召喚された先で飼い猫が最強でした 〜社畜の俺、猫耳美少女たちと聖獣を救う旅へ〜
マロン
第一章:召喚された先で飼い猫たちと再会しました
【1-1】異世界に召喚されました
終電間際のホームを抜け、アパートの階段を上る。
時計の針は、もう日付を越えていた。
玄関の鍵を回すと、すぐに足元に柔らかい感触がまとわりついた。
「ただいま、うらら。……今日も待ってたのか」
アメリカンショートヘアのうららが、すぐに喉を鳴らして擦り寄ってくる。
続けて、少し離れた棚の上からベンガルのコハルが冷たい目でこちらを見下ろした。
「……はいはい、わかってるよ。すぐご飯にするから」
ツンとした仕草のわりに、尻尾の先だけは嬉しそうに揺れている。
最後に、少し遅れてペルシャのチャチャがのそのそと廊下の奥から現れた。
ふわふわの毛並みを揺らしながら、彼女は静かにこちらを見つめている。
――今日も、この三匹がいてくれる。
会社では怒られ、終電を逃しかけ、コンビニ弁当の味もわからなくなるほど疲れて。
それでも、玄関を開けた瞬間のこの光景だけが、心の支えだった。
ご飯を用意して、トイレを掃除して。
いつものルーティンを終え、俺はソファに沈み込む。
アニメのオープニングが流れ、うららが膝の上に乗ってくる。
「いいよな……異世界。召喚とか転生とか、俺も一度でいいからされてみたいもんだ」
コハルが尻尾で軽く叩いてくる。「馬鹿なこと言ってないで寝ろ」とでも言いたげに。
「……はいはい、わかってますよ」
苦笑しながら頭を撫でた、そのとき――
空気が、変わった。
リビングの照明が一瞬だけ明滅し、床に淡い光が走る。
円形の文様が広がり、部屋全体がまるで息づくように脈打ち始めた。
「な、なんだ……これ……」
立ち上がろうとした瞬間、足元の光が爆ぜる。
視界が白く染まり、意識が遠のく。
――気づけば、そこは何もない世界だった。
上下の感覚も、風の匂いもない。
ただ、光に包まれた空間の中に立っている。
「……どこだ、ここ……?」
声が吸い込まれるように消えていく。
振り返っても誰もいない――そう思った、その瞬間。
静寂の中、突然、頭の奥に声が響いた。
『お主“
低く、穏やかで、どこか神聖な響きを持った声だった。
「……え、まさか、これ……」
思わず顔を上げる。
何もない空間に声だけが響いている。
「おいおい、これってもしかして――異世界召喚ってやつか!? ついに俺にも時代が来たか!」
心臓がドクンと高鳴る。
疲れ切った社会人生活の中で何度も夢見た“展開”。
まさか、現実で起きるとは――!
『お主達には、特別に“人の体”を与えてやろう』
「ん? 人の体? いやいや俺元々、人間なんですけど!?」
戸惑いながらも、どこかワクワクしていた。
異世界の召喚ってやつは、こういう儀式っぽい感じなのか?
「……もしかして、異世界では俺の種族、人じゃないのか?」
『そうだな……かの世界には“
「なんでだよ!? |猫人族!? 猫!? 俺、猫じゃねーし! てか、さっきから“達”ってなんだよ! 俺一人しかいねーだろ!!」
慌てて周囲を見回すが、やはり何もない。
ただ、柔らかい光が絶えず降り注いでいるだけだ。
『では最後に――スキルと加護を与える。上手く使いこなし、世界を救ってくれ……』
「おぉ、スキル! なるほどね、ありがた――」
そう言いかけて、思わず首をかしげた。
「……いや待て。“猫人族”のくだり、まだ納得してねぇぞ!?」
返事はない。
ただ、光がどんどん強くなっていく。
「まあ、良いや……スキルをくれるってなら猫人族でも人型の種族だろうし……(よくねーけど)」
ぼやきながらも、期待と不安が入り混じった。
もしかしたら、自分にも“主人公補正”があるかもしれない――そんな淡い希望を抱いた、その瞬間。
『――では、行くがよい』
「は? ちょっ、待て! まだ何も――スキルもらってねぇって!!」
叫ぶ間もなく、世界が弾けるように白く染まった。
光がすべてを包み込み、体が宙に放り出される感覚。
――次に目を開けたとき、俺は“草原の上”に倒れていた。
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