第32話 セルマの想い
「頭がぐちゃぐちゃになりそうだ…」
タカシはそう呟き、色々なことがありすぎて混乱した頭を落ち着かせようと努めた。とにかく、カリンの母親と妹、そしてキャロが選んだ猫族の二人を紐につないで家路につく。娘の前で紐に繋がれる母親の心境を考えると、タカシは嫌な汗をかいた。カリンは母親と妹に「家に着くまでだからね」と優しく声をかけている。キャロもまた、二人の猫族に話しかけていた。
家に着くと、シャロンが出迎えてくれた。タカシのげっそりした顔、カリンの顔に残る涙の跡、そして犬族と猫族の新たな奴隷4人を見て、シャロンは驚いた。
「まあ、こんなにたくさん……購入するのは明日かと思っていましたから、びっくりしました」
シャロンがタカシに言うと、タカシは疲れたようにロープを手放した。
「色々あってな。キャロとカリン、新しい奴隷たちに色々教えてやってくれ」
タカシはそう言って椅子に座り、大きなため息をついた。
キャロとカリンは、部屋の片隅に新しい奴隷たちを呼び寄せ座らす。そして自らも床に座って真剣に話し始めた。新しい奴隷たちは真剣に聞いているが、二人の迫力に圧倒されているようだ。
タカシは視線をテーブルに戻し、座っているセルマと目が合った。そこで、セルマに聞きたかったことを思い出した。
「セルマ!どうして奴隷紋なんか入れようと思ったんだ?」
タカシの問いかけに、シャロンは「嘘!?」と驚き、セルマの首輪がないことに気づいた。セルマは少し恥ずかしそうにしながら、タカシに理由を話した。
「シャロンさんやキャロやカリンが奴隷紋を入れたら、私だけ仲間はずれに感じるかなって…それで、ついでに入れてもらいました」
「いやいや、そんな適当な理由で!?」
タカシは呆れてしまった。
「でも、主のことは好きですし、今の生活に文句はないですから。私の冒険者生活は、主とのパーティーが最後で落ち着いてもいいかな、と考えていました」
タカシは、こんな狭い部屋で落ち着くはずがないだろう、と思った。
ふとキャロやカリンの奴隷の首輪が、そのまま着けていたのに気づいた。セルマがいうには、魔法士から「獣人奴隷は戦争奴隷のためトラブルを避ける為に首輪は着けていた方がいい」といわれたそうだ。一通り奴隷商でのことを話し終え、食事にすることにした。
「シャロン、買い出ししなくても食糧はあるか?」
「明日の朝食までは何とかなりそうです」
「じゃあ、夕食にしよう」
タカシはシャロンに食事の用意をさせた。新しい奴隷たちは、床で野菜くずのスープとパンを食べた。
食後、キャロとカリンに新しい奴隷たちの自己紹介をしてもらうことにした。
先にカリンが胸の大きな美女を一歩前に出させ、「こちらはキーシャ」と紹介する。次に短い髪を小さなポニーテールのように結んでいる少女を一歩前に出させ、「コリンです」と挨拶させた。
「二人は私の母親と妹ですが、普通の奴隷として気兼ねなく扱ってください」
カリンはそう付け加えた。母親と妹と聞いて、シャロンは目を丸くさせ、カリン、キーシャ、コリンを見比べた。
次に、キャロが妖艶な雰囲気の胸の大きな美女を紹介する。
「こちらはミオです」
そして、モデルのような長身でスタイルのいい女性を一歩前に出させ、「メグです」と紹介した。
「タカシ様が好きそうなタイプで選んでみました」
キャロはそう付け加え、タカシはよく分かっているなと感心した。
「それでは、今日は色々あったから早めに寝るぞ」
タカシはそう言って寝室に向かった。キャロとカリンは、夜遅くまで新しい奴隷たちに話をしているようだった。
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