第4話 女子校

「アルファの男の子が怖いのなら、女子校に行けばいいじゃない」

 サジーったら、頭いい!

 両親も、メアリーも賛成してくれた。ただ一人、メアリーの夫のロンは何か言い淀んでいたけれど。

 町に、中流以上の女子が通う学校があるらしい。今度、見学に行くことになった。

「あれ? サジーの身分証明書って、性別どうなってるの?本当に、女子校に行けるの?」

 みんな、ふふふふと笑うだけだった。サジーも笑みを返す。

「さあ、学校に通えるように、お勉強がんばりましょうね。サジーちゃん」

「えっ?」母の笑顔が怖い。「学校って行きたいですって言えば誰でも入れるんじゃあ……」

 後ろを振り向く。ロンは薪を小さく割っていた。

「それは、庶民向けの学校でさあ。文字の読み書きに、簡単な計算くらいは教えてくれる」

「その程度はできて当然です!サジーちゃん、あなたの人生なのよ? あなたはいずれアルファの殿方とつがいになるの。おばかさんなオメガなんて目も当てられない」

 母は額に手を当て、首を振る。メアリーが肩に手を置いてくる。

「学の無いオメガなんて、性的な対象として消費されるだけですよ。アルファの殿方もわざわざ番になろうとはしないでしょうよ」

 サジーはその場に伏した。わんわん泣く。

「自分は気持ちいい思いだけして、番にしてくれないの? おうぼう! 貴族のおうぼうよ!」

「まあ、貴族に限った話じゃありませんがね。散々、甘い蜜だけ吸って、ポイ捨てされる女の人がどれだけいることか」

 メアリーが溜息を吐く。ロンの肩がビクッと跳ねる。

「あ、あ~。畑を見に行こうかな。野菜の収穫が……」

 ロンがそそくさと部屋を出て行く。昔、何かあったのかしら。興味深い。

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