届き続ける未来

@yU-Nn

第1話 ポストの中の封筒

 ある日、ポストの中に一通の茶色い油紙の封筒が入っていた。

 宛名も差出人も書かれておらず、裏面も空白のまま。けれど、その質感にはどこか“切実な気配”があった。


 封を開けると、中の紙には震えるような文字でこう書かれていた。


 ――「次の水曜日、外に出てはいけない」


 水曜日は、私が唯一パートの休みの日だ。

 いつもなら朝から買い出しに出かけ、スーパーや薬局を回って帰ってくる。

 その週も同じように出かけるつもりだったが、封筒のことばが妙に気になった。


 水曜日、私は一日中家から出ず、冷蔵庫の有り合わせで作った夕飯に主人と息子は少しがっかりしていた。


 木曜日、パート先で同僚が言った。

 「昨日ね、あの道でトラックが横転したらしいの。けが人はいなかったみたいだけど、すごい事故だったみたいよ」


 その道は、いつも私が買い出しに使っている道だった。

 あの時間に出かけていたら、もしかすると私は事故に巻き込まれていたのかもしれない。

 胸の奥がひやりとするのと同時に、以降

茶色い封筒のことが頭から離れなくなった。


 ——だれが何処から、何のために?どうやって?


 その翌日、再びポストに封筒が届いた。

 前と同じ茶色い油紙の封筒。中の紙には、こう書かれていた。


 ――「インターホンが鳴っても、ドアを開けてはいけない」


 夕方、パートから帰って夕飯の支度をしていたとき、インターホンが鳴った。

 モニターを覗くと、見知らぬ男がドアの前に立っていた。私はドアを開けなかった。


 その夜のニュースで、近所で強盗殺人事件が起きていたことを知った。玄関扉を開けた瞬間にナイフでメッタ刺しにあったらしい。ニュースで映された犯人の顔格好は、夕方の男のそれだった。もしあのときドアを開けていたら、被害者は私だったのかもしれない。


 二日連続で起こった“死”の気配に、私は恐怖を覚え、あの茶色い封筒のことを誰にも言わないでおこうと決めた。

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