第51話

あれから5ヶ月ほどもたった。

無事カゴの村は伯爵管轄から男爵へと移行したことを国にも提出してやっと手続きを終えて了承されたのだ。



カゴの村の隣街。男爵領に位置するメルシャ街の飲食店にリカちゃんたちは居た。


エフト : ガハハこうやってお前と飲めるとはな!


ガルディ : テメェらとは顔も見たくねぇって全員に笑って別れた…はずなんだが何も分かってなかった奴が居たなガハハ!


パサ : あんたたち娘の前で馬鹿なことはするんじゃないわよ?


リカ : 大丈夫だよママ。エフトおじさん面白いよ。


エフト : おじ…お兄さんだよリカちゃん。汗


リカ : ?



ガルディ : いやお前は俺と歳近いし若くはないだろ。


エフト君独り身でもあって少しどころかかなり羨ましがっているのである。まだ女もいないのに同級生が目の前で奥さんと子供も居る。歳も気にしていて昔は気にしなかったことを今ガチで気にしてるタイミングである。


今この飲食店は昼時なのもあり人でごった返していた。

喧騒の中パサ、ガルディ、リカちゃん、エフト、エフト隊3人の7人で男爵の治める領地内の力仕事をやっていた。その終わりの飲みである。


エフトは3回目ぐらいの乾杯で上機嫌だった。(おじさんと言われて一瞬シラフになるが酔うことは特技の一つである)


エフト : それじゃあリカちゃん。今回の仕事お疲れ様。少しずつだが魔法の方は慣れてきたな。(ここから小声)爆発魔法に雷魔法。こんなのバレたら国が連れていっちゃうからな。俺たちの前だけで使うんだぞ。


リカちゃんはまだ子供なので国については偉い人が居る凄い場所程度に思ってないので知らないがウンウン頷く。


マチチ : ここは先輩の奢りっすね。


エフト : 何で!?お金はご当主から出るだろう!何で!?ねぇ何で!?


マチチ : 先輩出してください!


エフト君酔いかけていたのにまたシラフになり白目になる。給料前なのである。


隊員たちもガルディもならばと爆食いである。


リカ : エフトおじさんありがとう。


エフト : …あいよ…


パサ : 私からも出すからきにすんじゃないよ


パサママはエフトとあってからはキャラが変わってるがリカちゃんはパパとママが夜にベッドの中でゴソゴソとっくみあいする時に聞き慣れてるから大丈夫だよと言ったらママがパパのみぞを殴って照れながらどっか逃げた。

まだ万全じゃないパパ : グエーー!?何で(気絶)



エフト : ははは!大丈夫だ!お前らより給料は出てるからな!流石にこの一食ぐらいだせるわ!


パサ : 甲斐性が出てきてるじゃないか!ならあとは女なんてイチコロだねぇ!


エフト : そ!そうだよな!!!ガハハ!!


マチチ : 先輩は無理っすね


エフト : な、なんで!?


マチチ : えーと…臭いっす!!!


エフト : ………え???


エフト君自分の腕とか脇とか嗅ぎ始める


パサ : マチチちゃんはどうだい?


マチチ : い、いないっす!


パサ : うふふふ


エフト : …ガルディ俺臭うか??嗅いでみてくれないか??


ガルディ : 飯食ってんだぞ勘弁してくれ。


隊員君1 : 隊長食事中ですよ。


隊員君2 : 隊長マジで気にしすぎです。



リカちゃん : ふふふ。あ!カブとガイクおじさんに手紙送らなきゃ。


隊員君2 : 書いたらまたください。僕がまた郵送班に渡しておきます「マランツ副隊長」。


リカちゃん : う、うん。分かった。


リカちゃんは2週間に一度お手紙をカゴの村に送っている。返事も返ってきてるのだ。

この世界は紙の生産が行き届いており、2080年現代の製紙工程に負けないぐらいの技術もある。


そんなカゴ村で止まっていればなかっただろう新しい幸せな時間が過ぎていった。








とある高級料亭


パスタムニア伯爵 : あんなに旨みがない村に金を出すとは、やはり叩き上げとは我々と並ぶ貴族としての質には届かないのか。最初は面白い成り上がりだと見てはいたがあそこまで全力を出されて売らなかったら私も否とは言えんしな。あそこは調べ尽くし何もないことは確認済みだ。


秘書 : はい。兵に周辺地域を調べてあげましたが平原です。鉱物も無ければ川も穏やかなものしかなく近くに森があり弱い魔物と猪やたまに熊程度しかでず特産品の野菜に関しては取るに足らないものです。強いて言えばほんの僅かな人口増加と平原というそこそこの土地ぐらいです。男爵家の生産項目はリスト化して見ましたが特に生産工場を作るなどの目的も無さそうでした。強いて言えば本国に定期献上するために果物園という情報ぐらいでしょうか?


