『ダークヒーロー志願ー笑う蠍ー』
白乾兒
第一部 プロローグ 蠍の胎動
その《夢》の中で、俺は――
無機質な白い部屋。
いくつも並ぶ巨大なガラス水槽。
その中では無数の毒虫が蠢き、争い、喰らい合っている。
まるで“
現代に再現されたかのような、
どこまでも悪意に満ちたカフカ的世界。
俺はフェンシングのフットワークのように素早く動き、
巨大なスズメバチの突進をかわし、
尾節の
噛み砕いた瞬間、
世界がゆっくりと歪む。
夢は、いつもそこで途切れる。
――
朝。
喉の渇きで目が覚めた。
ミネラルウォーターを一気に飲み干しても、
悪夢の後味だけが喉の奥に残っている。
俺の名は――
通称“
国立工業高等専門学校で応用生体工学を学ぶ、
そこらにいる理系オタクだ。
ただ一つ、妙な特技がある。
被写体を一目見れば、
三サイズがほぼ正確に分かる。
目測でミリ単位を割り出す
──だがこの頃は、
自分が“神話枠の少年”になるなんて、
かけらほども思っていなかった。
――
父は海上保安庁の元技官。
名は
ある事件を機に現場へ戻り、
俺は転校続きの“
中三でマレーシアから帰国したが、
――
あの頃の俺は、世界を信じていなかった。
正義も悪も、
“
だが――
その“思想”が、
ある日、
――
中国・
国際Eスポーツ
黒光りする巨大な虫を、
俺は軽いノリで口にした。
後になって知った。
あれは武漢ウイルス研究所から流出した、
廃棄予定の生物兵器プロトタイプだった。
帰国した夜、全身が焼けるように痛み、
骨が軋み、神経が再配線され、
三日三晩、熱と闇のあいだを彷徨った。
目覚めたとき、
俺はもう “別の
血液の粘度。
骨密度。
反射速度。
そのすべてが、
人間の基準から外れていた。
――
そして最後にだけ言う。
あの日以来、
俺の中には一匹の“サソリ”が棲んでいる。
(学名:クモガタ網――
それは静かに呼吸し、
次に動き出す“
ただ待っている。
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