第34話 14年越し

本部襲撃から4日経った日の昼過ぎ。

アルバは食堂で1人項垂うなだれている。


アルバ:「はぁ〜。任務連れて行って貰えないだけで1日がこんなに退屈だなんて...」


アルバ以外のゼラノスを含めた緋縅の隊員は任務や買い物に出払っており、今日は緋縅支部でアルバのみお留守番をしている。


アルバ:「なんか面白い番組やってないかな」


リモコンを手に取っておもむろに食堂のテレビをつける。


ポチポチ


チャンネルを変え続けるが、昼過ぎということもあってバラエティ番組をやっている局はどこもなかった。


アナウンサー:「今年も多くの野菜が...」


興味無いニュースばかりだったためテレビを消そうとした瞬間、ついていたチャンネルのニュース番組がバタバタし始める。


アナウンサー:「そっ、速報が入ったため、ここで野菜特集を中断します!」


アルバ:「ん?」


アナウンサー:「14年前、カイカのメルダ王女が暗殺されるという凄惨な事件があったことを皆様覚えていますでしょうか?その犯人が14年という長すぎる年月を経て、とうとう発覚した模様です!」


国家間での領土侵略戦争が起こるきっかけとなったメルダ暗殺事件。その犯人がようやく見つかったというのだ。普段ニュースを見ないアルバでも、その報せに興味を示した。


アナウンサー:「犯人は今も逃亡中ですが、犯人の特徴が分かったとの事なのでお伝えします。犯人は現在だと20歳程の青年で左腕が無いとのことです。繰り返します。犯人は現在20歳程の男性で左腕がありません」


アルバ:「20歳ぐらいの片腕無い人なんて何人かいるだろ、誤認逮捕とかありそうだな」


アナウンサー:「また、調査隊は犯人の現在の顔を予想した似顔絵を公開しています。それがこちらです」


テレビに映った似顔絵はなんとも優しそうな愛想のいい顔をしている。


アルバ:「案外こんな優しそうな人が凶悪犯罪とか起こすんだな。怖ぇ」


アナウンサー:「この顔に似ていて、左腕のない青年を見つけた方はすぐに警察に通報し」


ブチッ


一通りの話を聞き終えたアルバはテレビを消す。

そしてまた暇な時間に押しつぶされそうになる。


アルバ:「そうだ!久しぶりに特訓でもするか!隠力の使い方を学ばないとだしな!」


思い立ったが吉日、急いで自分の部屋に特訓に使えそうなものを取りに戻る。


ガチャ


アルバ:「えっーと、なんか持ってきたかな?」


棚をガサガサと探すが、使えそうな物が見つからない。


???:「クローゼットに色々置いてあったよ」


アルバの椅子に座っている男が親切に教えてくれる。


アルバ:「たしかに!そっちにサンドバックとか仕舞ったような!サンキュ!」


???:「どういたしまして」


ガラガラ


アルバ:「あったあった!これで特訓も捗るよ!」


???:「頑張れ!行ってらっしゃい」


アルバ:「おう!行ってきまーす!」


ガチャ バタン


.

.

.


ガチャ


アルバ:「いや、アンタ誰だーー!!!」


セキュリティがしっかりしている緋縅支部で不可侵の自分の部屋がこの世界で1番安全だと思って気を抜いていたのか、それとも緋縅支部がいつも賑わっているから人がいても不思議に思わなかったのか。

どちらにせよ、目の前の男は敵なのか味方なのか。

アルバは男の顔をよく見ると、どこかで見たことがあることに気づく。


アルバ:「あれ?知り合いだっけ?どっかで見た気が...」


???:「ほんとに?まさか覚えているとは思わなかったな」


男は椅子から立ち上がるとアルバはギョッとする。

左腕がない。

さっきのニュースがアルバの脳内にフラッシュバックする。


___________________________________________

アナウンサー:『犯人は現在20歳程の男性で左腕がありません』


アナウンサー:『調査隊は犯人の現在の顔を予想した似顔絵を公開しています。それがこちらです』

___________________________________________


アルバの目の前にいる男は、調査隊の似顔絵そのものだった。


アルバ:「さっ、殺人犯!」


???:「やっぱりそっちで覚えてるか...」


アルバは本能的に隠力を解放して威嚇する。

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