ワケあり物件で恋をしよう

あおじ

アンタは俺のモノ1


 大学入学を機に親元を離れてひとり暮らしを始める。

 その記念すべき第1日目なのだが、入居日特有の慌ただしさにすっかりと疲弊して早々にベッドへ横になった。

 暗闇の中で目を瞑ると、睡魔は直ぐに襲ってくる。眠気で頭の中はふわふわとしているが、意識を手放すその直前に不動産屋がを言っていたのを思い出したが……まぁ俺には関係ない。

 意識が途切れ、深い眠りに落ちた。





 寝苦しさに、目を覚ます。

 覚醒していない頭はまだボーっとしていたが、今の時刻が無性に気になり始めた。

 ベッドの隣のローテーブルの上に時計が置いた気がするので、チラリを視線を送ると深夜2時……所謂"丑三つ時"というヤツだ。

 まだまだ眠れる。そう思って再び目を閉じようと時、に気がつく。

 ソレは、部屋の隅に佇む人影。俺に同居人などいないし、誰かを部屋に招いたりもしていない。

 金縛り、というヤツなのだろうか? 体がピクリとも動かず、その影から目を離せない。すると、ソレはゆっくりと俺の方へと向かってきた。





 近づいてきたソレは、しゃがみ込んで俺の顔を凝視しながらブツブツと何かを呟いている。……呪詛、の類いだろうか?

 霊感なんてまるでなくて、そもそも幽霊などいないと思っていたのに、こんなのもう信じるしかないじゃないか。

 それに何より──。


「あ、やべ。どちゃくそタイプ」


 このの幽霊が、俺の好みど真ん中なのが相当ヤバかった。というか胸熱だ。

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