32 アスール王国北部防衛戦①
――アリアが王都レイルに帰還してから、半年が経過し、アリアは16歳となっていた。アリアは相変わらず、近衛騎士団で勤務をしていた。また、レファリア帝国での活躍によって、特別昇進をし、アリアは大尉となっていた。
ブルーノとマグヌスは、中尉となっていた。レファリア帝国での復興も、順調のようだ。アスール王国とレファリア帝国がミナス同盟を結んでいるため、両国の流通も活発であり、より結びつきを強めていた。ルビエもたまに、レファリア帝国に行って、ダリルから槍を教わっているようであった。
あれ以上、強くなって、どうしたいのだろうと思ったアリアは、それを聞いたところ、『兄上より強くなりたい!』と言っていた。負けないように、私も修行を頑張ろうとルビエを見ながら、アリアは思った。相変わらず、近衛騎士団の勤務を終え、ハルド家に帰った後は、レリフと修行をしていた。ルビエは最近、自分の槍の技量を向上させるため、夜は一人で修行をしているようであった。
これも変わらないが、レリフには未だに、攻撃を当てられていなかった。というか、最近、レリフが強くなっている気がした。レリフ本人にそのことを聞いたところ、『ダリル殿みたいな人が、パリ―スト大陸には他にもいるらしいよ? だから、アリアちゃんが近衛騎士団で勤務している間、一人で修行しているんだ! もう、あんな死ぬような思いをして戦うの嫌だからね!』とレリフは言っていた。
いつになったら、師匠に勝てるようになるのかなとアリアは思いながら、ハルド家の訓練場で、地面をゴロゴロと転がっていた。このように、この半年間は、何事もなく平和そのものであった。だが、パリ―スト大陸の北部のほとんどを支配しているブルーティア帝国が、バジル王国とオーシア王国に接触を図っているらしいという情報が、カレンを通じて、アスール王国に伝わっていた。
そのことに、一抹の不安を覚えながらも、アリアは今日も今日とて、レリフと修行をしていた。そんなある日、アリアが近衛騎士団の訓練所で、ブルーノをボコボコにしていると、近衛騎士団のベオルが急いだ様子で、訓練を見ていたルビエに近づいて来た。
「何!? それは、本当か!? すぐ、行く!」
ベオルから報告を受けたルビエが走っていくのが見えた。ベオルも、急いでどこかに行ってしまった。
(何か、嫌な予感がするな)
アリアはそんなことを思いながら、『アリア! 待ってくれ! 降参だ!』と言っているブルーノを剣でボコボコにし続けていた。
――アリアが近衛騎士団の訓練場でブルーノをボコボコにしている頃。王都レイルの王城にある王の間は、騒然としていた。ルビエが急いで、王の間に入ると、宰相であるエースが口を開いた。
「ルビエ団長が来たようなので、今後の方針を迅速に決めたいと思います! 知っての通り、現在、北部の大都市テメレが、バジル王国に急襲され、包囲されている状態です! その原因は、竜騎兵がテメレを強襲したためであると考えられます! 今は、何とか北部の各地に散っていた北方軍を終結させ、対処しようとしていますが、間に合わない可能性が高い状況です!」
エースがそう言うと、王の間は再び、騒然とし始めた。
「静まれ!」
アスール王メギドがそう言うと、王の間にいる文官達や将官達が静かになった。
「元帥、お前の意見を聞きたい!」
メギドはそう言うと、元帥であるマルクの方に顔を向けた。
「現状は宰相が説明した通り、厳しい状況です。しかも、竜騎兵が確認されているということは、ブルーティア帝国がバジル王国を支援しているのでしょう。しかも、テメレには、1万の兵がいたはず。いかに強力な竜騎兵がいたとしても、まだ戦闘が始まって2日しか経っていないにも関わらず、テメレが包囲されるのは、それほど、バジル王国軍の兵数が多いということです。バジル王国から、後続の軍も次々と送られているでしょう。ここは、中央軍2万と西方軍1万をテメレに送るべきかと考えます」
