなかった。
「数日後に…もう一つオークションがあるんでしょう?」
「はい。二日後に一つ予定されております。」
「あそこにも、あの人が来ると思う?」
「可能性はかなり高いほうかと存じます。」
「じゃあ、今回も私が参加するって伝えておいて。」
「かしこまりました。」
いくら競売(オークション)に運の要素が絡むとはいえ、シャルロッテとしては、これ以上先を越されるのは避けたかった。
私の楽しみを邪魔するなんて…
「私が必ずこの人を見つけ出してみせるからな!」
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