セラフィーナ


 アーニがニンゲンの赤ん坊を拾って育てていることは直ぐに森中へと広がった。

 連日連夜様々な魔物達がアーニの住処である洞窟を訪れる。


「わぁ! 本当にニンゲンの赤ん坊がいるわ! そんなものを育ててどうするつもりなの??」


「分かったぞ! 大きく肥え太らせて食いでを増やすつもりだな??」


「それはいい! よし、オイラ達も育てるのを手伝ってやるから分け前を寄越してくれよアーニ!」


「そうねそうね! ならニンゲンでも食べられる木の実や野草を沢山持ってきましょうよ!」


 好き勝手に騒ぐ魔物達をアーニは溜め息をつき呆れた様子で見つめたが、その心中は彼らに感謝を念を抱いていた。

 ニンゲンの赤ん坊を育てるなんてこも、今まで一度もやったことはない。勢いで育てると決めてしまったが、どうすればいいか分からない。たったひとりきりでニンゲンの赤ん坊の子育てをすることに不安があったのだ。

 ……大きくなったら食べるなんて物騒なことを言っているが、そんなことは絶対にさせないが。



 ある時、アーニが赤ん坊へ母乳をやっているとヘイズルーン牝山羊の魔物のローローがやって来た。


「アーニ、あなたその赤ん坊に名前をつけてあげたの? このままじゃあ赤ん坊は自分の名前を“赤ん坊”だと思ってしまうわよ」


 それはそうだと思ったアーニは赤ん坊に“セラフィーナ”と名付けた。

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