第7話スタンピードは損得で
「それでどうするの? 商業組合に入っちゃうの?」
「非情に悩ましい事ではある。具体的には、何処の狩場を管理しているのかで、大分就職先が変わってくる事になる。軍の馬鹿は放っておいていい。だが、商業組合の話は聞いても良いとは思ったな。というか、アーリアはどうするんだよ。お前も自分の就職先を決めないといけないんだぞ?」
「私の就職先はベル君で内定しているから大丈夫なんだよ? でも、面倒だね。1回は軍に所属しないといけないんでしょ? そうなってくると、死んじゃわないかって心配は付きまとうんだし」
「徴兵は強制だからな。でも、間違っても軍に残りたいとは思わない。戦争に駆り出されるくらいなら、狩場の管理をして居た方が安心できる。それに、難しい狩場の方が楽だしな」
「え? 難しいのに楽なの?」
「そりゃそうだ。最終的には最強になるんだから、狩場の管理なんて楽勝で出来ないといけない。そうなってくると、目標にするところがある訳なんだが、召喚士だからな。無限にステータスが上げられる。それならSTRに10万とかも無理じゃない。STRにそれだけ振れば、流石にどんな魔物でもダメージは入るからな。それに、VITとMNDを1000万とかにしてしまえば、ダメージを受けることがなくなる。まあ、机上の空論ではあるんだが……実際できない訳ではなさそうなんだよな。それに、難しい狩場の方が、スタンピードは起きにくい。ゴブリンなら毎日狩っても居なくならないが、毎日一定数は狩らないとスタンピードが起きる。逆に最強格のドラゴンなんかは、10年に100体倒せれば、スタンピードは起きないとかになるからな。難しい狩場の方が、討伐頻度が少なくていい」
「なるほどー。だから難しいけど楽なんだ。倒せさえすれば、って話になってくるんだね」
「そう言う事だな。倒せる魔物が多くなればなるほど、難しい狩場の方が管理はしやすい。逆に言えば、ゴブリンなんかは、毎日数千体は狩らないといけないから、1人だと厳しいとは思う。こういう場所の方がスタンピードは起きやすい。まあ、被害もそんなにないけどな」
スタンピードは脅威だが、それなりに旨味もあるんだ。だから意図的に起こしたって問題ない訳だ。被害を出さない程度であれば、なんだけどな。被害が出るようなら、そんな事は止めておけって事になるんだけど、被害が出ないのであれば、スタンピードを起こして、利益を得た方が良くなるのは、まあ、多少頭が回る奴なら考えるだろうさ。本当に被害が出ないのであれば、だけどな。
あー、そう言えば、そういう実験をしている組合もあったっけ。面倒なというか、面倒くさい組合だったとは思うが。イベントであったな。そんな実験を繰り返していた組合がやらかしてスタンピードが起きますってイベントが。ゴブリンとかなら優しいから良いんだけど、ドラゴンとかでやられると、洒落にならないくらいには酷い結末になるんだよなあ。まあ、現実になったんだから、そんなマッドなやり方をするような組合は無いとは思……いたい。一抹の不安が過ぎるけど、まあ、多分大丈夫だろう。
「でも、スタンピードを起こさない魔物も居るんだよね?」
「ああ、居るな。特定の事をしなければ、って話なんだけどな。狩らなくても管理できるが、禁忌をやらかすと、スタンピードが起きるパターンだな」
「あれ? そんな事ってあるの?」
「あるぞ。身近な所で言うと、精霊の泉がそうだ。精霊系統は、狩らなくてもスタンピードは起きない。代わりに、禁忌を犯せば、問答無用でスタンピードが起きる。俺たちも起こそうと思えば起こせるぞ。妖精の泉に関してはだけど」
「えー……。因みに、何が原因でスタンピードが起きるか聞いてもいい?」
「妖精の泉の条件は、24時間以内に、精霊の泉と呼ばれるエリアの環境を、8割破壊する事だな」
「え? それって1人じゃ無理じゃない?」
「出来るぞ。俺たち召喚士なら。召喚する魔物の数は無制限なんだ。だから、ゴブリンたちに環境を破壊し尽くしてもらえば、スタンピードは起きる。まあ、起こすだけ無駄だし、面倒だからそんな事をするつもりはないけどな」
「そっかー。召喚士なら出来ちゃうんだ」
「まあな。普通に契約する方が得だから、スタンピードなんて起こさないけどな」
「……えっと? 利益が大きいなら、どうするの?」
「許可を得て、スタンピードを起こすな。その方が強くなれるのであれば、だが。基本的にはそんな事はしないからな。安心しろ」
「基本的には?」
「基本的にはだ。勿論、安全が確保されていて、それをするだけの旨味があるなら、やった方が得なんだから、やるだろ?」
利益の方が大きければ、勿論だがスタンピードは起こす方がいいんだ。そもそもスタンピードは色々とあるんだけど、起こして益のあるものもあるんだよ。精霊の泉の場合も、人間にはそこまで害が無いんだよな。寧ろ益があると思う方だな。……色々と困る人たちが居るのは確かだが。
精霊の泉のスタンピードは自然の復興。それが精霊の泉の範囲外まで出てくる事なんだよ。最悪の場合は、町が樹海化する。スタンピードの核となる最上位精霊を放置しておくと、そうなる。因みに最上位精霊はBランク。なので、契約できる確率は10%くらいが最大じゃないか? 基本そのくらいだと言われていたはずだ。統計的な情報は、特に無かったと思うし。
因みに、町が樹海化すれば、貴重な素材が町中で採れるようになるというメリットがある。素材ガチ勢には割と重宝するんじゃないのかね? まあ、ゲーム時代は青の宝玉しか使ってもらえなかったから、素材と言っても納品するだけの仕事になるんだけど。使うとなると、別の職業じゃないと駄目なはずだ。薬師や錬金術師が該当するとは思うが。
そんな面倒な事をしても、所詮は最上位精霊。Bランクでしかないのだ。しかも契約確率は10%程度。Sランクの精霊王が契約できるならともかく、最上位精霊でそんな事をやらかしてもな。……安全が確保できて、1時間以内で8割方壊せるのであれば、やる意味は出てくるんだがなあ。流石にどれだけゴブリンを呼んでも、最低12時間はかかるくらいには精霊の泉は広い。やる意味は皆無だな。経験値的にも美味しくないし。
「その辺は信用するからね? 無暗にスタンピードなんて起こさないでよね?」
「スタンピードを起こすとなったら、商業組合や狩人組合にも話はつけるから安心しろ。被害は少ない方が良いからな」
「起こさない方が良いんだけどなあ。まあ、対処できるなら良いけど」
「まあ、就職先を選ぶなら、管理が簡単な所が良いなって事で。難易度は難しくても良いんだからさ。難しいくらいの方が丁度いいし」
「最強を目指すんだったら、何処でも同じなんだしね」
「そう言う事だな。就職先を探す前に、生き残る必要があるんだけどな。5年間、何としてでも生き残らないと。魔物よりも、対人戦闘が一番死にやすいからな。出来る限り死なない様に立ち回らないといけないな」
命を大事にってな。方針はそれで良いとは思うんだよ。命あっての物種だからな。商業組合にするかどうかは、その後でも良いんだ。まあ、兵役が4年目くらいになってくれば、就職先を探さないといけないとは思うけどね。軍は御免だ。一番死にやすい対人戦に放り込まれるのは嫌だ。それだけは断らないといけない。後は条件を見てって感じだよな。一番いい所に就職したいし。フリーが一番いいんだけど、強制的に軍に入れられるとかになってくると困るしな。その辺は考えないと。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます