短歌行(たんかーこう)

對酒當歌 人生幾何

酒に對(むかえ)しては當(まさ)に歌ふべし。

人生幾何(いくばく)ぞ

(酒を前にして歌わずにおれようや、人生いかほどか)


譬如朝露 去日苦多

譬(たと)えば朝露(ちょうろ)の如(ごと)く、

去日(きょじつ)苦(はなは)だ多し

(たとえば葉を濡らすあさつゆのよう、過ぎた日々は苦労が多い)


慨當以慷 憂思難忘

慨(なげ)くには当(まさ)に以(もっ)て慷(こう)すべし、

幽思(ゆうし)忘れ難し。

(嘆くより酒で心を奮い立たせようではないか、だが憂いは忘れることはできない)


何以解憂 唯有杜康

何を以(もっ)てか憂いを解かん、

惟(た)だ杜康(とこう)有るのみ。

(なにを使ってこの憂いを解こうか、ただこの杜康(酒の神=酒そのもの)があるではないか)


青青子衿 悠悠我心

青青たる子の衿(えり)、悠悠(ゆうゆう)たる我が心

直訳(青々とした君の襟、ゆったりとした心)

意訳(爽やかな青いえりの志ある士たちを想い慕う)←けなげ!


但為君故 沈吟至今

但(た)だ君を故(こ)と為(な)し、沈んで吟(ぎん)じ今に至(いた)る

(君を古くから知る友として今まで深く思いふけっていた)


呦呦鹿鳴 食野之苹

呦呦(ゆいゆい)と鹿は鳴き、野の苹(よもぎ)を食(は)む

直訳(朗々と鹿が鳴き、野の青草を食む)

意訳(鹿の群れのように集まり盛大な宴を催しもてなす)


我有嘉賓 鼓瑟吹笙

我に嘉賓(かひん)有り、鼓瑟(こひつ)し笙(しょう)を吹く

(私に良い客があれば、琴を弾き笛を吹いてもてなそう)


明明如月 何時可輟

明明(めいめい)たること月の如く、

何(いず)れの時に輟(や)むべき

(君の輝きたるや遠い月のよう、いつこの手に収めることができようか)


憂従中来 不可断絶

憂(うれ)いは中(うち)に従(つ)いて来たり、断ち絶つべからず

(憂いは心から起こる、断ち切ることはできない)


越陌度阡 枉用相存

陌(みち)を越え阡(みち)を度(す)ぎ、

枉(いたずら)に用(もち)いて相(あ)い存(な)す

(四方のあぜ道を越え、道理を曲げてでも遠路はるばる訪ねてきてくれたなら)


契闊談讌 心念舊恩

​契闊(けいかつ)し讌(さかもり)に談じ、

心は旧(ふる)き恩を念(おも)う

(変わらぬ約束のもと酒を酌み交わし、心に古き友を思い宜を結ぶ)


月明星稀 烏鵲南飛

月は明らかに星は稀(まれ)に、烏鵲(うじゃく)は南に飛ぶ

(月は明るく星の瞬きまばらに、カササギは南へ飛ぶ)


繞樹三匝 何枝可依

​樹を繞(めぐ)りて三匝(さんそう)し、何れの枝に依(よ)るべき

(樹を三度飛び巡り、どの枝を拠り所とするか決めあぐねている)


山不厭高 海不厭深

山は高きを厭(いと)わず、海は深きを厭(いと)わず

(山がどれだけ高かろうとも、海がどれだけ深かろうとも)


周公吐哺 天下歸心

​周公は哺(ほ)を吐きて、天下は心を帰(き)せり

直訳(周公は客人が訪れれば食べかけを口から吐き出してでも迎え入れ、天下の人々はその徳に心服したのである)

意訳(いにしえの英雄に倣って良き客をもてなし、良き人を求める)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る