第2話 第一村人?




「結界」


 ただ一言唱えると半径一メートル程の半透明で球状の壁が俺を包む。それと同時にゴブリンが棍棒を振り下ろし、壁に衝突し甲高い音をたてて俺を守る。

 何が起こったのか理解していない様子のゴブリンはもう一度棍棒を振り下ろしてくるがその一撃が俺に届くことはない。


 草に引っかかり棍棒が目の前に来た時は死を覚悟したが、どうやら助かったようだ。自然と安堵のため息がこぼれる。


 何が起こったのかを簡単に言えば────


草が千切れ、光る

五感とは違う何かを感じる

俺が結界を使えると確信する


────だ。詳しくは説明できないのだがあの瞬間俺は確実にできるとわかった。理解したことはこれだけで他は何も分からない。だから目の前に突如として現れた半透明の板についての知識は一切ない。


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 六条祐樹(15)『結界魔法使い』

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 板というには小さいとか、簡素すぎるとか、いろいろとツッコミたいところはあるが、知識はなくともわかる。所謂ステータスとかそういった類のものだろう。

 ちなみに、『閉じろ』と念じてみると消えて、『現れろ』と念じると出現した。触ろうとしてみても実体がないのか手は何の触感を感じることなく板を貫通した。


 ・・・さて、そろそろ現実と向き合うとしよう。俺が展開した結界はゴブリンの攻撃を通すことなく防ぎ続けている。

 この結界について説明すると、先程から知覚することができるようになった五感とは違うもの(以降魔力とする)を攻撃を受ける度に消費しているようだが、感覚から察するに1日中攻撃を受けてもこの結界が突破されることはないだろう。

 また、魔力だが現状俺がわかるのは二種類あるということだ。簡単に言うと、周りを漂っているものと俺自身が保有しているもの。結界に使っているのは当たり前だが後者だ。


 ここまで説明すると一見問題はなさそうだろ?ところがどっこい、この結界、のだ。つまり何が言いたいかというと、安全は保証されたが移動することができないのだ。


 どうしたものか。諦めてどこかに行ってくれれば良いのだが、めげることなく結界をずっと叩いている様子からしてそれは無いだろう。先程の追いかけっこからして足の速さでは勝っていたので逃げることは出来るかもしれない。ただ、足場が悪いからまた躓いたりしたら元も子もない。幸いと言うべきか先程は怪我することはなかったが、こんな森で怪我をしてしまったら絶望的だ。


 と、いろいろ考えてみるが答えが出ず経つこと数十分。こんな場所で時間を無駄にする訳にも行かない。覚悟を決めるとしよう。


 では、追いかけっこを・・・・の前に目標を立てるとしよう。まず第一にゴブリンを倒すor逃げ切る。が、倒す手段はないのでとりあえず逃げ切る。第二に水、食料の確保。そこまで暑くなく、木々のお陰で日に当たらないとはいえ、このままだと確実に生き残れない。そして、第三に人と合流。ここに来る前俺は体育館にいた。そしてそこには勿論クラスメイトもいたので、もしかしたら近くにいるかもしれない。

 こんなところかな。ただし安全第一にに行こう。


 それにしても数十分間棍棒を振り続けてよく体力が持つな。と思いつつゴブリンを深く観察する。叩き続ければ割れると思っているのかゴブリンの手が止まることは無い。しかし、数十分前との違いは動きが単調に・・・作業のようになっているのか、リズムが一定になっている。


カン


カン


カン


カン



「ここだァァァッ」


「グギャ!?」


 何度も振り下ろされる棍棒に集中し何度目かの振り下ろしで棍棒が跳ね返った瞬間に結界を解除し、全力の蹴りをゴブリンの腹にお見舞いする。

 ここで俺が来るとは想像してもいなかったのだろう。真正面からの奇襲に無事成功し、ゴブリンを吹き飛ばす。そのまま追撃をする・・・ことはなく180度向きを変え、ゴブリンから逃走する。


 逃げる途中チラッと後方を確認してみるが、蹴りがいい感じに入ったのかゴブリンが追いかけてくる様子はない。念の為数分さらに進み足を止め、息を整える。

 かなり悩んだが、それに対して呆れるほど簡単に逃げ切ることができた。この様子だと倒すことも出来ただろうか。いかんいかん、慢心はやめよう。せめて衣・・・はともかく食住を整えてからだ。


「よし、水場を探すか」


 という訳で、第二の目標を達成する為に森をさまよう。














『誰か助けて!』


 さまよい始めて数分経った頃だろうか。遠くから助けを求める声が聞こえてきた。声の大きさ的にそこまで遠くは無いだろう。

 少しだけ迷いはしたが声の方向へと駆け出す。


「こっちだ!こっちへ来い!」


 走ること数十秒、声の主であるだろう少女とその後方に二体のゴブリンを引き連れて現れた。少女は呼びかけた俺に気づくと迷うことなく近づいてくる。


「結界」


 少女が俺の近く、結界の有効距離に入るのと同時に結界を展開する。突然現れた半透明の壁に「ふぇっ?」と少女が声を上げる。

 ゴブリンが結界を攻撃するという数分前と似たような状態になってしまった。

 その光景を見て安全だとわかったのか少女はその場にストンと倒れるように座り込み、そんな少女に俺は


「あー、とりあえずよろしく?」


と、右手を差し出し笑顔を作った。



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