パスタムニア伯爵 : ふん。それが本当なら浅い点数稼ぎよな。面白くない。男爵に登り詰め上に上がるために果物の献上など、まるで商人だな。貴族として限界が見て取れる。2度と話すことはないだろう。


??? : それ以外に理由があるとしたら?


すると長い机の反対側に座っている貴族らしい男が意味深に話す。


パスタムニア伯爵 : …何が言いたいのです?


??? : 男爵の領地周辺環境が悪化してることは分かりますかな?


パスタムニア伯爵 : 馬鹿にしないで欲しい。調べさせたが魔王の残滓などという嘘か本当か分からん魔素で凶暴化してる魔物…それに手こずってるらしいではないか。弱小貴族ならではの悩みだ。私のところにいるガルルやバジー並の武将。そしてその武将に遅れを取らない兵が入ればそんな中途半端な悩みに時間など使う必要はないのだがな!


くっくっくっと、自分の所の優秀な兵のことを思い出して上機嫌になる伯爵。


??? : あの村を手に入れてから男爵の兵の中に新たな強者が誕生したとのこと。



パスタムニア伯爵 : …聞いたことないですぞ?あの村には元Aランク崩れの冒険者男が居るだけ。しかも村周辺の森から出た魔物で総崩れと聞いた。…そうか。それを倒した強者が村に居た…そう言いたいのですか…


男は頷いて答える。


このことが社交界などで噂にでもなれば男爵の踏み台にされたと笑い物にされる。

貴族は面子が全てだ。殴られたら殴り返さなくては…そのあとは塗り潰すほどの成果をあげなければ道化師一直線。


今の情勢で強化されてる魔物以外のことを考える貴族は稀にいてしまう。自分の領地環境情勢に余裕もあれば兵隊を本国に貸して貸しを作っやろうなど他の貴族も頭の中がお花畑なのだ。


その本国は今力が増してる宗教国家イルミレイトから送られてる教会勢力と聖女の言葉を聴き犠牲を払って召喚する勇者召喚の儀式の準備に入っていた。

魔王が出ると水面下で一部の人間のみで共有された情報が進んでいるのだ。

人族主義の現ムリラント王は新たな力が手に入ると何かに取り憑かれたようにうめいている。

完全に危ない状況なのである。

一部の貴族や剣聖がなんとかしようと頑張ってはいるが強行策も打てずにいた。そう新たな魔物、教会に引っ掻き回されているのだ。

そして人族と戦争していたドラリオンは魔王の兆しが見えて人族との戦闘を避け軍の強化、歴史の収集、そして人族の一部を受け入れるようになっていた。




パスタムニア伯爵 : 私に対しての宣戦布告…男爵風情が道を踏み外したな。私は用事ができました。これで失礼させていただきます。


??? : やることが多いだろう?行ってくると良い。


パスタムニア伯爵 : ありがとうございました。ハルメナス公。この借りはいつかお返しします。


ハルメナス公爵? : いえいえ大丈夫ですよ。私たちの仲なのですから。


すると伯爵は連れと一緒にそそくさと外に待機してた私兵と一緒に帰路に着く。




残された公爵?は笑いながら独り言を言う。


ハルメナス公爵? : くっくっく。人間の中にヤバいのが出てきたな。早い段階で人間の手によって殺されてくれ。私の登場はまだ先が好ましいぃ。


すると残ったワインを飲み干し


ハルメナス公爵? : 人間を誘導、洗脳することは簡単だ。神代の魔法が死にかけてる今の人間なぞ容易い。魔法なぞ使えばバカが嗅ぎ回る。俺みたいに変身が上手いとこんなものだ。スマートに片付けられる。


