第4話 OWAという組織

 僕、空閑形真くがけいまは、謎の男の人に「組織に入らないか」と(正式には優が)勧誘されてから30分程度たった今。色々と急展開をへて、自身を不破形司ふわけいじと名乗った男の人に先導され、OWAの日本支部というところの灰色の廊下を歩いていた


 「空閑…だっけか、友達が気になるか?」


 ついさっきまで一緒に歩いていた盾石優たていしゆうは一足先に「面接室」というものに入っていった。別に心配だったり、気になるといったものはないのだが……


「まぁ…優は一々一言多いので……」


「だろうな、あの雰囲気だと何をしでかすか分かったもんじゃない」


 優はその面接室に入っていく瞬間、「っしゃー!やるぞー!」とものすごく気合を入れながらその部屋に入っていった。面接室というのだから面接をするのだろうが、あのハイテンションだと下手したら落ちそうな気がする。実際、扉を結構強く閉めていたので危ないかもしれない


「友達の心配してると自分も痛い目に遭うぞ。よし、ここだな。お前にはここに入ってもらうぞ」


 形司さんの目線の先には「会議室」という文字が書かれた看板があった。形司さんはすでにその看板の下にいて、扉を開けていた


「お前の友達が面接をしている最中、お前にはこの組織の説明を軽く受けてもらう。知っておいて基本のことを学んでもらうからな。じゃあ、俺は外にいるから」


 僕が部屋に入ると形司さんはそういってゆっくり扉を閉めた。その部屋で僕は一人になった


 部屋の中を見渡してみると、学校の教室のような広さの部屋に数十個の椅子や机が平行に並べられていた。さらにスクリーンが大きく壁にかかっており、そのスクリーンにはさっきエレベーターのなかで見たロボット……いや、AIが浮かんでいた


「えっと……君、さっきエレベーターで……」


「エレベーター?あぁ、あそこの僕と今君が見てる僕は別物だよ。僕みたいなAIは量産型ってのだからね、数区間ごとに分かれて存在してるんだ」


 そういえばエレベーターから降りた後の大きな空間には2体ほど居た気もする。そのどちらも離れているところにあった。そう考えているとAIが「ささ、どうぞ」と着席を促してきたので近くの椅子に腰掛けた。そのAIはスクリーンの中で縦横無尽に動く


「うん、座ったね。では、これからOWAの説明をさせていただくよ!まずは自己紹介、僕はアルタ。日本支部にいるAIだ」


「アルタ・・・え、僕は──」


「空閑形真くんだね、佐賀県在住の」


 OWAという聞いたことのない組織、社会の授業でもその名前が一切出てくることはない、つまり習うことはなかった。社会の授業を参考にしているのが少しバカバカしいかもしれないが……、聞いたことがないということは裏の組織っぽい何かだろうと思っていた。が、初めて来た僕の住んでいる地域が特定されるほどの情報網が敷かれていたとは思いもしなかった


「それじゃあ説明を始めるよ。この組織の名前であるOWA、正式名称は「Organization of world ability」。意味は、能力による世界の組織。その名の通り、この世界の表と裏に存在する能力を使った組織だ」


 もう少し日本語訳の意味をひねったものにできなかったのかな、とは思ったがそんなことは今はどうでもいい。とりあえずアルタの説明は続く


「君は小学生じゃないから知っているだろうけど、能力学、分かる?」


「あ、はい」


 能力学、それは能力というものがあるこの世界に存在する中学生から習い始める学問。細かく分けると、能力歴史学、能力科学……とかがあるらしい。高校になるともっと増えるのがかなり吐き気がするところだ。さっき授業を参考にするのがバカバカしいと思っていた自分が恥ずかしく感じる。というよりも学校で習ったことを将来使うのかという疑問の答えが、今使う、なのが何とも言えない感情を引き出している


「能力学はうちの組織の中で最も重要な物事の1つだ。実はこの世の中の能力科学の半分くらいはOWAから出た理論だったりする」


「へー……」


 何かAIに自慢話をされているように感じる。そういうことは今まで生きてきた中でなかったので結構複雑な気持ちだ。アルタの説明はとどまることを知らず、どんどん続く


「OWAは各国に支部が存在する、基本的には一国に1つ。アメリカやアフリカとかは例外だけどね。支部の建物は地下にあるんだけど、能力が使われていてね。この建物を外から見るとすると実は一戸建てと同じくらいの大きさなんだ。使われてる能力はね───」


