殺戮兵器に憧れて~殺戮するのはモンスターだけで十分です~
黒い釘
リオン地下大迷宮編
プロローグ ここはどこ? 私は石ころ
「ご...〇ね」
「なんで...」
死因もそれに至った理由も語るに足らない平凡な人生の幕切れ。
俺は、命を落とした。
__________
なんだか長い夢を見ていた気がする。
意識がはっきりしているような曖昧なような
暗いような明るいような
楽しいようなそれでいて、どこか悲しいような
そんな夢を見ていた気がする。
そんな寝坊助な自分だが、一つだけはっきりと覚えていることがある。
俺は機械、それも戦争で使われるような殺伐とした、メカメカとしたものを愛していたという話だ。
理由は単純明快。
ロマンだからだ。
機械が煙や熱を発して、血にまみれる。
その情景が、景色がすべてだった。
この記憶が俺の物なのか、それとも誰かの記憶を植え付けられたのかそれすらも分からないが、とにかく俺は機械が好きだった。
______
謎の空間で目を覚ました。
残念ながらここがどこなのか、なんでいるのかが分からない。
まぁ、機械好きだったということしか自分の事を覚えてないからそれもそうか。
それよりも問題なのが、この場所が明らかに危ない場所だということだ。
気が遠くなるほど高い天井、俺の目の前に築かれたガラクタの山の数々、ほとんどが無機物だが、動物の死骸に加えて、人間が死んでいた。
さらに一番の問題は、自分がガラクタの山の一つにいて視界しか動かせないという点である。
もしかしたら生き埋めにされていて首だけが地面に出てきているのかも?
近くに落ちていた水晶玉で俺の体の状態を確認する。
そこに映っていたのはイケメンでも、ロリでも、スライムでもなく
水晶のような青い石だった。
えっ!?!?!?
心の中ではそう思っていても、文字通り声が出ない。
夢で見た異世界ファンタジーとかいう奴だろうか。
俺が軽く絶望していると謎の声が頭に響く。
『やっと起きましたかマスター』
誰だ!?
俺のことをどこからか見ているのか?
『いいえ、見るも何も私はあなたの中にいます』
つまり、この体に二人いるってこと?
『説明しましょう。あなたはいま、
へっ?
つまり、俺はあなたの体を奪ったって言うことですか?
と言うか、デーモンって何?
『その通りです。しかし、あなたには感謝をしているのですよ。』
それまたなんで?
俺はあなたの体を奪ったんだろ。
『はい。ですが、あなたがこの核にやってきた瞬間、私には自我というものが芽生え、考えることができるようになりました。そして、デーモンと言うのはダンジョンを守る古代の兵器のことを言います。私たちはその古代兵器の核と言うわけです』
何それ、全然テンション上がらないんだけど。
俺まだ動けないし、ぱっと見ただの石だし、デーモンって言われてもどれだけ強いかわからないしさ。
持っとこうさ、ドラゴンとかさ、ヘビとかさ、ゴーレムとかさ俺が知ってるモンスターだったらまだテンション上がるのにさ、デーモンって。
悪魔ってわけでもないんでしょ。
ハァ~
『そんな露骨に落ち込まないでください。デーモンはあなたにも分かりやすく言うと古代のロボットです』
ん? ショックで忘れてたけど、
そう言えばさっきも兵器みたいなこと言ってなかったっけ?
それなら話は変わってくる。
ロボットと分かっていたのなら、
早く言えよ~
このこの~。
『はぁ~』
お前もため息ついてるじゃん。
で、どうしたらやったら強くなれるの?
石ころのままで戦えなんて言わないよね。
『その石ころが傷つかないように気を付けてくださいね。その核は人間でいう、脳であり、心臓なのですから』
ああ~やっぱりこれ大事な奴か。
で、もし壊されたら
『もちろん、死にます』
やっぱりねぇ、それでこれからどうやって強くなればいいの?
『まずはパーツを探しましょう。このままではコボルトやゴブリンに襲われたとしても危ういです』
やっぱり、そういう系の敵がいるんだな。
せっかくの異世界だしまだ死にたくないな。
じゃあ、早速パーツを探しますか。
いっぱい集めてロボットを作ろうぜ。
『言いにくいのですが、今のままではガ〇ダムやエ〇ァンゲ〇オンみたいなロボットにはなれませんよ。ネズミの心臓で象の指先まで血液を送れますか?私たちは血液の代わりに魔力を部品に流して動かします。そのため今のままでは不可能でしょう』
え?
マジかよ...。
じゃあどうすんの?
『モンスターを殺して魔石を砕くか、魔法使いを殺せば、魔力を吸収できます。私たちは生物と違って、自分では魔力を作り出せませんから』
いやいや、魔法使いは殺さんよ!
人間はやめとこう。
となるとモンスターか。
てか、なんでそんなこと知ってんの?
『私はマスターの記憶を参考に人格を形成しておりますので、無論ロボットのことやマスターが実は小学校を卒業するまでおねしょを毎日してたことも』
え?
そうなの?
