第16話 稲光
『ぉぉぃ!!』
誰かの呼ぶ声が聞こえる。
???:「おぉい!起きろアルバ!!」
目を開けるとボロボロのレイスとライナスが目の前にいた。
レイス:「マジで倒すなんてな」
レイスが感心して微笑する。
アルバ:(そうか、俺勝ったのか...)
レイス:「俺がアイツに負けて、お前がアイツに勝ったからと言ってお前が俺より強い訳じゃないからな」
アルバと匹敵する負けず嫌いのレイスは必死に弁解する。
ライナス:「お前のおかげでクロレドの人達も無事だ」
ライナスが後始末をしてくれたようで、救護班もこちらに向かっているらしい。
アルバ:「リサは?」
ライナス:「痣みたいなのが出来てるぐらいで意識はしっかりある」
それを聞いて安心し、肩の力が抜ける。
レイス:「今回はすみませんでした。俺の勝手な行動で2人とも怪我させて」
レイスが深く頭を下げる。
それを見てライナスはブチギレる。
ライナス:「ほんとにてめぇのせいで散々な目に合わされたわ!」
レイスはどんな顔をしていいか分からず、顔をあげられない。
ライナス:「けどな、クロレドの人達も無事、それにお前も成長したみたいだし結果オーライってやつじゃねぇか?」
急に許されたレイスはポカンとしてライナスを見つめる。
そのやり取りを見てアルバもニタァと笑う。
ライナス:「あと30分もすれば応援部隊と救護班が来る。ミレネとか言う野郎は捕縛したし、ちょっとの間休憩だ」
ライナスがアルバを起こそうとすると、隠力が溢れ出す気配をビンビンに察知する。
ミレネ:「まだ終わってないぞガキども!!!」
ライナスの力で捕らえていたはずのミレネが、こちらに向かってきている。
ライナス:「どうやって抜け出した??俺の鋼で拘束したからピクリとも動けねぇはずだぞ!」
ミレネ:「鋼など俺の支配下だ。抜け出すくらい造作でもない」
ミレネの"目覚め"を把握していなかったライナスは自分の失態に苦笑するしかなかった。
ミレネ:「作ったばっかの新作だし、手持ち少ないから使いたくないけど、あの方の為にもお前らをここで消す」
そう言うと小さなカプセルのようなものを周囲に撒き散らす。
数秒後、そこからオーバーが飛び出してきた。
アルバ:「オーバーを操ってるってのはどうやらホントだったみたいっすね」
アルバが戦闘態勢に入ろうとするが、アルバにそれだけの力は残っていなかった。
20体ほどのオーバーと、凄まじい隠力を放つミレネを前にボロボロの3人ではあまりに分が悪い。
ライナス:「俺の"目覚め"はアイツに相性が悪すぎるし、後輩2人は立っているのがやっと。これはまずいな」
ミレネ:「壹ノ業 滅鋼砲」
またあの巨大な金属の球体が3人目掛けて飛んでくる。
ライナス:「仕方ねぇ、やるぞお前ら!」
ライナスの掛け声に2人は覚悟を決めるしかないと構えたその瞬間、一閃の稲光が金属の塊を粉砕する。
???:「ドッヂボールか?子供の頃以来だな、混ぜてくれ」
目の前に身体中に電気を走らせたゼラノスがポケットに手を突っ込み微笑んで立っている。
アルバ:「たっ、隊長!?なんでここに??」
アルバは驚きのあまり目を擦る。
ゼラノス:「お前らが呼んだんだろうが。本部から緋縅が1番近いから向かえって言われてな。俺以外全員任務行ってたから仕方なく来てやったんだよ」
ライナス:「隊長に出てもらうまでもありません!俺が今ぶっ飛ばしますんで!」
ライナスが単騎で突っ込もうとするもゼラノスに止められる。
ゼラノス:「お前らボロボロじゃねぇか、それに敵さんは能力者っぽいし。ダルいけどお前らは帰る準備でもしとけ。早く帰って昼寝の続きがしたい」
ライナスは2人を連れて倉庫の中に走っていく。
アルバ:「俺、隊長の戦い見たいっす!」
ライナス:「バカヤロー!隊長が帰る準備しろって言ってんだ。後始末終わらすのが先だ!」
ライナス達が倉庫に走っていくのを確認してから、ゼラノスは頭を掻きながらミレネの方に歩いていく。
ミレネ:「緋縅隊 隊長 ゼラノス・ラザップ。面倒くさがりだが、戦場に出れば一瞬で敵を壊滅させると聞く」
ゼラノス:「俺のこと知ってんのか。けどその話はだいぶ盛ってるんじゃねぇか」
ミレネはありったけの隠力を解放し、渾身の一撃を繰り出す。
ミレネ:「
周囲にあった金属が全て溶けてゼラノスを包み込む。
そしてゼラノスを包む金属は球体となり、あちこちから針が飛び出す。
ミレネ:「磁場球獄に囚われれば、中は人間には耐えられない磁力で溢れている。血液中の鉄分が反応して、肉体は弾け飛ぶ!隊長なんて肩書きだけだったな」
ミレネは勝ちを確信して高笑いする。
だが、途端に金属の球体が激しく揺れ始める。
パァンッ
球体は弾けて辺りに飛び散る。
ゼラノス:「わりぃ、ちょっと雷出したらお前の磁力狂っちまったみたいだわ」
自身の最強の業をいとも簡単に抜け出されミレネは動揺が隠せない。
ミレネ:「お、お前らやれ!!」
ミレネの声に反応しオーバー達がゼラノスに襲いかかる。
ゼラノス:「お前オーバーに命令できんの?そんな人間いるんだな、初めて見たわ」
そう言うと人差し指を1番近くのオーバーに向ける。
指から出た微弱に見えた電気がオーバーに触れる。
ビリビリ
パァンッ
ジジジジジジジ
そのオーバーから連鎖して他のオーバーも感電し、身体が電気に耐えられずオーバーが消滅していく。
ミレネは恐怖し腰を抜かしてその場に座り込む。
ミレネ:「ほんとに俺と同じ能力者なのかよ...」
向きを変えその場から逃げようと立ち上がる。
ゼラノス:「もう帰るのか?」
いつの間にか真横にゼラノスがいる。
ゼラノス「俺の部下とは遊んでくれたのに、俺とは遊んでくれないのか?」
そう言うとミレネの肩に手を置く。
ミレネ:「ひ、ヒィ...」
ミレネの体に大量の電流が奔走する。
耐え切れる訳もなく口から煙を出し、白目を剥いて倒れ込む。
ゼラノス:「やべ、やりすぎた。まぁ死んでねぇしいいか」
ミレネの首根っこを持って倉庫の方に向かい歩いていく。
ゼラノス:「お前ら帰るぞー」
あまりにも早く片付き、しかも無傷で帰ってきたゼラノスにアルバとレイスは目を丸くする。
ライナス:「さすが隊長!もう終わったんすね」
ゼラノス:「おう、もう救護班とか来るっぽいわ。このヒョロガリも、ここら辺適当に置いといたら勝手に本部の奴らが連れてくだろ」
するとそこにリサが走ってくる。
リサ:「ヒーローのお兄ちゃんありがと!!」
リサがアルバに勢いよく飛びつく。
ヒナ:「こら、みなさん疲れてるんだから離れなさーい」
少し離れたところで脚の応急処置を受けているヒナが呼びかける。
すると、そのヒナの後ろから50代くらいで貫禄ある体中傷跡だらけの男が1人とぼとぼとアルバたちの方に向かってくる。
???:「レイス君久しぶりだね」
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