詠唱魔法の使い手ですが

@Nanasinooo

第1話

君は知っているだろうか。世界でたった四人しか使用することのできない、詠唱魔法の使い手たちの話を。彼らは「レゾナント」と呼ばれ、時に王と同等の扱いを受ける。

 一方、詠唱を必要としない無詠唱魔法は、一定量の魔力がある者ならば、誰でも使用することができる。彼らは、「サイレント・アルカニスト(サイラン)」と呼ばれる。

 詠唱魔法とは、言葉に宿る「理(ことわり)」を紡ぎ、世界の法則を書き換える術である。一語一語に意味があり、泳者の声が震えれば、魔法もまた揺らぐ。詠唱は、祈りであり、願いである。

 四人のみが使用できる詠唱魔法だが、ただ単にその難易度ゆえ使えない、というわけではない。レゾナントが四人以上存在すると、世界に災いが降り注ぐと言われているため、四人以上存在してはならないのだ。

 レゾナントは一人では戦うことができない。戦闘には必ず、レゾナントを除き五人のサイラントと共に臨むことが決められている。


 なぜレゾナントが一人で戦場に立ってはならないのか。それは、その詠唱がとにかく長く、かなりの時間を要するからだ。つまり、レゾナントが詠唱を行っている間、その他サイランで、レゾナントの護衛をするのだ。


 そしてこの世界は、四つの国で成り立っている。少ない、と感じた者もいるのではないだろうか。しかしこの世界では、それがごく当たり前なのだ。レゾナントという、最高権力を持った魔法使いを有する国が、「国」なのだ。レゾナントのいない国家は、もはや国ではない。脅威から逃れるためには、どこかの「国」に属さなくてはならなかった。国王もまた、ただの象徴に過ぎなかった。レゾナントが「右へ」と言えば、ない道を作って進み、必ず従わなければならなかった。___ほんの数百年前までは。



 

 

 

 

 

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