第五章:ひかりの方角(2011–2020)

日記:2011年


街は揺れ、画面が揺れ、人の声が電話の向こうで途切れた。

「大丈夫?」

この言葉は、届いたのだろうか。

飛んでいった曲が、誰かの部屋に落ちて、しばらくそこに座っていてくれたらいい。

悲しみは長い。だから歌は短くてもいい。何度も繰り返し聴けるように。

あの日以来、歌は以前よりも低い位置から始まるようになった。地面に近いところで、土の匂いがするところで。

手をつなぐという比喩が、やっと本当の意味を持った。


旅のノート


地方の体育館。床は木の匂い。

開場前、スタッフがいそがしく歩く。

ラインテープがまっすぐ引かれていくのを見ていると、人生の見取り図みたいだと思う。

真っ直ぐ引けない日もある。曲がってしまって、貼り直す日もある。

それでもテープは、最終的に「ここからここまで」を示す。

僕らの歌も、いまはそうでありたい。

「ここからここまで、生き延びよう」

「ここからここまで、笑っていよう」

「ここからここまで、一緒にいよう」

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