第9話
そうして、都築と会う日がやってきた。芽依は時間をかけてメイクをして、お気に入りの洋服を選んだ。芽依は外出するときいつも、精一杯自分が可愛く見えるように意識しているが、その日はより一層こだわった。しかし、それが初対面の男のためだということを思い直すと、芽依は途端に虚しい気持ちになった。
母親には服を買いに行くと嘘をついた。久々に外に出てみる気になったから夕飯もいらないと伝えたら、嬉しそうに送り出してくれた母に胸が痛んだ。
家を出てバスに乗る。都築に会ってどんなふうに振る舞えばいいのか、そもそも向こうが来てくれるのか、来たところで危ない場所に連れ去られたりはしないか、不安な気持ちと共にバスに揺られていると、すぐに目的の停留所についた。
バスを降りたタイミングで、都築からメッセージが届いた。もうすでに到着した旨と、服装を伝えるメッセージだった。小走りで目的地に向かうと、メッセージにあった通りの服装の男性がいた。あの人だ、と思った。プロフィールで感じた清潔感は本人からも感じ取れて、顔もどこにでもいそうな普通のサラリーマンといった感じだった。芽依はおずおずと彼に話しかけた。
「あの……都築さん、ですか?」
「あ、そうです。りかちゃん、だよね」
都築は芽依がアプリ内で使っている名前を口にした。物腰の柔らかそうな男だった。芽依はひとまず都築と落ち合えたことに安堵して、
「はい、よろしくお願いします」
と言った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます