憂鬱なユリウス〜転生したので頑張って生きてみます〜

@123kawarou

プロローグ

包丁を喉に向けて記憶をたどる

 雨が降っていた。 静かで、冷たい音が窓を叩いていた。

 部屋の中は暗く、スマホの光だけが俺の顔を照らしていた。

  ネトゲに目を走らせて、画面を閉じる。 それだけで、俺の一日が終わる。

 言葉に出そうと思えばいくらでも言える。  

 今やり直そうと,,,,

消えることができるなら今すぐ消えたい

 誰とも話していない。 誰にも会っていない。 誰にも、必要とされていない。

友人もおらずコミュ障でろくな勉強もできない毎日引きこもってネトゲをする。

 絶賛ニート真っ最中だ。

友人関係はなく家族関係もすでに消失済みだ。



こんな俺にも希望はあったのかもしれない。

 俺は知っている。

小学生の頃はクラスで一番ゲームもできスポーツも万能、友達も多かった。

 毎日が楽しかった

中学時代もその調子で進めばよかった。



 中学に入り俺は進学校に入った。

 自分に自信がありすぎた。周りの目を気にして表面だけを気にして生活をしていた。

  “こいつらはバカの集まりだ” ,,,,見下しを繰り返して、自分はほかの人間とは違って特別なんだと

 付けが回った,,,現実を思い知らされ逃げてきた 俺だけが浮いていたんだ。

 2か月後には相手にされずに孤立していた。

男子には馬鹿にされ女子には笑われた   

入学当初ほどの自信はとっくに底をついていた。 

それ以来ネトゲやらエ○動画に,逃げ,,,ひきこもるようになった。

 俺はいつの間にかゲーム,エロゲーに浸り、いわゆる依存症になった。

 どれほど部屋にひきこんでいたかわからない。

自分でも理解している。

己のメンタルの弱さ、自身のなさを隠して

ずっと逃げて生きてきたこの先もずっとそうなるんだ。

  不登校の間何度か先生、友人が家に来た、全員お断りだ。

合わす顔がない 今の俺を見れば驚くこんな無様な姿。誰とも話す気になれなかった,,,

今更、我に返っても現状は変わらない。

もう中学三年になるころには誰も来なくなった。

卒業式はもちろん欠席。

その後両親からの説得もあり定時制の高校に入ることができた。

頑張ろうと思えた,,,

それもつかの間いじめの標的になった。なんたってブサメンに加えてコミュ障、クズ付きの完全特典版だ。俺は初日の自己紹介のとき、声が震えて、言葉が出なかった。

誰かが笑った。 俺は、目を合わせないようにした。

でも、それが逆に「無視してる」と思われたらしい。  理不尽だよな,,,

休み時間、机の上に「カス童貞ww」って書かれた紙が置かれてた。

俺は、それを丸めてポケットに入れた。

毎日続けば慣れるものだ

あの頃とは違うのだと強くなれた気がしていた。

ある日から、俺の席がなくなった。

誰かが勝手に移動させてた。 俺は、何も言えなかった。

周りの笑いが聞こえる,,,またあの時と同じだ。

帰り道、一人泣くのを堪えて裏道を通る。

ふと目に映った。

不運が重なった,,, ガラの悪い奴らが高校生ぐらいの女の子に絡んでいた。


「ねぇ君可愛いねちょっとお兄さんたちと遊ばない?」

“やめてください。”


(ネトゲの典型的な例だな これは俺には見合わないスルーだ)

仮に助けても

金を奪われて断れば殴られ顔を腫れ上がるぐらいまでボコボコに殴られる始末だ。

ふつうは助けるのだろうな でも仕方がないことだ。



結局そんなことできるわけなかったが

 「や、めましょうよ嫌がってますし」(コミュ障とは困るものだ)

「は?何お前 お前何様なの?」

(これだから嫌なんだよ)


結局助けた女の子は逃げるかのように去って俺はこの後想像通り

顔を腫れあがるまで殴られ金もとられた。


結局この世界は、生まれた時から備わるものと備わない俺みたいになる。

 変わりやしない。


帰ればいつも居る両親がいない

まぁいっか

ベッドにつき眠りについたころ

こんな夜遅くに何だってんだその時までは平常心があった。

おばさんがうちに来た。

その瞬間異様な雰囲気に変わった。

父母がまだいない

おばさんはこう言い放った

「○○、くん 落ち着いて聞いてね,,,」


おばさんはためらうかのように

一番聞きたくなかった言葉を発した。


“交通事故で両親が死んだのだと。”


