第3話 オーラの威力

オーラを知覚できるようになってから1週間がたった。


オーラを動かす訓練を毎日のように朝から晩まで続けているのだが、上達するたびに壁が立ちはだかるようであり思うように進まない日がほとんどである。


体の中のオーラは最初こそ炎のような動きをしていたが、動かすにつれ安定して塊のように密度を増していった。




最初は、腹の底に頑固にこびりついて離れないオーラの塊を他の部位へ動かすところから始めた。


オーラの塊を揺らしたり、小さい手のような突起を形作って他の場所に引っ掛けたりして、移動させようとしたのだがオーラの塊が腹の底から動くことは無かった。





しかし、まったく収穫が無かったわけではない。


オーラを薄く広げたり、体内で触手のように伸ばしたりできるようになったのだ。


体内にあるオーラの量が少ないせいか全身を覆ったりすることは出来なかったが、指先にオーラを通わせたり、少し遠くまで見えるように視力を強化できるようになった。




今はオーラ操作の持続力の向上と、オーラの全体量を増加させるために父さんの畑仕事を手伝いながらオーラの訓練を行っている。




父さんは、食事と運動、睡眠をしっかりとることでオーラが増えていくというようなことを言っていたから、運動も兼ねて畑仕事を手伝うことにしたのだ。




今の時期は畑の土を耕す作業をしている。


農民が大量にいるからなのか、オーラを使うことを前提にしているからなのかわからないが、見渡す限りに畑が広がっていた。




父さんから子供用の小さな鍬を渡されて、固く引き締まった土を掘り返す。


オーラを多少使えるようになったからと言って、六歳児の体では重労働に感じた。


「はぁ……はぁ……農業に殺される……」




農業の大変さを実感させられると共に、オーラを使って体を動かす楽しさを感じていた。


近くで猛スピードで畑を耕し続けている父さんの姿を目で追いながら、オーラの使い方を意識する。


父さんのオーラさばきは、おもわず見惚れてしまいそうになるほどで、流れるマグマのように猛々しいオーラの奔流が体を駆け巡っていた。




「あれが父さんのオーラ……他の人も、あれほどのオーラを持っているのか?」


おもわず独り言がこぼれてしまったことに気付き、振り払うように農作業に戻る。




鍬を畑に振り下ろすたびに体に流すオーラの量と流し方を変えて、よりよい使い方を模索していく。


腹の底に溜まったオーラを体を通して腕に纏わせ、腕力の強化を目論む。


強化の仕方も筋肉の中を通したり、体の外からパワードスーツのように纏ってみたり思いつくものをかたっぱしから試してみた。




(これじゃない……これも違う……もっといいものがあるはず……)


近くにある手本が眩し過ぎるあまり、焦りばかりが先行してしまう。




悶々としながら鍬を振るい畑仕事に精を出すが、頭はオーラのことでいっぱいだった。


オーラで体を覆ってみても頑丈になるだけで腕力は強くならないし、筋肉に沿うようにオーラを流しみても体が暖かくなるだけで終わってしまう。


オーラの訓練としては使えるが畑仕事に生かせるような力は無い。




あれじゃないこれじゃないと色々試していると、妙案を思いつく。


(実際の体と同じ形でオーラを動かせば腕力も2倍になるんじゃないか?)




だが、腕を丸々一本再現しようとすると今のオーラ量では足りなくなってしまう。


筋肉の束を再現するのも、まだ足りない。


もっと少ない体積で広範囲に高い効果を出せるようなものは無いか、自分の体を見ながら考える。


皮膚、筋肉、骨と見ていくと最後に血管で目が留まった。


細い管を再現するので操作の難易度は上がってしまうが、血管なら少ない体積で広範囲に張り巡らすことができ、効果があるかもしれない。




オーラを細くひねりながら体の中で伸ばしていく。


ところどころ太くなってしまったり、曲がりくねってうまく操れなかったりで、思うように進まない。




一本目が完成して、右腕にオーラの管を再現すると少しだけ鍬を持つ手が楽になった。


試しに鍬を振り下ろしてみると、心なしか振るう速度が速くなったように感じる。


(これだ……血管のようにオーラを通すことで、目的の場所に力がいきわたっている!)




感動も一入に、次のオーラの管を作ろうとする。


最初に右腕に作ったので、次は左腕に作ってみる。


一本目を維持しながら二本目を作るという状況に苦戦しながらも、何とか両腕の管の開通を終える。




オーラで強化した両腕で鍬を振るうと、明らかに違いが判るほどに強く振るうことができた。


鍬を振るうスピードも上がっており、畑仕事が面白いように進んでいく。




あれほどまでに頑固に居座っていた大地は、まるで豆腐を砕くかのように崩れ、見渡す限りに広がっていた畑などあっという間に耕せてしまえそうな程だった。


父さんが畑を耕す速度には遠く及ばないが、それでも前世の成人男性なんか比べるまでもない位にサクサクと耕し続けていた。




結局、日が暮れ始めて父さんが畑仕事を終えるまで、ほとんど休むことなく畑を耕し続けたのだった。








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あとがき


こんにちは、作者の冷やしネコです。


毎日投稿を予定しているので、お付き合いいただけると幸いです。


もし、誤字脱字等ありましたらコメントで指摘していただけると助かります。




本日は三話同日公開で、


00:00  第1話 公開

12:00  第2話 公開

18:00  第3話 公開


を予定しております。


第4話は12月11日(木) 00:00 公開を予定しております。

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