あの日真実を知った俺は、この世界で孤独に生きると決めた〜何を犠牲にしようとも今度こそあいつらを守ると決めたんだ〜

九茶ララ

異世界に転生してから二十年

 今日もよく曇った空だ。


 この灰色に染まった空を見てからもう二十年が経つ。今日も日雇い冒険者としてコツコツと日銭を稼ぐ日々だ。いつしか、俺がこの空の下で何を目指していたのか、それすら思い出せなくなっていた。あの青い空を、一度だけでもこの目で見ることができたなら何か俺の人生は違っていたのだろうか。


「いや・・・」 

 そんなことはない・・・か


 真実を知ったあの日から俺の体の芯まで灰色になっている。この灰色に染まった世界をどれほど見ていればいいのだろうか。


 たとえ、今世界を救ったとしても、その功績が汚された血の上に築かれたものだと知ってしまえば、もう昔の自分には戻れない。俺は今までいったい、どれだけの犠牲を払ってきたのだろう。


 もう後戻りはできない。


「・・・・ぃ」


 あいつと契約してからもう決めたはずだ。


「・・・・い」


 俺の肩には、この世界すべてを巻き込む、終わりの見えない戦いが乗っている。


「・・・・おい!」


 全てはこの世界をあるべき姿に戻すため。


「おい!!あんさん」


 「……すまない、どうしたんだ。」と、現実へと引き戻された俺はつぶやいた。また意識が飛んでいたらしい。あの男の記憶は、今はまだ考えるべきことじゃない。


「どうしたじゃねえよ。あんさん以外みんなででいったよ。もう目的地だ。」

 

 俺は不定期に自分とは別の世界に意識が飛ぶことがある。それも思想を植え付けるかのように。その世界には男がただ一人たたずんでいる。強い気配を放ちいつも黒い服を着ている。この男とはかれこれ10年も出でくるがあいつが誰なのか俺は何も知らない。これは誰の記憶なのだろうか。

 懐かしいような、でもまだ知らない方がいいと何故か強くそう感じてしまう。


(・・・これはまだ考えるべきことじゃないか・・・)


 ベンさんはそう言って、俺の背中をポンと叩いた。

「顔色が悪かったんでな、起こすのを躊躇しちまった。もう着いたんだ、さっさと降りな」

 そう言いながらも、ベンさんの口調はどこか優しかった。きっと、俺のただならぬ様子に気づいて、気を遣ってくれたのだろう。俺は、そんなベンさんの気遣いに、少しだけ救われたような気持ちになった。

 

「・・そうか。感謝する、これは詫びだ。」


 袋から銀貨を取り出しベンさんの手のひらに置く。

 埋まっていたところに滑り込みで入れてもらったからな。

 人から恩を受けたら、決して忘れてはいけない。それを胸に刻んでいる。


「銀貨なんか貰えねえよ。あんさんには警戒してもらってたからな、むしろこっちが払うべきなんだ。」


 そう言って財布からお金を取り出そうとする。


「本当に大丈夫だ、ベンさんには無理言って馬車に乗せてもらったからな。チップだと思ってくれ」


 そう言ったら少し寂しそうな表情をしたベンさんは、受け取った金貨を手のひらで転がしながら、小さく息を吐いた。


「そうか、ありがとなあんさん。体には気をつけろよ。」


 馬車が去った後も俺はしばらくその場に立ち尽くしていた。そして前方に目を向けた。これがかの有名な英雄王が創ったとされる都市エルイチェシカ。エルイチェシカの街のざわめきがまるで遠い世界の騒音のように聞こえる。しばらく歩いているとあの意識が飛ぶ感覚が襲ってきた。しかし今回はいつもと違った。意識はすぐに戻ることなく、俺の脳裏にこの街の未来の姿が灰色に染まった空の下で崩壊していく映像が流れ込んできた。

 俺は、震える手で肩の紋様を握りしめる。この力は、救うために与えられたのか。それとも、この世界を滅ぼすために与えられたのか。崩壊していく街の映像は俺の心を再び灰色に染め、この戦いの重さを改めて感じさせた。


 俺は顔を再び上げた。顔に当たる冷たい風が頭を冷やしてくれた。


 やるべきことは決まった。

 この街を崩壊から救う。それが、この力を与えられた理由なのかもしれない。俺は街の門へと歩き出し、最初の目的である冒険者ギルドを目指した。もはや日雇いの仕事ではない。俺の戦いは今、始まったのだ。



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小説を初めて書いて投稿しました。カクヨムのこともまだあまりよくわかっていません。


何か至らない点や修正するべきこと、アドバイスをもらえたらとても励みになりす。


これからも応援よろしくお願いします。

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