祠を動かしてはいけません 一、


 はじめましての方もいるかと思いますので、まずはご挨拶を。東京の片隅で細々と物書きをしております鋏池穏美つかいけやすみと申します。

 本作品は[【書き下ろし1万文字以内】「ふんどし」の物語を書こう]という自主企画に寄せたものです。面白い企画ですよね。主催者の祐里さんには感謝しかありません。なぜならこの企画のおかげで、私が長らく言えずにいたことを告白できるからです。

 某SNSで私と繋がりがある方はご存知かもしれませんが、私はよく「ふんどし」について呟いています。実はこれ、私の地元のとある風習が関わっていたんです。言っても信じてはもらえない因習とも言える風習。

 普段は通常の下着を着用している私ですが、地元に帰る際にはふんどしを締めています。このことは何度か友人に打ち明けたことがありますが、返ってくる言葉は「なにそれ」という言葉と半笑い。ちゃんと理由があるんだよ、笑わないで聞いてよと伝えたところで、誰も真剣には聞いてくれませんでした。

 ですので、今こうして書いている間も少し怖いです。また笑われて終わってしまうかも──と。

 すみません、前置きが長くなってしまいましたね。端的に言えば、私の地元ではふんどしを締めていないと呪われることがあるんです。

 ……今、「は?」って思いましたよね? そうですよね。おかしいですよね。ですがこれは本当で、過去、亡くなった方もいます。死因は心臓麻痺。冒頭で提示した新聞記事がそれです。

 戦後の青森。

 宅地開発による祠の移転。

 それに端を発した呪い。

 話は変わりますが、私の住んでいた村での宅地開発は中止されました。けれど隣接する地域は開発が進み、今では大きな町がいくつもあります。テレビで活躍するような有名人も数多く輩出しています。

 そんな青森出身の有名人。タレントさんやモデルさんにミュージシャン。彼、彼女らの多くが映画やドラマ、バラエティ番組でふんどし姿になったことがあるのはご存知ですか?

 迷惑がかかってしまうので名前などは言えませんが、あれはご本人たちの希望によるものです。実際に呪われてしまったのは私の村ですが、隣接する地域にもふんどしの風習は伝わりました。

 ■■地方にはふんどしを締める祭りがありますし、有名なねぶた祭りも、昔はふんどしを締めて参加するのが一般的でした。


 過去、私の地元で何が起き、なぜふんどしを締めなければならないのか──

 当時、宅地開発関係者と私の地元の方との間で行われた話し合い。その音源がありますので、文字として起こさせていただきます。





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