42歳バツイチ 神様になってイチャLOVEハーレムを作る!
かくろう
第1章
第1話 老婆から魔法薬をもらう男
俺の名前は篠宮隆行。四十二歳、万年課長。
どこにでもいる、ごく平凡なサラリーマンだ。特筆する才能もなく、出世街道からは外れて久しい。家庭のほうもすでに破綻し、バツイチの独り暮らし。元嫁との間にいた娘だって、血のつながりはなく、俺が「父親らしき役割」を担っていただけだった。
――そんな俺が、今、とんでもなく訳の分からない状況に立たされていた。
目を開けた瞬間、そこは真っ白な空間。床も天井も壁もなく、ただ光だけが広がる。
つい数時間前、俺は確かにオフィスのデスクに突っ伏して、残業の疲れで仮眠を取ろうとしていたはずだ。それがどうしてこんな場所に立っているのか。まったく記憶が飛んでいる。
「……これってもしかして、例の異世界転生ってやつか?」
脳裏をかすめたのは、ラノベやアニメで散々見てきたあの王道展開だ。ブラック企業で心身をすり減らした社畜が、気づいたら異世界に放り込まれて、チート能力で人生大逆転。ハーレムを築いてウハウハ。
俺もついに、そんな夢のような物語の主人公に……?
「いやいや、ありえんだろ」
すぐに自分でツッコミを入れる。そもそも俺の会社はそこまでブラックじゃない。確かに残業は多いが、労基は守られているし、同僚たちとの人間関係もそこまで悪くはない。何より、死んで転生ってのは物騒すぎる。俺は別に、命を賭けて異世界に行きたいわけじゃない。まだ見たいアニメもあるし、年老いた母を一人残して旅立くなんて無理だ。
そうやって頭の中で現実逃避をしながら歩いていると、不意に視界の先にぼんやりとした灯りが見えた。
目印など何もないこの虚無空間で、光といえば希望の象徴に違いない。俺は半ば引き寄せられるように、光のあるほうへと足を速めていた。
近づくと、それは一軒の家だった。
丸みを帯びたドーム型の外観は、現実では見たことのないデザイン。某アニメで見た、投げると煙を上げて出てくるカプセルハウスを思わせるが、より中世的で幻想的な趣きがある。
小さな窓からは、暖炉の炎のようなオレンジ色の揺らめきが漏れている。
「……いや、これはもう“ここに入れ”って言われてるようなもんだろ」
そんな風に思いつつも、得体の知れない恐怖はある。誰が住んでいるのか、いや、そもそも人間が住んでいるのかどうかも分からない。
意を決して小窓を覗き込もうとしたが、位置が少し高く、奥まっていて中の様子はよく見えなかった。ただ、確かに明かりが揺れている。誰か、何かがいるのは間違いない。
ドアノブは、俺のマンションと同じく下に引くタイプだった。恐る恐る指をかけた、その時――
「人の家の前で何をこそこそしているんだい! とって食ったりはしないから、さっさと入りな!」
突然響いたしわがれ声に、心臓が跳ね上がった。驚いた拍子に思い切りノブを引き下ろしてしまい、俺はドアと共に後ろにすっころぶ。
「うわっ!」
あわてて身を起こすと、中には想像通りの老婆がアームチェアに腰かけて、こちらを睨んでいた。
その存在感と迫力に押され、俺は反射的に部屋へと足を踏み入れてしまう。
「で、お前さんは何をしにここへ来たんだい?」
「えっと……気がついたらここにいまして」
事情を簡単に話すと、老婆はしばし目を細め、やがて「なるほど」と頷いた。
「おぬしは“迷い人”か」
「迷い人?」
「そう、この世界とおぬしの世界の狭間に迷い込んだ者よ。大抵は死んだ瞬間に魂だけが来るものじゃが、生きたまま来るのは珍しい。おぬしの場合は偶然、意識だけが流れ込んだのじゃろう」
どうやら俺は死んでいないらしい。それを聞いて胸を撫で下ろす。
「異世界で無双? 笑わせるわ。お前さんみたいな凡庸な男は、向こうに行けば数秒で魔物の餌じゃ。黒髪黒目は珍しいから奴隷として売られるかもしれん。やめておけ」
老婆の言葉は辛辣だったが、妙に説得力があった。俺も正直、異世界無双なんてできる自信はない。
しかしその老婆は、急に機嫌を変えたように「特別に手土産をやろう」と言い、小瓶を取り出す。
橙色の液体が入ったその瓶は、ジュース缶ほどの大きさ。光を反射して、どこか神秘的に輝いている。
「これはな、一週間だけ運がとてつもなく良くなる魔法薬じゃ」
聞けば、運もこの世界ではステータスのひとつ。魔法や戦闘にも直結する力だという。原液で飲むと効果が切れず、強力すぎて何が起きるか分からない――そんな危険な代物らしいが、希釈したこれは副作用なしだと老婆は胸を張った。
「……まあ、せっかくもらったんだし、ありがたくいただきますよ」
そう言って瓶を受け取った俺は、礼を言い、老婆に見送られる。杖で頭をコツンと叩かれ、視界が揺らぐ。
「達者でな。二度と会うことはあるまいが」
老婆の笑顔を最後に、俺の意識は闇に落ちていった。
――だがその小屋で、彼女はひとり不気味に嗤う。
「さて、どんな顔をするか楽しみじゃのう。極上の幸運は甘美な毒。お主は夢のような一週間を忘れられるか?」
優しげな老婆の仮面は消え、性悪な魔女の素顔が露わになる。
しかし、彼女がふと棚を見た瞬間、凍りついた。
「……あれ? 原液、渡しちゃった?」
魔法薬研究一筋の性悪魔女。だが、致命的にドジでもあった。
こうして俺の運命は、想像もつかない方向へと転がり始めるのだった。
――――――――――――――――――
※後書き※
過去作リメイクですが、文章はほぼ新規書き下ろしです。
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※こちらの連載作品もよろしくお願いします。
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【絶対俺だけ王様ゲーム】幼馴染3人を独占して、毎日甘やかされ続けていいんですか!?
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