第三章
第16話『神聖女へ寄せられる期待は無限大』
「正直ルミナに寄せられている期待は無限大よ」
「そうなの?」
「うん」
リインは唐突に、そんなことを言い出した――だけではなく、ミィラ、サーレ、ハンノも首を縦に振っている。
そして、エドとラグもかわいらしく首を縦に振っていた。
そんな私たちは今、ご飯休憩のために食事処へ足を運んでいる。
木造建築なのはそうなんだけど、明かりとしてオレンジ色のガラス容器に蝋燭を入れておしゃれな色合いが店内に広がっていて、どこに目線を向けても落ち着く。
動物を拒否されるかと思ったけど、そこも快く受け入れてくれただけでなく、しっかりと食べ物をお皿に乗せて運んできてくれた。
「その発言は気になるから後で聞くとして。ここって落ち着いた雰囲気な場所なのに、品揃えが凄い想定外」
「まあね。ここは冒険者が立ち寄る店でもあるから。でも周りを見てわかる通り、野蛮な人間は誰一人としていない」
「たしかに」
「融通も利かせてくれて個室にも案内してくれるし、2階は予約必須だけど宴会とか集会にも使えるんだよ」
「ほえ~」
なんだろう、全てが違うんだけど居酒屋みたいなイメージを思い浮かばせてしまった。
でも、お魚やお肉、サラダやデザートまで揃っているし、ジュースもスープもいろいろあって凄い。
しかも話の通り、融通を聞かせてくれているからこそエドとラグもパクパクとご飯を食べられているわけだし。
「堅苦しそうに見えて、こういった他ではやってくれないこともやってくれるんだ」
「そ、そのようね」
サーレが注文した皿の上を見たら、誰でも納得すると思う。
店の雰囲気的にはファミレスとレストランの間ぐらいの清潔感と雰囲気の良さなんだけど、そのどれもがステーキの4枚乗せなんてやらない。
商品の見た目が全く意識されていない、というか、これすらも客の要望に合わせたスタイルなんだろうけど……あまりにも見た目が肉肉しすぎている。
ミィラのコーンスープもそうだ。
大体の店は、パンとスープを別々に用意すると思うのだけど、切ったパンが既にスープの中へぶち込んである。
わかる、わかるよ、その食べ方、美味しいよね。
でもさ周りの目線を気にしたら、そんな大胆にパンを浸しはしない。
これたぶん、ミルクスープや牛乳とパンを頼んだら、既にパンから牛乳が滴るほど浸された状態で提供されるんじゃないかな。
いや美味しいよ、私も好きだよ、でもほら? 大体は別の気にするところがあるでしょ?
「あたしも1人で飲食店を探していたら、ここが第一候補になるもん」
そんなハンノが注文したのは、まさからの『おにぎり』と『野菜の漬物』。
めっちゃ日本食にしか見えないラインナップに、これなら醤油も味噌もありそうだし、刺身や寿司もあるんじゃないかと思ってしまう。
もしかしたら普通にあるかもしれない。
メニューをもう一度確かめたらわかるだろうけど、まあさすがに次の機会でいいよね。
「私も気に入っちゃった」
「ルミナ、さすがに偏食すぎない?」
「なんのこと?」
「まあ、各々が好きなように食べたらいいけどさ」
ルミナから偏食と言われてしまったけど、私が頼んだのはフルーツの盛り合わせにフルーツジュースからのフルーツアイス。
お肉とかスープも美味しそうだったけどメニューにフルーツが並んでいるのなら、頼まないわけにはいかない。
この世界にフルーツがあること自体は、あの領地で提供されたことがあるから把握済み。
でも頻度は極めて低く、そういうところからも冷遇されていた事実は伺える。
転生前もフルーツ大好きだったし、食べたことのあるフルーツが目白押し。
苺にバナナにベリー系や葡萄、スイカにメロンとなんでもあり。
ここまで揃っているということは、少し値が張るものの高級すぎず庶民でも食べられるわけだし、フルーツ産業が盛んなんだと思う。
難しいことはわからないけど、食べていいのだから食べるだけ!
