第7話 形と形
熊の討伐が終わって3時間後。僕、
あの後、熊は能力を使えないように処置した上で近くの自治体に明け渡され森に返されたらしい。どうやって能力を使えなくしたかは
「痛みはどうだ。よくなったか」
少しボーっと天井を見ていると、部屋に形兄が入ってきた。形兄もとい
形兄というあだ名はもう1人の仲間である
「あ、はい…別に何とも」
…実際、普通に痛みは残っている。突如聞かれてしまって言い間違えてしまった。訂正するのも面倒くさい
「そうか、取り敢えずここに夕飯を置いておく。腹が減ったら食べてくれ。で、あんたいま暇か?」
「え、ぁ…暇も何もって感じですけど」
「そうか。じゃあ、食べながら少し話をしよう」
そう言うと形兄は近くの椅子を引き寄せ座った。手には近所のコンビニでテキトーに買ってきたようなおにぎりやパンが握られている
「まず1つ、さっきの熊のあれ。ぶっちゃけ何を感じた?」
「えーっと、犯罪者とやり合うんじゃないんだなーって……」
「ん?あぁ、あんた寝てたんだっけな。
……またやらかしてしまった。形兄も少し呆れているような目で見ている
「んー…じゃあ、何か聞きたいことあるか」
「あ…帰れたりとかって──」
「ない」
「ですよね…」
「んー……じゃあ、もう1つ質問しよう。あんた、やる気あんのか?」
その時、形兄の左ポケットが少し震えた。スマホの通知のようだ
「なんだ?こんな時に…」
形兄はスマホの画面を見て少し固まる。そして徐々に引きつった表情に変わっていく。少しして形兄はゆっくりと立ち上がり、ドアの方へ向かっていった
「すまんが急用だ、1人で食べててくれ。今の質問の返答は後で聞く。釘を差すようで悪いが、ここはあくまでも俺の部屋だ。くれぐれも変なことはすんじゃないぞ」
ガチャンと、扉は勢いよく閉められた。部屋には僕一人が取り残された
「……お腹減ったなぁ」
取り敢えず置いてあるおにぎりとパンを食べる。飲み物が欲しかったが、なかったので口の中がパサパサになった
少し、さっきの質問の事を考えてみた。やる気がない、どういうことなのだろう。別に僕はただ見ていたわけじゃない、優のサポートに回ったりもした
まぁ、それが周りから見ればやる気がないように見えたのかも知れない。だとしてもよく分からない
「……寝よう」
今日は色々なことが起こりすぎた。夢のことも、謎の男のことも、今の質問のことも、その他もろもろも。考えるだけ無駄だと思い、取り敢えず目を閉じて寝ることにした
──────────────
目覚めると朝になっていた。まぁ、それは当たり前なのだが……
横に目を向けると優と形兄がなにやらボードゲームで遊んでいた。成ったやら王手やら色々聞こえてくる
「なに、金ただでもらっていいの?ホントに?」
「あぁ、そうだ。早くしてくれ、この
「⋯え、今凄いメタいことを……」
「よっしゃもらいま──」
「王手飛車取り、次桂馬を成って詰みだな」
優はそれを聞いてガチッと固まり、カタカタと震え始めた。額からかなりの汗が出ている
「これで俺の5連勝だな。で、起きたみたいだな形真、調子はどうだ」
「あ、はい……特に痛みは、ないです」
事実、昨日と比べて痛みはない。強いて言えば片足が少し痛いくらいだ
「そうか、じゃあ準備ができたら食堂に来い。朝はまだだろ。優も、準備ができたら来いよ」
形兄はそう言いながら部屋を出ていった。優は急にスイッチがオンになったみたいにボードゲームを片付けて追いかけていった
「あ!ちょ、食べるより前にもっかい!もう1回!」
また、部屋に一人になってしまった。部屋を見渡すと昨日は気づかなかった、包帯や何やらが机においてある。2人が何も言わなかったということは、自分でつけろということだろう
それっぽく痛いところに巻き付ける。杖もあるにはあったが、そのレベルの痛みではないので軽く足を引きずりながら部屋を出る
「いってぇ!?」
ドアを開けたと同時に誰がぶつかる音とその人の声が聞こえた。同じ寮の人だろうか
「あ…え…あ…、す、すみません!」
「おいおい、珍しいな。形が扉を人にぶつけるなんて」
形、今形といったのだろうか。声の主は全く聞いたことのない声をしている。初対面な気がするが、実は知らぬ間に
「あの、初対面……ですよね⋯?」
「ん?その声、形じゃないな?あぁ、昨日から形のとこに居候することになったやつか」
声の主はドアの横から顔を出しながら話しだした
「おれぁお前らの隣の部屋にいる
そう言って正吾さんは肩を軽く叩いた。正吾さんは僕と比べてまあまあ背が高い。そのためか、叩く力がかなり強く感じた
「あの…改めて聞くんですけど、初対面ですよね?」
「え?まぁ、多分そうなんじゃねぇか」
「あ、えっ、えっと⋯僕は形真って名前で⋯形って呼ばれてるんですけど…」
「…マジ?」
「大マジです」
「元気は?」
「ピンピンじゃないです⋯」
「だよなぁ、頭ぶっ刺されてないしな〜。マジか、同じ呼ばれ方のやつがいるのか」
正吾さんは悩むような顔をして天を仰いだ。うーん、と声を上げていたが少しして正面を向いた
「まぁ呼び方は後で決めるとして⋯⋯食堂に行くのか?お前」
「まぁ⋯はい」
「んじゃまあ、一緒に行くか」
つい1分前に会ったばかりの正吾さんと食堂に向かう。道中、色々な人とすれ違った。ガタイが良かったり、僕より小さかったり……
色々な人がいるものなんだなと今更ながら思った
そうこう考えているうちに食堂に到着した。隅を見ると形兄と優がテーブルで朝食をとっている
「おう、形。昨夜ぶりだな」
「あぁ、正吾……と、形真がいるのか」
「おぅ、相変わらずお前はリアクションがねぇな。隣失礼すっぞ。形真はそこに座っとけよ」
僕は優の隣に座った。テーブルには僕の好物のエビ天丼がおいてある。そして朝食を取りながらの会話が始まった
「形は今日なんかあんのか?」
「いや、まだない。というより昨日あったからないだろうな」
「そうかい。そっちの2人はどうなんだ?」
「私はまだ通知はきてないなぁ……形はどうなの?」
「え⋯わ、分かんない…です…」
瞬間、3人全員が困惑の表情で僕を見た
「そういやあんた寝てたんだっけな」
「そういえば形寝てたじゃん」
「え?こいつ寝てたの?」
形兄と優が同時にため息をついた。哀れむような目で僕を見ている。正吾さんはまだ困惑の顔で僕を見ている。すっごい恥ずかしい
「えーっとね形、通知云々はスマホのここをこうして───」
最終的に形兄や優に色々教えてもらい通知云々は解決した。最中、正吾さんは唐揚げ定食を食べて完食していた
「ありがとうです…」
「いや、あの、形真くん。ちょっと面白かった、ちょっとは」
その時、僕のスマホが鳴った。その場の4人全員で画面をのぞく。正吾さんの口から唐揚げの臭いがするが、そんなことは気にせず内容を確認する
『廃ビルを占拠している能力者集団の確保』
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