朝のあなたを応援!頑張ってテレビ!

「・・・はい!7時になりました!1月8日金曜日、今日もあなたの憂鬱な朝を応援する、頑張って!テレビのお時間です。いつも通り進行を務めさせていただきます、藤山優大ふじやまゆうだいと」


林一華はやしいちかです!」


 藤山雄大と林一華がカメラに向かっていつも通り元気に挨拶をする。いつもならこのまま天気の話題を振り、現場にいる佐藤に今日の天気について話してもらうのだが・・・今日は速報が入っている。藤山は手元にある原稿に目を落とし、神妙な面持ちを意識しながら丁寧に読み上げていく。


「早速ですが速報です。今朝五時半ごろ四津ケ原よつがわら市の涙石なみだいし公園前にとのことです。腕の状態は比較的新しく切り離されてそれほど時間は経っていないらしいです。警察はこの腕の持ち主を探しており、情報を集めています。何か少しでも知っている人は、今画面上に出ている下記の電話番号にてご連絡ください」


「いや怖いですね・・・腕が落ちてるって・・・」


 少しひきつった表情で林が言う。


「う~ん・・・ほんとにね、なんでそんなところに腕が落ちているのか予想がつけられません。今宮さんはどう思われますか?」


 林に対して相槌を打ちながら今日のコメンテーターに話を振る。話を振った瞬間カメラが今宮のほうを抜き、下に『犯罪心理学者 今宮修いまみやおさむ』とテロップが出る。


「こりゃあねぇ僕は劇場型犯罪の部類だと思うな。劇場型犯罪ってのはねぇ、あたかも演劇の一部であるかのように犯罪を犯すことなんだけども。突発的な殺しでも通り魔的な殺人でも、こんな所にねぇ腕だけ置いていくってのはねぇちょっと考えずらいよぉ。だからね?自分を見てもらいたい気持ちが強いんじゃないかなぁと僕は思うね。うん」


「なるほど。誰かに見てもらう、誰かに恐れられるためにあそこに腕を置いたと」

 そういうこと、と今宮が赤ペンで机を叩きながら反応する。癖のあるしゃべり方


 で頭に入りずらいため、藤山は彼のことが少し苦手であった。おまけに年を取って舌が回らないのか滑舌も悪い。藤山はカメラに向き直り


「不審な人物を見かけた際には、すぐにその場を離れ近隣の住宅に助けを求めるか警察に通報をしてください。そして、出勤退勤,登下校時にはなるべく二人以上で帰ることを意識してください。また情報が入り次第順次お知らせしていきます。」

 

 いつも読み上げる定型文を読み上げ、神妙な面持ちをやめる。背景のパネルがテレビ局の屋上に切り替わり、真ん中に用箋ようせんばさみを持った男の人が映し出される。


「それではここからはお天気のコーナーです。佐藤さん聞こえますかー」

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