断章・連続誘拐事件に関する取材班の記録
秦江湖
第1話 はじめに
水野渉(みずの わたる)先輩たちが消息を絶ってから、三日後のことだった。
彼らの取材用のバンが、VVヒルズから数キロ離れた、東京湾岸エリアの古い倉庫街に乗り捨てられているのが、巡回中の警察官によって発見された。
車内に争った形跡はなく、キーは差し込まれたまま。しかし、バッテリーは完全に上がり、エンジンは氷のように冷たくなっていたという。
そして、後部座席の機材ケースの中から、一台のポータブルSSDレコーダーが発見された。
電源は落ちていたが、内蔵バッテリーは僅かに残っていた。
専門家によるデータ復旧の結果、そこには、先輩たちが「取材」と呼んだ、あの日の全ての映像記録が、ワイヤレス送信されたプロキシデータとして保存されていた。
最後のファイルは、午後3時28分で記録が途絶え、激しく破損していた。
本書は、そのSSDに残されていた映像と音声、そして、先輩のPCから発見された膨大な取材メモや資料を時系列に沿って再構成し、この奇怪な事件の全貌を可能な限り忠実に再現したものである。
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