宇宙 (全4話)

金貨珠玉

宇宙人と出会う

 星が瞬き煌めいている。

 本当は遠くにあるのを知っているのに、手を伸ばせば届きそうで、私は背伸びをした。


「おい、落ちるぞやめろ」

「大丈夫だい」


 土管の上で、そばにいて片手を握ってくれるのは、幼馴染の修だ。


 大好きな顔が心配そうになっているのだろうと思えるだけで、胸が苦しくキュンとときめいた。


 実際には修の顔は暗くて見えないのだから、夜の闇をちょっとだけ恨んだものだ。

 修を見ていた顔を空に向けたら、一筋光が流れた。

「あっ! 流れ星だ!」

「おぉ、恵那も見たか。今日は流星群だから願い事叶え放題だな」

「修は何て願うの?」


 私の大好きな幼馴染、成田修は大人顔負けの強さと賢さを併せ持った少年だ。

 きっと私より面白いことを言ってくれるだろう。

 そう思っていたのに、いつもは冗談でも何でも私の言う事には乗ってくる修は顔を背けてしまった。

「い、言わねェよ。言ったら効果が無くなっちまう」

「そんなことないだろー。私も一緒に願ってあげるからさ、ほら早く言えいえい」


 暗闇の中なので顔が赤いのが気付かれなかったことは、修にとっては幸運だった。

「え、恵那はなんて願うんだよ」

「わたし? うーん。そうだなぁ」


 実際問題、もう既に願いは全て叶えられている。

 美味しいご飯も食べれるし、ふかふかの布団で寝れるし、大好きな修とは夏休み中遊べるし。

 でも、欲を言うならば――


「ワクワクするような、大冒険に出かけたいなぁ。もちろん修と!」

「そりゃあ楽しそうだな。俺も恵那と一緒の願いだ」


 そう言ったそばから、一筋流れ星が落ちた。

 私たちが二人で揃って祈ると、その流れ星はこちらに近づいて来た。

 どんどん光が強くなって――

「わっ! なんだろ!」

「危ねぇ! 恵那!」


 ぶつかると思いきや、寸前でカクンと角度を変えて、流れ星もとい小さい円盤状の、サイズも形もフリスビーのようなものが落ちていた。

 ただし地面に抉れるようにだ。

「これ、宇宙からの落とし物じゃないかな? すごいよ、大発見だ!」

「ん、んなわけねぇだろがよ。誰かのおもちゃだ。宇宙人がこんな小さぇわけねぇって」


 木の棒を拾って半分に割って片方を修に渡した。

 これで二人でつつきあう目論みだ。

 謎なものを見つけたら、二人でつんつんするのが常だからだ。

「あんま近づきすぎるなよ。光線でも発してくるかもしれねぇ」


 おもちゃといいながらも、修も宇宙人の可能性に目を背けないでいるらしい。

「おーい、宇宙人さん。地球人は人畜無害だよ〜出ておいで〜」

「馬鹿野郎!」


 呼びかけが通じたのか、小さな円盤の上の部分がパカッと開いて、何やら小さな可愛い生物が現れた。

「あっ! 可愛い!」

「おい! てめえ地球に何しに来やがった! 地球人代表として、相手になってやるぞ!」

「こらー、虐めちゃダメだって!」


 修がふんぞりかえって木の棒を突きつけたから怒ってやったら、宇宙人は笑ったようだった。

「$€々〆^」


「何言ってるか解らねえな」

「こういう時は……そうだ! おやつをあげるんだよ、ほら、チョコレートだよ。甘くて美味しいよ」

「動物にチョコは毒じゃないか?」


「毒じゃないもん。あむ」


 宇宙人はなかなか受け取らなかったが、私が一つ食べると納得したように円板の中に入れた。


「! ♡♪☆%#」


「喜んでるよ! よかったね」

「危ねぇことしやがる」


 チョコレートを渡すときに触れた宇宙人の手先は、ひんやりして気持ちがよかった。

「この子、手触りがいいね」

「ペットじゃあるまいし……あ、こいつ、ついて来る気満々みたいだぜ」


 修が言う通り、小さな円盤に乗ったまま僕らについてくるようだ。

「連れていくか?」

「うん!」


 修の問いに私は即答した。

 だって、こんな楽しいこと、断る理由なんかない。

「仕方ねぇなぁ」

「よろしくね、宇宙人くん!」


 こうして私たちは宇宙人を家まで連れて行くことになった。

 しかし、この時はまだ知らなかったのだ。

 これから起こるであろう、ワクワクする冒険の始まりだという事を。


・・・

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