「分かった。だが、軍を動かすにも、時間が必要だと思うが、テメレ救援に間に合うのか?」
「今、動ける中央軍1万を向かわせたとしても、最速で2日はかかると考えられます。そうすると、援軍がテメレに到着するのは、テメレが包囲されて4日となります。その間にも、バジル王国軍は、後続の軍を送っていると考えられるので、テメレが陥落している可能性は高いでしょう。ですが、現状、最速で動かせる中央軍1万を救援に向かわせ、その後に、準備が整い次第、残りの中央軍1万と西方軍1万を送るしかないと私は考えます」
「……それしかないか。分かった。だが、今回は、迅速な動きが必要であることを鑑み、近衛騎士団を全体の半分、連れて行け。近衛騎士団ならば中央軍1万が動くよりも、多少は早く、テメレの救援に向かえるだろう。他に意見はあるか?」
メギドはそう言うと、王の間を見渡した。どうやら意見のあるものはいないようであった。
「意見はないようだな。それでは、各文官、軍の者は、それぞれ準備せよ!」
「ハッ!!」
王の声に、王の間にいる者達は、返事をした。
――テメレ救援のために、王の間から退出した文官達や軍関係者が忙しく走り回っている頃。アリアは、王城にある近衛騎士団の訓練場で、今度はマグヌスをボコボコにしていた。『ちょ! 待った、待った!』とマグヌスが言っていたが、『戦場で待ったと言われて、マグヌスさんは待つんですか?』とアリアは言って、気にせずにボコボコにしていた。
「部隊長は、今すぐ私の下に集まれ!」
急いで訓練場に入って来たルビエがそう言うと、すぐに近衛騎士団の部隊長がルビエの下に集まり始めた。アリアも大尉となっていたため、レファリア帝国に派遣された時に率いていた部隊の正式な部隊長となっていた。他の部隊と比べても、平均年齢が若い部隊であった。
部隊長であるアリアも、他の部隊長に混じって、ルビエの下に行った。
「どうやら、全員集まったようだな! 現在、テメレがバジル王国に急襲され、包囲されている状況だ。また、ブルーティア帝国の竜騎士も確認されている。そこで、近衛騎士団は、全体の半数を率いて、先発の中央軍とともに、テメレ救援に向かう。今から私が言う部隊の部隊長は、速やかに出発準備をせよ!」
ルビエはそう言うと、部隊の名前を読み上げていった。その中には、レイル士官学校から帰って来たリールが率いるリール隊とアリア率いるアリア隊の名前もあった。そして、読み上げ終わると、部隊長は迅速に自分の部隊の出発準備に取りかかった。『……士官学校から戻ったら、すぐに戦場ですか。はぁ、嫌ですね』と言っているリールの横を通り、アリアも自分の部隊がいる場所に向かった。
そして、正式にアリア隊の副官となったブルーノに、出発準備を指示した。『分かったよ! 我が愛しのアリア!』と言うと、ブルーノはアリア隊に出発準備をさせるために、指示を出しに行った。ぶれないなとアリアは思いながら、ブルーノが走っている後ろ姿を見ていた。
アリアはアリア隊の部隊長となった時に、当然、副官は自分が決められると思っていた。通常、副官は部隊長が決めるのが、慣例であったためである。だが、ブルーノがアリア隊の副官になりたいとルビエに直談判したため、『じゃあ、ブルーノで良いよ』というルビエの面倒そうな一言によって、アリア隊の副官はブルーノとなった。
私の意見は通らないのかなとアリアは思ったが、結局、ブルーノがアリア隊の副官となった。今まで以上に、ブルーノが頑張っていたので、まぁ、ブルーノさんでも良いかとアリアは、最近思っていた。そして、20分後、ブルーノがアリアの下に戻って来た。どうやら、出発準備が整ったようだ。
ブルーノからの報告を聞いたアリアは、ルビエに出発準備完了の報告をした。そして、2時間後には、王都レイルからテメレに向けて、中央軍とともに、王都レイルを出発していた。
――中央軍1万が王都レイルから出発して、1日半が経過した。夜も休まず、馬を乗り換えながら、テメレに向かっていたため、予定よりも早くテメレに到着しそうであった。中央軍よりも先行していたルビエ率いる近衛騎士団は、既にテメレの周辺まで到着していた。
