第12話 英国館
クウェート館を出たところで3時だったので、そろそろ3時半になろうとしていた。子供たちも合流し、
「英国館行く?」
と聞くと、厚夫も子供たちも行くと言う。カリンちゃんに連絡をしたが、やはり既読にならない。仕事中だろう。もう英国館のすぐ近くにいるので、そのまま行ってみた。すると、英国館の入り口にカリンちゃんがいた。目の悪い私より、さっき会ったばかりの二郎が、
「あ、あそこにいるよ。」
と、私に教えてくれたのだ。それで、何とか私を認識してもらおうと手を振ったがダメで、入り口にいるスタッフの女性に、
「あの、友達の所に声を掛けに行ってもいいですか?」
と聞いたら、どうぞと快く通してくれた。まずは私一人でカリンちゃんの元へ。
「ああ、夏子さん、ちょっと待ってくださいね。上の人が……あれ、肝心な時に上の人がいない…。ごめんなさい、少々お待ちください!」
カリンちゃんが慌ててどこかへ行った。いやいや、全然ゆっくりでいいよ~。
カリンちゃんが戻ってきた。そして、どうぞと言ってくれた。入口のところで他のスタッフさんに声を掛けたカリンちゃん。
「あ、友達が……」
「はい、どうぞ!」
今度は日本人同士、阿吽の呼吸で入り口をパス。私の家族を通してくれて、前から数人の所へと並んだ。
「では、ごゆっくりお楽しみくださいね。また今度、一緒に謎解き行きましょうね!」
そう言って、カリンちゃんがお仕事に戻って行った。我々が並んでいるのは「優先レーン」のようで、一般レーンと優先レーンから交互に通される感じだった。
「いやー、お母さんのコネのお陰で色々入れて良かったよね。」
「ほんと良かったよ。ありがたい。」
二郎、そして一郎が私に言った。息子たち、大変喜んでいるようだ。
「感謝だねえ。」
厚夫もとても喜んでいる。スタッフの福利なのか、一体どういう訳なのか、と色々と考えている様子の厚夫。お得意先とか、特別に招待している人が優先レーンなのかねえとか。しかし本当に暑い。こんな中、1時間も並ぶのかと思ったら最初からめげる。そして、また10分と待たずにパビリオンに入らせてもらった。
映像があり、部屋を移動してまた映像が。未来はどんなモノづくりをするのか、そんな内容かな。途中の文字による展示では、英国と日本の共通点などが紹介されていた。車が左側を走るのが同じとか。
ゲームなのかな、と思ったら大したゲームでもなかった映像とかもあって、パビリオンは終わった。出てくると売店がある。4月にもこの売店には入った。ユニオンジャック柄のマグボトルが気になったのを思い出す。お土産を見ていたら、厚夫が既に何かを買っている。ビールだ!私は、瓶に入った物が気になった。ジャムなど何種類かあって、その中にマスタードを見つけた。なんか、すごく高級な感じの瓶に、色々な野菜が入った美味しそうなマスタード。どんだけ高いのかと思ったら1800円。買いだ!と思ったのは、既に万博価格に慣れてしまったからか。早速購入してショップを出た。
もう、ショップを出るのも待ちきれないかのように、プルトップを開ける厚夫。缶にはイギリスの兵隊さんの絵が描いてあって、写真を撮らせてもらった。ビール好きな二郎が一口もらい、私も一口もらった。ん?何の味だっけ、これ。思わずもう一口。そうだ、これはチョコレートだ。チョコレートのような風味のするビールだった。
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