第13話 インタビュー記録

【インタビュー記録03:橋本 隆(はしもと たかし)氏(38歳)、佳奈(かな)氏(36歳)】

撮影場所: 対象者の自宅(世田谷区S町)

日時: 2025年6月18日 14:00


橋本隆(夫): 「……実は、あの日以来、伊豆にいる私の母の様子が、少しおかしくて。『やっぱり、あの家の血筋はダメなんだ』とか、『とうとう、約束の時が来たんだ』とか……」

「母が言うには、その『あの人』というのは、一族の人間ではなく、夏祭りの日なんかに、ふらっと町に現れる、よそ行きの格好をした、息を呑むほど綺麗な女の人だった、と……。母が小さい頃、その人に『榊(さかき)』の家の前で頭を撫でられたのがいけなかったんだ、と泣きながら……」


橋本佳奈(妻): 「……そういえば、一つだけ……。莉子が、いなくなる少し前に、公園の砂場で『青く光る綺麗な貝殻を拾った』と言って、大切そうに小箱にしまっていたんです。警察の方にもお見せしましたが、ただの貝殻だと……」



【インタビュー記録04:鈴木健一(すずき けんいち)氏(42歳)】

撮影場所: 対象者が運営するNPO法人の事務所

日時: 2025年6月20日 11:00


鈴木氏: 「大輝がいなくなる、一週間ほど前のことです。あいつが、風呂場で、妙な歌を口ずさんでいたんです。私が『その歌、なんていう歌だ?』と聞いたら、あいつ、『公園で、背の高い、綺麗な“おねえさん”に教わった』と。

……ああ、そういえば、あいつ、その『おねえさん』から、小さな貝殻ももらった、と言っていました。『キラキラしてて、夜になるとちょっとだけ光るんだ』って、嬉しそうに……」

(※鈴木氏は、おぼつかない調子で、その歪んだ子守唄の旋律を口ずさみ始める。)




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