「それで、私に期待大ってどういう意味?」
「そりゃあまあ、あそこまで凄い神聖なる力を扱えるだけじゃなく、ルミナ自身も戦える。要するに1人でダンジョン攻略できてしまうぐらいの実力を持っているんだから、ね?」
「練習をしていないし、鍛錬も積んでいないから全て自己流だし荒いけどね」
「だとしても、1人で数十人分――もしかしたら数百人分の働きができるルミナに期待しない方がおかしいでしょ」
「期待に応えられるよう頑張ります」
「一応だけど、代償はないの?」
「ないよ」
「まったく?」
「うん。と言っても、制限があるかもしれないし、限界もあるかもしれない。そういう状態になる案で力を使ったことがないだけかもだけど」
実際に、私がダンジョンを封印していても攻略していても力切れになったことはない。
女神様の力をそのまま使わせてもらっているから、打ち切られでもしない限りは限界はないはず。
逆に言えば、女神様の意に反する悪行に手を染めたら力を扱えなくなるんだろうけど。
「でもさ、エドとラグも居ることだし勇者パーティは強くなりすぎちゃったんじゃないか。ほーらほら」
サーレはステーキを切り分けてエドとラグに与えながら、そんなことを呟いた。
「それ、食べて大丈夫なの?」
「犬と猫だったらヤバいだろうね」
「精霊だから大丈夫ってこと?」
「そういうこと。だから、ダンジョンへ入る前に与えた肉とかは味が薄かったんじゃないかな」
「へぇ~そうなんだ」
正確な知識はないけど、転生前は犬や猫にニンニクやタマネギとかチョコレートをあげたらダメって、どこかで見た記憶があったから心配になっちゃった。
でもなるほど、動物と精霊ってそこまで見た目に差はなくても、中身? が全然違うのね。
はっ!? チョコレート!?
この世界にチョコレートはあるのかな。
近代的な――この世界で言ったら未来的な技術はないにしても、食文化はここまで発展しているのだから可能性はゼロじゃない!
期待してなかったら絶望感が凄いことになりそうだけど、もしかしたらあるかも!
「あまり気が進む話じゃないけど、【ダンジョン崩壊】が起きたときに犠牲者を減らすことができる。そして大規模なダンジョン攻略のときも」
「ダンジョン崩壊?」
「まさかルミナに封印を任せておいて、何も教えてもらってなかったの?」
「ええ」
「簡単に言ったら、ダンジョンからモンスターが出てきてしまう現象に名前が付けられた結果ね。でも正直、それだけだと最下層のラスボスが地上に出てくることは稀なの」
「ほうほう」
「でも、一度でも封印が施されたダンジョンに起きる【ダンジョン崩壊】は、いろいろと状況が変わってくるの」
何それ何それ、すっごく初耳。
驚愕の事実だけど、ベリーを口に運ぶ手は止まらないっ。
「封印が解かれる、または封印の効力が失われたとき。【ダンジョン崩壊】が起きて、ラスボスも地上を目指して、ダンジョン内全てのモンスターが地上に出てしまうの」
「何それ大変じゃない」
「そうなの。だから冒険者ギルドと聖女協会は連携して領主や新規立候補者に金銭を援助し、周りの土地管理と共に聖女を優遇して封印を施しているの」
「冒険者を集めるのも大変だし、聖女を管理するのも大変なのね」
「それもそうだけど、この都市みたいにギルドを成立させて衣食住を整える必要があるからね。冒険者も聖女も」
「そもそもの話だけど、ダンジョンって沢山あるの?」
「あー……そうなの。ダンジョンの階層は場所によって違うけど、数は未知数とも言われているわ。だから地上にモンスターが居るの」
「ほほぉ~」
なるほどなるほどなるほど。
「さて、話はまだまだ続けたいけど長居はできないわね。ルミナ、アイス」
「えっ、あっ」
目線をリインからテーブルへ戻すと、せっかくのドーム状になっていたアイスが溶け始めていた。
そして他のみんなへ目線を向けると、もう1口か2口ぐらいしか残っていない。
「急いで食べる」
「落ち着いてね」
急いでアイスに手を付けるも――ちょっと溶けているアイスも美味しいっ。
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