第6話 嘘は恋の始まり…?

絶対誰にもバレたくない、バレてはいけない秘密を共有した俺たちは、少し距離が近づいた…


かと思いきや。


『中野くん、ここ間違えてる。分からなかったらすぐ聞いてって言ってるよね?』

『打ち間違えてる。すぐやり直して。』


あれ、いつも通り厳しい。いや、むしろいつもより厳しくない?

秘密を知っちゃったから、ちょっとは優しくなると思ってたのに……。


なんて考えながらお昼ご飯を食べていたら、背後からひそひそ声が聞こえてきた。


「ねぇ、これって宮瀬さん?」

「え、まじじゃん!めっちゃ似てる!」

「宮瀬さんってアイドルしてるの!?」


ドキッと心臓が跳ねる。

え、なんでバレてんの!? まさか昨日の会話を聞かれてた? やばいやばい……。


そんな時、スマホが震えた。

“LUMINAの時代きたかも!俺が撮ったライブめっちゃバズってる!”

たっちーからのメッセージに、血の気が引く。


慌ててSNSを開くと、たっちーが上げた動画が数万回再生されていた。

彼は音寧推しじゃないのに、推しメンを追っているカメラに偶然何度も映り込んだらしい。

それが、職場で「宮瀬さんに似てる」と噂になった原因だった。


どうしよう。宮瀬さんに伝えるべき? それとも黙っておくべき……?

答えが出ないまま部署に戻ると──


「これって宮瀬さんですか?」


同僚たちにスマホを向けられ、宮瀬さんが困ったように笑っていた。

焦っているのが分かる。その姿に、頭が真っ白になった。


──助けなきゃ。


「それ、宮瀬さんの妹さんですよ」


気付いたら口が勝手に動いていた。

驚いたように俺を見た宮瀬さんに小さく頷き、続ける。


「実は俺、アイドルオタクなんです。

友達に連れて行かれた地下アイドルのライブで、宮瀬さんそっくりな子がいて……聞いたら妹さんでした。」


『そ、そうなんです。本当にそっくりで。よく間違われて困ってるんです、ふふ。』


宮瀬さんも咄嗟に合わせてくれた。


「なんだー!妹さんか!似すぎだろ!」

「中野、オタクなの隠してたんかよ!笑」


同僚たちはすぐに納得して笑い飛ばし、場の空気はあっけなく収まった。


よかった……ドルオタバレはしたけど、宮瀬さんの秘密が守れた。

そう安堵してチラッと横を見ると──


宮瀬さんは、顔を赤く染めていた。

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