俺覚えてないんだよ。
『まぁ、私が覚えているのもそれだけなんですけど』
なんでそんな恥ずかしい記憶だけ覚えてるんだよ。
で、お前のことなんて呼べばいいの?
『自分が悪くないと知った瞬間、あなた呼びからお前呼びになりましたね。私のことは好きに呼んでください』
う~ん、ならどう呼ぼうかな。
デーモンだから、デーちゃんでどうだ!?
『却下で』
そうか~
ならお前はエルだ。
自立型殺戮兵器に大体搭載されている、AIを俺が見間違えてエル?
って読んだところから取った。
『なんでそんなしょうもないことは覚えてるんですか? まぁその呼び方なら許可しましょうマスター』
まぁ、誕生日会とかよりも日常のふと意識した瞬間の方が記憶に残ろこととかあるじゃん。それだよ。
『話は変わりますが、先ほど言っていたモンスターの虐殺、今の私たちでは困難でしょう』
何でだよ。
俺たちは虐殺兵器なんだろ。
もしかして、見掛け倒しとか言わないよな。
『せっかちですね。今の私たちではと言ったでしょう』
『では、スキルについて説明します。この体は私には動かせないようなので』
なに!?
スキルだと!?
もしかして何かチートスキルとか最強の称号とかある感じ?
『残念ながらそんなものはこれっぽっちもありません。今あるスキルは正直言って微妙ですね。ご覧ください』
種族名
個体名 無し
所持スキル
浮遊、気配感知、魔力弾(微弱)、発光
え?
これだけ?
何これ。まだ魔力弾とかは使えそうだけど発光って何?
閃光弾みたいに目つぶしできるとか?
『いえ、ただの優しい光です』
なら暗闇を嫌うモンスターを追い払えるとか?
『いいえ、むしろ目立ってモンスターが群がるかと』
この光るだけのごみを捨てて、戦闘スキルをもらう方法って?
『ありません』
はぁ~...
四分の一のスキルが使い物にならないって。
でも、魔力弾があればなんとかなるんじゃないの?
(微弱)っていうのが気になるけど
『残念ながら今の魔力量では微弱な光弾を十発くらいしか打てませんよ』
で、全部打ち切ったらもちろん
『死にます』
うん、これ詰んでるね。
『いや、待ってください。パーツを手に入れれば[魔力弾]の威力も上がりますし、魔力の上限量も増えます』
いや、さっきはネズミの心臓がどうとかこうとか言ってたじゃん。
『私たちのパーツは古代の遺物です。無論、魔力は含まれています。いきなり象は無理でも、リスぐらいなら動かせます』
なるほどね。
じゃあ早速、パーツを探しに行きますか。
『そうですね。では[浮遊]のスキルを使用してください』
よし、任せろ
…
で、どうやって使うの?
『やっぱり、こいつの精神を壊しておくべきでしたか』
急に怖いこと言わないでよ。
『体が浮く感覚を意識してください』
言われた通りに浮遊感を意識する、イメージとしてはプールの中のような感じだろうか。
すると、俺の体が淡く光り、球体がゆっくりと上昇していく。
地面から五メートルほどの高さまで上がったかと思うとその場にとどまった。
『よくやりました。浮遊は基本的にあなたが思うように動きますが、[飛行]ではないので高速で移動しようとすると多くの魔力を消費するので気を付けてください』
了解、じゃあとりあえず前方に移動していきますか。
[気配感知]は使わなくてもういいのか?
『使いたいところですが、浮遊の魔力に加えて戦闘用にも残しておきたいので温存しておきましょう。効果も気休めですしね』
確認を終えた俺たちはゆっくりと前方へ進んでいく。
先ほどは山のように感じたガラクタの集まりも浮いてしまえばどうってことないな。
このがらくたの山には俺たちのパーツとかないの?
いかにもな場所だし、俺たちもここにいたんだろ。
『パーツがあれば身体が青く光りますし、私は初めからここにいたわけではありません』
じゃあ、なんでエルはここにいたの?
『忌まわしい冒険者にパーツを壊され、魔力を失ったところに核を穴に投げ捨てられたのです。そしてたどり着いたのがここと言うわけです』
酷いことするな。でもそのパーツをもらえばいいんじゃない?
『残念ながら、私たちのパーツは高く売れる戦利品なのでおそらく売られているところでしょう』
なるほど、モンスターもたいへんだなぁ。
『私はモンスターなどの下賤な存在ではありません。私は大賢者リオン様に創られた宝物を守る、守護者なのです』
で、そのリオン様ってやつは
『1000年前ほどに亡くなりました。冒険者たちは50年ほど前にこの場所を見つけ、同胞は殺され、私たちを殺す武器に防具にされて行きました』
そうか、
エルは復讐したいのか?
『いえ、もういいです。今はあなたがいますし、復讐をする前にただの石ころになってしまいそうです』
それもそうだな
見渡すとそろそろガラクタの山がなくなってきていた。
そろそろこのがらくたの山から脱出できそうだ。
ささっとパーツを集めて
モンスター狩りと行くか。
こうして俺たち石ころはモンスターを倒すためにパーツを集めの探索を始めるのだった。
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