議員秘書、ときどきブツコス~コスプレ禁止法案は絶対止める~
松元 麻紗(まつもと まあさ)
プロローグ
国会会期中は、時間がいくらあっても足りない。
30歳を目の前にした女子の仕事ではない! と日々感じながらも人生ふた回り以上先輩の桐咲議員のあとを必死に追いかけ、タクシーに飛び乗った。彼女は年齢をしのぐほどの体力の持ち主と言っていい。
ベテランと思われる個人タクシーの運転手は、こちらの様子をチラッと見て、車内の空調を下げてくれたようだ。━━ありがとう。
かばんの中から用意したスピーチ原稿を、そっと先生の視線の見える膝位置に配置した。
「それ、スピーチ原稿ね、ありがとう、もらうわ」
360度に目がついているのだろうと思うほどに、すぐに気づく特技。そして瞬発力を兼ね備えた集中力で受け取った途端に原稿をチェックし始めた。さすが、元・劇団ソレイユの看板女優だ。
これでやっと一息の時間。と言ってもタクシーに乗っている30分程度だが、かばんから栄養補給のための食料をそっと口に運び、遠くの大きな雨雲をただただ眺めていた。
すると、ラジオからのニュースが耳に入ってきた。
『……先月発生した、コスプレイヤーを狙ったストーキング事件の続報です。犯人は未だ見つかっていないまま逃走を続けている模様です……』
わたしは、自分の身に起きた婚活パーティーで出会ったストーカー男テツを思い出し、背中に汗が流れた。先生に気づかれないよう、メガネを外し、メガネ拭きを取り出しレンズを力強く磨き始めていた。
(人を追い回すなんて、サイテーだわ)
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