第2話
やはり知能は無いに等しく痛覚伝導路も働いていないためか体の何処かが折れたり欠如しても再度動き出す、
物陰に隠れながら感染者について分かったことを書き記していく。
「しかしその他の部分は研ぎ澄まされるようで嗅覚、聴覚共に人間離れしていく様子。・・・視力に関しては衰えるようじゃの」
でなければあの僅かな音に反応はできないはず。
見落としているものがないか事の発端から情報を整理する。
203X年。
人類は様々な経験を得て画期的なアイデアを次々に生み出し生活の基盤に落とし込んだ。
情報機関やネットが無い事を売りにしている観光地などを除いて世界中にネット環境が用意され、産まれた直後にメモリーチップを埋める事の義務化を行った。
そのおかげか現在地や過去の犯罪履歴は簡単に共有できるようになり世界中の犯罪の軽減にも大きく貢献した。
科学の発展によりロボットを使った自給自足の生活基盤が安定したことも大きな要因と考えられるだろう。
それによりお金を使用する場面は殆どなくなり政府から配られる金額だけで働かずとも生活できる世界になっていた。
誰もが望む世界へと変わったと言えるだろう。
しかし問題は尽きないというもの。
特に医療面がもっとも影響を受けているのではないだろうか。
生命とは不思議なもので次々に新しい病を生み出し犯される。やはりそういった面では人間の力が必要不可欠なのだ。数年前は医療関係者が冷遇されるような事があったと言うが今では到底考えられない。
この世界だからこそ貢献度は高く医療従事者となった際には将来は安定間違いなしとまで言われているのに。
やや話が脱線したようにも思えるがこの崩壊した世界に無関係とは言い難い。
数ヶ月前。
とある国で生物が凶暴化する病が突如として発見されたのである。
だが人々は楽観視していた。
癌をはじめインフルエンザウイルスやコロナウイルス。発見当時は治療薬は無く重症の場合は死を待つのみとされていたそれらものちのち風邪と同格に扱われるようになった。
今回もそうだろうと誰もが考えていたのだろう。
だが実際は感染は止まることを知らず人々は徐々に生物の血肉を求める怪物へと変えられたのである。
政府は見誤ったのだ。この病気は空気感染ではなく傷口から侵食するものだと早い段階で分かっていたならまた別の世界があったやもしれんのに。
収拾がつかない場面に追い込まれてから政府が発表したのは二点。
噛まれたり傷口などに感染者の体液が付着すると、そこから24時間以内には怪物の仲間入りをしてしまうこと。
そして、奴らの動きを止めるには頭を壊すこと、以上。
なんとも希望のきの字も見えない発表である。
それから政府からは音沙汰はないしな。何処か安全な場所に逃げ込んだかあるいは・・・。
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