「これは、マズいぞ!」
ルビエはテメレの様子が見えると、そう言った。アリアもテメレを確認すると、テメレの都市を囲っている城壁には、多くのバジル王国軍が取りついている状態であり、門も破城槌で破壊されそうになっていた。何とか、城壁を登って来るバジル王国軍の兵士を寄せ付けないようにしていたが、テメレの城壁の上では、戦闘が繰り広げられていた。
また、城壁の上空には、赤い色をした体表に、3mはあろうかという巨体をした竜に乗っている兵士がいた。そして、上空から急降下したと思ったら、城壁の上で戦っている北方軍の兵士に襲いかかり、そのまま倒して、上空に戻っていった。
どうやら、あれが竜騎兵のようだとアリアは思った。上空からの一撃離脱が基本の戦法であったようだ。なんとか、北方軍の兵士も矢を射って、竜騎兵を落とそうとしているが、上空に居る竜騎兵の移動の速さの前にはまったく無意味であった。
「各隊、門を破ろうとしている破城槌を動かしている部隊を狙え! その間、上空にいる竜騎兵も警戒しろ! 突撃!」
ルビエがそう言うと、近衛騎士団はテメレを包囲しているバジル王国軍に突撃を開始した。バジル王国軍は、動揺しているようであった。アリアも、アリア隊を指揮しながら、破城槌を使って門を破ろうとしている部隊を目指して、バジル王国軍に突撃を開始した。
近衛騎士団の突撃に気づいた竜騎兵が、アリアに近づいて来た。どうやら、部隊を指揮している指揮官を倒そうとしているらしい。そのまま、急降下して、アリアに攻撃をしてきた。
「舐めるな!」
アリアはそう言うと、竜騎兵の槍を受け流し、そのまま竜とともに兵士を真っ二つに斬った。そのまま、竜と兵士は地面に落ちた。
(これが、竜騎兵か! 竜の重さに加えて、上空から急降下して攻撃をしてくるから、威力が凄まじい! しかも、攻撃を加えた後は、すぐに上空へ逃げていく! 矢で射ろうとしても、その頃には、上空にいて届かない! これは、強敵だな!)
アリアはそんなことを思いながら、アリア隊を指揮していた。周りを見ると、上空から急降下して攻撃してくる竜騎兵に近衛騎士団は苦戦しているようであった。だが、リールとルビエは、竜騎兵の攻撃を簡単に対処していた。
リールは、アリアと同様に、槍の攻撃を受け流すと、反撃で竜と兵士の両方を倒していた。ルビエに至っては、竜騎兵の攻撃が当たる前に、槍の突きで竜と兵士の両方を倒していた。あまりにも速過ぎて、アリアでさえも目で追うのがやっとであった。明らかに、昔より槍の突きが速くなっていた。
ルビエに倒された竜は、上空から降下してきた勢いのまま、バジル王国軍の兵士達に突っこんで行った。ルビエの攻撃が速過ぎて、何が起きたか分かっていない兵士達の悲鳴がアリアにも聞こえてきた。そして、アリア隊が破城槌を動かしている部隊に襲いかかる頃には、中央軍がバジル王国軍に攻撃を開始していた。
ルビエが直接指揮する部隊は、既に破城槌を動かしている部隊を壊滅させ、破城槌自体にも火をつけて燃やしていた。そして、他の破城槌を攻撃している部隊に合流しようと、敵陣を突破していた。前方に近衛騎士団、後方からは中央軍が攻撃してきたバジル王国軍は大混乱に陥っていた。
そして、アリア隊が破城槌を動かしている部隊を壊滅させ、破城槌に火をつける頃には、バジル王国軍が退却し始めていた。どうやら、バジル王国軍の指揮官はこれ以上、戦うのは無理だと判断したようであった。至る所から、銅鑼が鳴らされ、バジル王国軍は退却していった。合わせて、上空にいた竜騎兵も退却していった。
中央軍は、それを追うことはせず、ロナルドの指示でテメレの周囲に防御陣地を築くように、命令をしていた。そして、ルビエ率いる近衛騎士団とロナルドは、テメレに入っていった。
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