第48話 最後の記録・1
【記録編集者による註釈 XIV】
全ての逃げ道を断たれた彼らが、最後に選んだ行動。それは、ジャーナリストとしての、あまりに悲しい、そして気高い自己証明だった。
次に示すのは、彼らがVVヒルズへ向かう数時間前、あのスタジオで撮影された最後の映像記録である。本編の前に、その直前の、準備中の音声記録を併記する。そこには、ヒーローではない、恐怖に震えるただの人間としての、彼らの最後の肉声が刻まれている。
この記録は、後世に遺すための遺言であり、怪物への宣戦布告であり、そして、自らの死を意味あるものにするための、最後の儀式だった。
▼水野のPCメモ:2025年7月15日_夜
『召喚状』が届けられてから、丸一日が過ぎた。
俺たちは、ただ、無言で、最後の準備を整えていた。それは、真実を暴くための取材準備ではない。我々三人が、確かにこの真実にたどり着き、そして抗ったという証を、未来に遺すための、最後の記録の準備だ。
佐々木は、全てのレンズを磨き上げた。田村は、マイクの配線を何度も確認した。俺は、これまでの全ての記録を、複数のクラウドストレージにバックアップした。
誰かが見つけてくれる保証などない。だが、遺さなければ、俺たちの戦いは、本当に無意味なものになってしまう。
これが、俺たちにできる、唯一の抵抗だ。
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