第21話 平家の落ち武者?

2009年 4月30日 木曜日


まだ朝の7時前。


始発に乗ってなんとかここまで来たけど、紀代と東京駅で待ち合わせしたほうがよかったかな?


逆に迷うから、現地集合でいいよって言ってたけど。


しばらくすると、次の電車がホームに入ってきた。


新緑の匂いが電車の進入と一緒に運ばれる。


ドアが開くと、紀代と茜先輩が二人で出てくる。


「おはよう~!加奈子~大変だったよ~」


茜がドアを開くや否や云い放った


「紀代ちゃんね、間違えて藤沢方面の電車に乗ったらしく、途中で気が付いたらしくて、すぐに戻って大船に降りて、電車を待ってたら偶然出会ったの」


茜さんがホッとした表情。


「会えてよかったです~。東海道線だから自動的に鎌倉行くって思ってたら、なんか違うって気が付いて、大船に戻ったの。(泣)」


「というわけで、二人は朝ごはんは食べたかな?これからたくさん歩くので、

 エネルギーチャージはしっかりとね。

 低山とはいえ、長距離を歩くから、燃料切らさないように!

 登山の鉄則!」


「はい!」


とりえず、おにぎりは3つ持ってきた。


私たちは駅の改札を出て、北鎌倉の地に降りた。


北鎌倉の駅前は、GWの谷間のせいか、人影はまばらだった。


ほーほけきょ!


「あ、ウグイス!」


「幸先いいわね!ご飯食べながら聞いて」


茜がリュックから地図を取り出した。


「今日のコースを説明するわね。鎌倉七切り通しって知ってる?」


「あわからないです」


私たちは同時に答えた。


「事前に説明してもよかったんだけど、あえて説明しないで、まずは鎌倉を

自分の足でトレッキングすることで、自然に親しんだり、歴史を感じたりして欲しかったの。事前に知ると、つまらないでしょ?」


一応、私たちは鎌倉の歴史を学んだけど・・・。


「その鎌倉には落ち武者の霊が出るとか・・・。」


 茜さんは手を幽霊のようにして脅かす。


「ひぇ~!!! 最初に言ってくださいよ~!」


 紀代が私に抱き着く。


「いや、言ったら、来ないでしょ!ふふふ(笑)」


茜さんは笑ってたけど、確かに鎌倉の落ち武者の幽霊は聞いたことがある。


でも、朝から出たって聞いたことないし、霊感もないから気に留めなかった。


「あの、先輩!」


紀代が手を挙げた。


「私、先祖が平家なんです!源氏に負けて、今の宮崎に落ちたておばあちゃんが言ってました。鎌倉は源氏の土地ですよね?大丈夫かなぁ~、私、こう見えて霊感めっちゃ強いんですよ~」


えええ?意外・・・・。


紀代が平家の末裔?


「歴史的に見ると、ここわ和田氏の支配地だったから、落ち武者っていうのは和田氏の可能性があるから。平家は鎌倉まで来てあまり戦ったりはしてないわよ。あれは主に西日本の方ね。特に瀬戸内海かな」


「あの那須与一の話は鎌倉じゃないの?」

「あれは屋島。今の四国の高松ね」


「そうなんですかぁ~。よかったぁ。じゃぁ。私、祟られないわよね?」


そんな保証はないが、ここで平家の末裔が暴露されるとは思わなかったわ。


なんだかちょっと怖くなったけど、周りの新緑とウグイスのさえずりは、


そんな恐怖感を吹き飛ばしてしてくれる!


今日はさわやか!青空が奇麗!


「さ、エネルギーチャージは出来た!さっそく行きましょう!レッツラゴー!」


「あ、茜さん、それって昭和ギャグ?」


「あ、部長の口癖うつっちゃった!」


けっこう、お茶目な茜さん。


私は野口先輩のショップで格安で買った登山靴とジャケットをしっかり締め直し、


茜先輩の後をついて行った。

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