第37話 若返るクララ
クララは思わず悲鳴を上げた。クロエはその様子に笑いをこらえる。
「私、おばあちゃんならできると思うなー」
「しゃ、しゃべったわよ、この子!」
困惑した顔をクロエに向けるクララ。
クロエは吹き出すのを必死にこらえて言う。
「お母さん、びっくりね。でもクラリスの言う事を聞いてみて」
「え~」
「クララばあさん。やんなよ! 今やんなきゃいつやるの?」
クラリスの口調が変……
「ん、んん!」
ザックが咳払いする。
クラリスのあたりから聞こえる声が訂正する。
「あ、いや、クララおばあちゃん。わたち、やって欲しいなあ、バブー」
「へったくそだな、あいつ!」
ザックが小声で言う。
ようやくクララが気付いた。
クラリスの陰にコロが隠れている。
クララは大きな息を吐いたあと、背筋をしゃきっと伸ばした。
「私のためにやってくれますか? バブー」
コロの演技に気が付いたクララの目は優しくなり安堵の溜息を小さく吐いた。そして数秒置いてから答えた。
「クラリス、ありがとう。あなたにそこまで言われたらやるしかないわよね。ウォードさん、ニーモさん。私引き受けます、全部」
ニーモは飛びあがり、ウォードはガッツポーズ。そしてクララの目に強い輝きが灯った。ウォードはその目力に驚いた。数分前とは明らかに別人である。最初の作戦は成功した。
するとコロがクラリスに捕まった。赤ちゃんのクラリスは小人のコロを握りしめ、つまんだりなめたりしている。
「やめろ~。誰か助けて~」
みんな、大笑いだった。
ついにニーモによるクララの施術が始まった。
ここではオリジナルの大きなグレーズドケースを併用することにした。淡い光を放つ透明な箱がクララを包み、彼女の体全体を照らしている。
ニーモはレベッカ、メル、シオンから学んだヒーリング技術の良い部分を統合し、自分に合った形にした細胞変化方法をクララに適用した。
クララの背中に回り、体を密着し、額をクララの後ろ首の辺りに付ける。クララは両腕を開いて下に垂らし、目を瞑ってゆっくり深呼吸する。
少しずつ、少しずつクララの体が変形していく。白髪が消えていく。顔のしわが消えていく。
実年齢より高く、60代に見えていた容姿は50代、40代と若返って行き、最終的には30代前半に見えるまでリフレッシュされた。
クララは目を瞑っていても、自分の体が変化していくのが分かったのだろう。
瞑った両目から一筋の涙を流していた。
それを見守っていたクレアと妹のクロエも、かつて育ててもらった時代の母の姿を再び目の当たりにして涙を堪えることができなかった。
体をクララに密着させていたニーモは体感していた。
(この人、本当は芯が強い人だ。すごいエネルギーを感じる。すごく優しいエネルギーだ)
「……終わりました」
ニーモがそっと体を離して呟いた。
部屋の中に一瞬の静寂が広がる。
誰もが茫然とクララを見つめている。
ザックが手を二度、三度叩く。
他の人も、それに合わせて拍手を始めた。
皆、感動しているのだ。
「お母さん、これ」
クレアが手鏡をクララにそっと手渡した。
クララが大事にそれを受け取り、恐る恐る顔の前に掲げた。
そこにはクレアとクロエが幼い頃の明るく幸せと希望に満ちていた時のクララの顔が映っていた。
「クレア、みなさん。ありがとう。本当にありがとうございます」
満面の笑みでクララが、そう言った。
「良かったな、クレア」ザックが言った。
「うん。本当に良かったよ。ニーモ、最高だよ。ありがとう」
クレアは大粒の涙をこぼしながらニーモに感謝の言葉を述べると……、
――飛び切りの笑顔をザックに返した。
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