第32話 江の島の女神たち
すっかり私たちは海に魅せられてしまっていた。
茜さんは、それでも何一つ表情を変えることなく、にこやかな微笑みを湛えていた。
あれ?西野君は?
「にしのく~ん!」
紀代が叫ぶ。
「すいません、ぼく、海は苦手で」
湘南育ちなのに?
ま、いいか。
私たちは構わず、開放感につつまれながら、波打ち際ではしゃいだ。
「もうそろそろ、行こうか!女神のおわすあの島へ」
茜さんが立ち上がる。
「はい!」
私たちは濡れた脚をタオルで拭い登山用の靴下と靴を履いた。
「なんだか足が軽い!」
慣れない靴と山歩きで疲れて重くなっていた足が本当に軽くなっていた。
まぶしい顔をして茜さんが言った。
「この橋を渡ると、江の島なんだけど、ちょっとぐるぐる歩くので覚悟はいい?」
江の島は周囲4~5㎞ 標高60mという小さな島である。
しかし、この島にはいろいろな道が縦横に張り巡らされ、下手に路地に入ると迷う。
まずは最初の鳥居を過ぎるとお土産屋ら飲食店やら色んなお店が軒を連ねている
観光客はみな、軽装で、加奈子達のような登山ルックの人は皆無だった。
茜が言ってた女神さまの社(やしろ)は長い階段を登ったところにあった。
なんだか既に疲れを感じてしまう加奈子だった。
「ここは、辺津宮(へつみや)宗像三女神の末娘、田寸津比賣命(たぎつひめのみこと)を祀っている神社。今日は平日だからそんなに並んでないね!」
あれ?西野君、いつの間にか元気になっていた。
「ここは恋愛成就のパワースポット!恋愛を夢見る女性たちが長蛇の列をなすこともあるんですよ!」
どんどん饒舌になってる!(笑)
ふと気が付くと、紀代がなんかぶつぶつ言ってる。
「彼氏ができますように!彼氏ができますように!」
紀代は必死の形相で祈っていた。
「声が漏れてるよ!紀代!」
「あ、声が漏れちゃった!やっぱ、花の女子大生だし!彼氏、欲しいでしょ!あ、あっちにもリア充!彼氏いるんだから、お詣りしなくてもいいじゃん!」
紀代~・・。
「さ、今度は次女の所!」
「ちょっと待って!銭洗い弁天の池があるよ!」
紀代が気が付く。
ここにもあったのか!龍神様がカラフル!
西野君が池の真ん中にある龍にむけて小銭を投げた。
一発で賽銭箱に入る。
「すご~」
「昔からよく投げてたんで!」
ふふんと言わんばかりのどや顔。
私たちは何回やっても入らない。
「お金がもったいない~!」
茜さんは微笑みながら、ずんずん歩いていってしまった。
私たちは急いで茜さんの後をついて行った。
待って~!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます