第14話 レイスとヒナ

ババババババッ

ヒュンッ

「きゃーーー」

「うろちょろすんなガキがぁ!」

「ぐわぁぁ」

「いやーー」

「人質がどうなってもいいのか!!」

スパンッ

バババババババッ


倉庫の中では銃声、怒号、悲鳴、様々な音が飛び交い、混乱状態に陥っている。

レイスは1人ずつ薙ぎ倒していく。


レイス:「ヒナ!どこだヒナ!!」


レイスの声が倉庫に木霊こだまする。

すると人質の中の一人の少女が顔を上げる。

その少女がレイスのことを見つめ、その顔に生気が戻る。


ヒナ:「!!!! まさか嘘でしょレイス!?生きてたの!!」


黒仮面:「お前あいつの知り合いか、ちょうどいい」


敵の団員がヒナの髪を引っ張りヒナの頭に拳銃を突きつけて人質にとる。


リサ:「ヒナお姉ちゃんを離せぇ!」


隠れていたリサがそれを見て、ヒナを助けるために敵に向かって走り出す。


黒仮面:「おい野放しのガキがいんじゃねぇか、縛ってた縄が解けたのか?」


子供が大人に到底適う訳もなく簡単に蹴り飛ばされる。


ヒナ:「リサーー!!」


ヒナは団員の手を振りほどきリサに駆け寄ろうとするも、お腹に重いパンチをいれられる。


うっ、、


それを見たレイスは怒り、真正面から突っ込む。


黒仮面:「それ以上動くな!この女が死ぬぞ!」


カチャッ


レイスは1度立ち止まるが、1歩ずつ歩きながら敵に近づく。


黒仮面:「止まれって言ってんだろ!」


コツコツコツ


1歩ずつ1歩ずつレイスと敵との距離は縮まる。


黒仮面:「俺は忠告してやったんだ。それを聞かなかったお前が悪い!」


黒仮面の団員は引き金を引こうとするが体が動かない。


黒仮面:「なんだ!どうなってる!?」


レイス:「影を固定した。止まるのはお前の方だよ」


黒仮面の団員からヒナを奪い取り、みぞおちに一撃をお見舞いする。


ぐはっ


ヒナ:「ほんとに、ほんとにレイスなの?」


レイス:「あぁ。久しぶりだな」


2人は抱き合い、久々の再開を喜んだ。


パチパチパチ


???:「よく分からねぇが感動の再会って感じか?」


倉庫の奥から黒仮面をつけた長身の男が拍手をしながら姿を現す。


レイス:「ヒナちょっと下がってろ...」


レイスはヒナを優しく後ろにさげる。


???:「結構強いんだなお前。見た感じかなり若そうなのによ」


レイス:「こいつらが弱すぎただけだ」


???:「おいおい俺の部下にひでぇ事言ってくれんな」


すると長身の男は仮面を取り外す。


ミレネ:「俺はミレネっつーんだけど、どうだ?俺の下で働いてみないか?」


鋭い輪郭で目がつり上がっており、ずる賢そうな顔をしている。

見た目は痩せ型だが、その男からレイスはかなりの強さを感じ取る。


レイス:「悪ぃけど興味無いわ」


ミレネ:「そうか、部下になるならこの落とし前は俺が責任とってやろうと思ったのになぁ。ならねぇなら、お前の首貰うわ」


周りの武器や鉄骨が空中に浮遊する。


ミレネ:「面倒臭いけど、お前すばしっこそうだからな。実験道具も死ぬだろうが仕方ないよな、また集めりゃいい」


そう言うと浮いていた鉄骨が降り注ぎ、銃は乱射し始める。


レイス: (まずい、ヒナが巻き込まれる)


レイスは後ろにいたヒナだけを抱えその場から影を通って逃げようとする。


「きゃーーー」

「ぐわぁぁ」

「助けてーー」


捕らえられていたクロレドの住人が悲鳴をあげる。


ヒナ:「待って!町のみんなが!!」


ヒナがレイスから離れ、他の町民の方へ走っていく。


レイス:「そんなやつら助けなくていい」


ヒナ:「レイスはみんなに対して恨みがあるのは分かる。けど、あれからみんなは変わった。信じて」


バンッ


一瞬の出来事だった。ヒナの脚を銃弾が貫いた。ヒナはその場に倒れ込む。


即座にレイスは影を伝い、ミレネの背後をとる。


レイス:(殺す!!)


首の骨をへし折るつもりで繰り出した渾身の蹴りをミレネは見ずに手で受け止める。


ミレネ:「そんな殺気出したらバレバレだって」


近くにあった金属片をレイスの体に収束させ動きを封じて、そのままレイスを壁に貼り付ける。


ミレネ:「気づいてるだろうが俺も"目覚め"持ちでな。磁力マグネス、それが俺の力だ。俺の隠力を込めた金属でお前の力を封じ込んでる。その状態じゃお得意の影遊びも出来ないだろ」


ミレネはレイスに近寄り顔面に無言で23発殴りかかる。


くはっ!!


ミレネ:「今のはお前にされた部下の分だ。で、これが」


大きな鉄骨が目の前に浮遊してくる。


ミレネ:「俺らのこと知っちまった分ね」


鉄骨がレイスに向かって飛んでくる。

レイスは奥歯を噛み締め、目を閉じて後悔の中死ぬ覚悟を決める。


パリンッ ガシャーン!!


突如倉庫の天井が壊れたかと思うと辺りに一気に明るくなる。


ドゴォーーン


目の前に光が落ちてきたかと思えば、光は鉄骨を撃ち落としていた。


アルバ:「いってぇぇぇ、鉄骨殴んのってこんな痛ぇのかよ!これ手ぇ壊れた絶対壊れた!!」


レイスは目に映るものを疑った。


レイス:「アルバ、なんでここに...」


アルバ:「そりゃ仲間助けに行くのは当然だろ。それより、随分ボロボロにやられてんじゃねぇか!緋縅隊の名が泣くぞ!」


緋縅隊という単語を聞いてミレネの顔つきが変わる。


ミレネ:「周りとの関係を閉ざした村だからバレないって言われてクロレドに決めたのに、結局バレたじゃねえかよ。悪いけど俺らの存在は秘密なんだ。普通なら若い芽を摘むのは気が引けるけど、お前ら雑草ならいくら摘んでも咎めは無いだろう」


アルバ:「へへっ、雑草か。雑草ほどしぶとい物はねぇよ」


レイス:「俺がそいつを殺す。アルバてめえはとっと消えろ!」


レイスはヒナを傷つけたミレネを自分の手で殺すことしか頭に無い。

それを聞いたミレネは、レイスを覆う金属を強く締め付ける。


ぐわぁぁぁ


ミレネ:「うるさいな、お前はもう負けてんだよ。大人しくしといてくれる?」


父という大きな存在を失ったアルバには、大切なものを傷つけ奪われる気持ちが痛いほど分かる。


アルバ:「大事なものが消えてしまう恐怖は俺にも分かる。けど、お前の幼なじみはまだ生きてんだろ。その体でやってもお前が死ぬだけだ。お前が死ねばその大事な幼なじみを悲しませることになるだろ」


アルバの正論にレイスは腹が立つが言い返せない。


アルバ:「それによ、俺が来たんだ。俺がお前を死なせない」


アルバは捕まっている町民の方を確認し、怪我人の数や戦況をざっと理解する。


アルバ:「こっからは俺が相手してやるよ、おっさん」


ピキピキ


ミレネ:「誰がおっさんだと?」



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る