笑いながら煙のように消え…


??? : さてさてあとは勇者召喚を邪魔したいがね…剣聖め…


すると煙が消えると同時にその場では何もなかったように静かな時間が過ぎていくのだった。







3年後

情勢は苛烈を極めていた。

国が勇者召喚を全世界に発表した。

数年掛かるが今を耐えてくれとのこと。

ドラリエントとは一時的な同盟をと言うまで追い詰められた。現段階ではドラリエントも即答せず、今までの被害を言及するなど芳しくない。

魔物は強くなり国内に魔物が暗躍してるとまで言われている。

しかも変身して同じ人間同じ声になれるとあってお互いが本物か疑心暗鬼の状態なのだ。

…そしてこんな時期に伯爵領との関係性が悪化してるとクライン男爵も焦燥していた。


リカちゃんは男爵領周辺を部下たちと共に駆け回り魔物と戦い、山賊を殺し。子供に似つかない成長をしていた。


リカ : 手紙が返ってこない…何かあったの?


ここ数ヶ月返事が返ってこないと仕事で疲れていたリカちゃんは気にしなかったが流石に聞いてみた。


隊員君2 : マランツ隊長…済みません。実は配達員も返ってこないのです。


リカ : …嫌な予感がする。


今はエフトもガルディもパサも男爵の元で働いておりリカちゃんは認められて隊長になっていた。魔法だけでなく剣術も強い。


男爵邸に着くとリカは聞きたくないことを聞く。

仕事を終えて父と母に会いに行くついでに聞こうと男爵に会いたいと言うとすんなりと合わせてもらったのだ。


クライン男爵 : 済まないリカ・マランツ。伯爵と戦争状態に入ってしまった。カゴの村は伯爵領に近くこちらから手を出すことができん。



リカ : !?!?!?


同じ国の人間同士で争うなど、本当にあり得ないことだがこの時代は度々あったことだ。そして何より信じられないのはこの情勢でやり合うことだ。



クライン男爵 : 黙っていて申し訳ない。


パサ : リカ…

ガルディ : リカ。


しょんぼりして部屋から出るリカちゃん



外で待機していた隊員たちが心配そうに見つめるがそのまま報告書を提出し後日の話を少しして解散となった。




少し歩くと聞いた覚えがある声がした。


??? : リカちゃん


リカ : え?…る、ルーリー!


ルーリ : 久しぶりリカ!


リカ : 変わってないねルーリー!


ルーリ : リカは少し変わりすぎてない?


リカ : それよりも!カゴの村は!


ルーリ : …それが


かくかくしかじか


リカ : ……え


ルーリ : 村長も皆んなも兵隊に捕まって殺されそうなの、私だけ逃がしてくれてなんとかここまでこれたの。


涙を流しながらカゴの村が大変だと伝える早くしないと大変と迫真に伝えるルーリ。よく見ると確かに服が汚れている。


リカ : い、行かなきゃ!!ルーリーはここで待っててね!怪我してるなら近く人に助けを求めてね!


リカちゃんはルーリちゃんを置いて馬小屋に猛ダッシュで向かうと馬を借りる!と言って隊員さんを困らせて行き先を言わずにカゴの村へ向かった。


馬小屋隊員 : 隊長どうしたんだ。最近悩んでたしなぁ。でも馬に乗ればそのストレスも減るかもな。


ルーリ : 兵隊さん。リカちゃんどうしたの?


すると音もなく兵隊の後ろにいたルーリちゃん


馬小屋隊員 : お?お嬢ちゃん隊長の知り合いかい?汚れてるね?俺たちの兵舎で女性用洗い場があるから貸してやるよ。急いでたっぽいね。はぁ何で急いでたか知らないけどね。俺は報告と書類に追加だ。仕事増えた…な…って…え?


小さいおててが隊員の腹に穴を開けて飛び出していた。

そしてエグるように内蔵と血肉を引きずり抜く。


馬小屋隊員 : な、んで


バタっと倒れる馬小屋隊員。すると青い炎で燃え消えた。


ルーリ : リカちゃん…楽しみだなぁ…カブ待っててね




雨が降り始めた。



ルーリちゃんの口には尖った歯があり背中からは動物の羽が生えていた。



笑いながらその場を飛んで後にした







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作者です!お読みいただきありがとうございます!

更新ペースは大体1-3日に1話でやっていきたいと思います。


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