協力


 いやはや、人生何があるか分からないとは言ったもので、つい先刻まで地獄みたいな空気を過ごしていた俺であったが今は打って変わって談笑に励んでいた。

 と言うのも、今回俺がDHにて所属しているCチームにて当初流れていたのは気まずい雰囲気だった。

 コミュ力の塊みたいなミルノさんが何とか尽力してくれるものの俺とシキカさんはなんとも難しい感じであった。


 ただ、それも俺とシキカさんが似たようなボッチと言う共通点を発見し意気投合したのだ。


「よく五軍とか言うけど、軍じゃないよね」

「わかる。ボッチはそもそも個じゃんって」


「わ、分からない」


『大丈夫俺たちにもわかんないから』

『なんか陰キャ特有の良くない持論が出てる』

『ひねくれてんなぁ』


 なんだか困惑しているミルノさんではあったものの、とにもかくにも俺たちはチームとして完成することとなっていた。


「よくわかんないけど、仲良くなってよかったよ。強いきずなを感じる」


「あと、あれだよね。高校で友達できないと人の話聞いて心の中でうまい返し考える奴。私の方がもっとうまく返せるのにな~って」

「え?あーうん」

「あ、いや。何でもない」


「案外脆いかも」


 しかし、とにもかくにも話せるようになってよかった。

 さっきログを見たら『鍵の破片』を見つけた人がすでに現れたようだったし。

 上手く連携を取れずにいれば、更に出遅れてしまうことは確実だ。


「にしても、運営は完全に雑魚狩りでptを渡すつもりはないんだね」


 そんなことを不意に言うのはミルノさんだった。

 確かに手元の端末で確認すれば、獲得したptはやっと二桁と言ったところ。

 常駐魔物のptは仕方ないとしても、それなりの力のある魔物ですらそうptがもらえない。

 それに加えてスキャンのひと手間がこちらの動きを減速させる。


『まあ、探索者同士の『鍵』の取り合いが主だしな』

『正直狩るだけじゃ、いつもの配信と変わらんし』


「まあ、先ほどのスキャンで残りの『鍵の破片』が14層以下だって分かっただけで、よしとするしかないです」


 そう言うのはシキカさん。

 先ほどのログに流れたものが人の手に渡ったことでヒントが更新された。

 細かく刻まれていた階層は一気に下まで下がる結果となっていた。


 そしてそんな俺たちが10層に到着した時、一つのグループに遭遇した。


「協力しませんか」


 そんな声をかけて来たのは、一人の少年だった。

 その後ろにはチームメイトだろう二人がいる。


「僕はグループFのトミイタ。今、『鍵の破片』を持っているチームの潜伏場所を知っているんですが、どうです?一緒に協力して奪取しませんか?」


 その言葉に俺たち一同は首を傾げる。

 『鍵の破片』を持つ者たちの居場所を知っている。

 その話に関してはまあいいが、突然出てきてそんな相談を持ち掛けられれば怪しさが先に来る。


「なんで、そんな相談を私たちに?」


 そう訊き返したのはミルノさんだった。

 その言葉に彼は何でもないように返す。


「単純な話相手は強力。僕たちだけでは太刀打ちが出来ない。それだけの話です」


 そうは言うが、実際、取り分はどうするかなんて話が付きまとうだろう。

 『鍵の破片』を山分けなんてことは出来ないのだから。


「『鍵の破片』をどちらの手柄にするかは、手に入れた人のものと言う単純なルールどうでしょう?」


 こちらの様子を気にすることなくトミイタと言う少年は推し進めた。


「碌なヒントもない状況で、現在発見されている『鍵の破片』は一つ。あたりを歩いてスキャンして回るなら、一か八か奪取に向かうのも手だと思いますけど。もし手に入れられなくとも、次の所有者が、僕らのチームかそちらのチームかと言う情報を手に入れられるのはデカいと思います」


 確かに、彼が言う事がまるっきり間違っていることはないだろう。

 自体が急変して作戦途中に他のグループが一気に残りの鍵の破片を手に入れるなんてことがなければ、どちらの結果に転んでも利になると言える。

 そんな考えのもとに目配せをしあった俺たちはその提案を飲むことにした。


「よろしく」


 代表するようにミルノさんとトミイタが握手をする形で合意がなされた。

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