相手の居眠りで両親は車に轢かれた。

 ビンゴかのようにすべてが当てはまった気がした。

    あぁまたこれか



この出来事以来俺の生活,思考は止まった。

退学し、おばさんの家に住みついた。

すべてをあきらめた

おばさんは、こんな俺にも優しかった。 でも、優しすぎて、逆につらかった。

「ご飯できたよ」って言われるたびに、 「俺、ここにいていいのかな」って思ってしまう。

部屋にこもってると、ドアの前にそっと食事が置かれてた。

一度だけ、「学校、行かなくていいの?」って聞かれた。

俺は、「うん」って言って、それっきりだった。

毎朝いつ死ぬか迷いながらもなんとかここまで来た。

もう十分だ。記憶がまたよみがえるかのように消去していく。

 父さんと作ったプラモ、母さんと作ったクッキー.,,,,,,,,,,,,,,,

もういいよ そんなの端から出てきた記憶の一部

高所マンションから飛び降りようともした記憶。首吊りの記憶。

  ,,,,,どれも

あぁ 死ぬ勇気がなかった。

常に追い打ちをかけ絶望のがけっぷちに立っている気分だ。


心の限界が来たのだ。一人がつらかった。

両親はいつも俺の不満を聞いてくれた。俺の相談に乗ってくれた、


俺に生きる希望をくれたんだ,,,,,。

でも、今ではそんな希望もない。

誰もいなければ、目標も頑張る意味もないい

なら “死ぬか”

その時だけあっさり死のうと決めれた。

あの頃の思い出もすべてを捨てることができた。

それでも記憶がよみがえるかのように一回目も二回目も 

生きたい,,,,と思ってしまう。今度もためらうのか?

それだけは嫌だった。

生きていて俺は何の意味がある?友人は?,,,,

すべてが遅く見えるように外から聞こえる雨の音すべてが止まるかのように

手が首に吸い寄せられるように勢いよく


“包丁の先をのどに向けて,,,,動いた”



喉元から激痛が走った両手には血まみれの手 

目に映るのはなにも

「ゔっぅ,,,,,  」

 一粒のしずくが垂れた

長い無音が続く

(憎い憎い憎い なんで俺だけ俺だけ

母さん、父さん  俺だってもっと,,,,,)

 

俺は思った。いや思えたのかもしれない 

“生きたい”と

たとえ希望がなくても,,,

 ゆっくりと視界がくらむ

    ぼんやりと目に映った。

まるで記憶から抜き出されるように

「かあ,,,さん?」

「大きくなったわねえ○○」

「おぉ○○、大きくなったな。」 ,,,,。

「とう,,,さん?」


両親の声がかすかに入ってくる

彼らの笑顔が

言いたかった、

頑張れなくてごめんって

こんな子供は親不孝だって

 でも、それでも見守ってくれてありがとうって。


涙が地面に流れ血と入り混じる

自然に呼吸ができないのが分かった。

同時に涙が零れ落ちた、やっとわかった気がした。

俺が欲しかったのは“愛”だったのかもしれない。

もっと愛されたかった、もっと恋をしたかった

もう一度 見たかった。

       (“もういちど 母さん 父さん”)

    

喉元が叫びそうになるほど痛む

周りの音は聞こえない

男が俺の前に来た彼は、何か叫ぶかのようにこちらを見つめているような気がした。

あぁ  “寒いな”

死ぬんだろうな。,,,,,


“ もういちどやり直せればな ”


 その瞬間——部屋の空気が、変わった。雨音が止んだ。窓の外に、光が差し込んだ。それは、月でも街灯でもない。 青白く、揺らめく光。俺の血が消え痛みがなくなるかのように、空間が歪んだ。

  誰かが、言った。耳じゃない。心に響いた声だった。

  俺の目の前に、扉が現れた。  

  光のような、揺れる境界線。

 その向こうに、何かがいる。 俺を待っている。

 そして、俺は——導かれるようにその扉に、手を伸ばした,,,,。

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