「へ、へー……」


 数分前に色々急展開があったことと、今行われているのが授業を受けているみたいなのも相まってか、水泳の後の国語みたいにだんだんと眠くなってきた


──────────────────


「──丈夫?聞いてる?」


 気づかないうちに眠ってしまったのだろう。アルタの声で目が覚めた。どれくらい眠っていたのかは分からない。だがまだ眠気がとれておらず、目をひくひくさせている気がする。眠っているときに大事なことを


「あ、あぁ、大丈夫だよ……」


「そう……ま、これで説明は終わりだよ。次は面接だよ。頑張ってね」


 するとドアの方からガチャリと音が聞こえた。音の方向を見ると優と形司さんが部屋の外で立っていた


「あ!形〜その顔は寝てたやつでしょ。分かるわー私も面接眠かったもん。どんまい」


「い、いや。寝てないよ。うん」


「楽しく会話してるところ悪いが、チェンジの時間だ。形真、次は面接だ」



 寝起きで少し重い体を一生懸命動かし面接室の前に来た。実はさっきよりこっちのほうがキツイのではないか、という考えがよぎったが眠くてあまり頭は働かず、そのままほぼ無意識の状態で扉を開けた


「え~っと、失礼します……」


 そう言って入ってみると部屋の中はさっきの会議室よりも殺風景で狭かった。机が1台に椅子が2脚。椅子は対面式で置かれていた


 一方の椅子には女の子、小学生だろうか。性別は違うが、雰囲気はさっき会った埋橋龍目うずはしたつめさんに似ている気がする。が、子供なのはこちらも同じだ。目の前の人は「どうぞ」と着席を促す。僕はとりあえず言われるがまま、椅子に腰掛けた。まじまじとその人の目を見てみるとどうやら緑のようだ。何故か引き込まれるような不思議な感覚に襲われる


「では面接を始めます」


「あ、はい」


 最初は個人情報を聞かれた。名前や住所、親族の名前など、色々だ


「そうですね。貴方にはあまり意味はありませんが、何が目的でこの組織に入ろうと思うのですか?」


 こういう系の質問は面接ではあるあるだと思う。が、いざ答えようとすると難しいものだと実感した。入ろうとする意味は謎の男の人への恩返し、でも十分なのだろうか。いや、少し理由としては弱い気がしてならない


 ここに来た経緯を思い出してみた。謎の男の人に会った、優がこの組織に勧誘された、優が僕を半ば強制的に連れてきた……こうして考えてみると、ここに来た要因として挙げられるのは、全て受動的な出来事が積み重なっているということ。このままでは行動力がないみたいになってしまう。事実ではあるのだが


 ただ、この質問を「入って何をしたいのですか?」というものに(勝手に)変換すれば話は別だ。ちゃんとした理由があるとするならば、そう考えないと浮かんでこない。だから、自分勝手ながらそう考えることにする


「あの…1ついいですか?」


「はい、どうぞ」


「えっと…この組織なら、世の中のほとんどの情報が回ってくるみたいなことって……」


「ありますよ。さっき説明を受けたときにそうあったはずです」


 本当に大事なところを聞き落としていた。この感じだと、今の情報以外にもこのOWAという組織についての色々な大切な情報を聞き逃してしまっている気がする。寝てしまった自分が恥ずかしい。でも本当に色々なことをここで知れるのであれば……


「あ、じゃあ……僕、今日珍しく夢を見たんです。その夢には消息不明の母の姿がありました」


「夢……」


 目の前の人は少し引いた感じの顔をして聞いている


「はい……あ、馬鹿げてますよね。でも僕はその夢の内容をもっと知りたいんです。母は、僕が3歳ほどのころにどこかへ旅行に行ったきり、帰ってくることはありませんでした。多分父もです。それから僕は叔母と暮らしています。叔母にそのことを聞いたりしてみたことはあるのですが、毎回毎回はぐらかされたり……家にあったはずの2人の写真とかも全部破棄したっぽくて……」


 いつもの僕であればしないくらい話してしまったので、口がもう乾燥してしまった。口の中を潤すために、唾液を口の中全体に巡らせ飲み込む。一息吐いてまた話す


「僕は何か調べることができるような能力もないし、遠回りだとしてもこの組織でなら知れるかなって……それが、僕がこの組織に入る理由です」


「なるほど……ではこれで終わります。お疲れ様です」


 僕は席から立って目の前の女の子のような面接官に礼をし、扉に向かって歩き出す


 その場しのぎの理由ではあった、でもお母さんについて知りたいということは本心だ。本当に知れるかなんてことは分からない。運が悪ければ知れないかもしれない。人によっては小さな理由かもしれない、でもそれは僕にとっては大きな理由だ。叶おうが叶わまいが……


「……疲れた」


 僕はそうつぶやいてドアノブに手をかけ、部屋を出た


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