第2話 スケバン刑事(二代目)と0課の女

 春日太一の著書「泥沼スクリーン」(文藝春秋刊)を読んだとき「あれ」

と思ったことがある。この書では主に「木曜邦画劇場」と題して、昨今の邦

画を取り上げているのだが、10番目は『スケバン刑事』、11番目は『0課の

女 赤い手錠』であったのだ。

 しかも東映映画『スケバン刑事』(1986)を取りあげたのと同時に、その祖

型であったフジテレビ=東映のテレビ映画『スケバン刑事Ⅱ 少女鉄仮面伝説』

(1985- 1986) にも言及しているのだ。

 「この人も気がついたな」と思ったが、春日氏は1977 年生まれ、気がつか

ずに看過していているのが普通であろう。

 これに限らず、『スケバン刑事』シリーズの評価は一定しない。映画『スケ

バン刑事』だけの評価か、テレビ映画『スケバン刑事Ⅱ 少女鉄仮面伝説』も

交えて評価か、論旨が定まらないことも原因であろう。


 以下、『スケバン刑事Ⅱ 少女鉄仮面伝説』に絞っての感想である――

『スケバン刑事Ⅱ 少女鉄仮面伝説』第 41 話「 壮烈! ? サキ、雪乃、お京 最後

の戦い」            

 脚本/橋本以蔵 監督/田中秀夫

 麻宮サキこと早乙女志織(南野陽子)の盟友だった雪乃(吉沢秋絵)、

お京(相楽ハル子)は、志織の戸籍上の祖父・信楽老(森塚敏)の配下の

手にかかって負傷した。

 そこに登場した暗闇司令(長門裕之)は、志織にスケバン刑事解任と逮捕

を通告したが、志織は「この代紋は、おまんらの手先の証じゃないがよ」と

叫んだ。遅れて現われた西脇(蟹江敬三)も「裏切り御免」と暗闇司令を妨

害した西脇の車の助手席についた志織は、信楽老との生死を賭けた対決を決

意した。


 この「最終回一歩手前」の第41 話で、実はこのシリーズは『0課の女 赤い

手錠』(1974)のテレビ版リメイクでした、と開き直っているのだから仰天も

のである。

 それまで、このシリーズは東映映画『男組』(1975)『男組 少年刑務所』(1976)の向こうを張って、《女組》らしい展開になっているのに「最終回一歩手前」の第41 話でこうなるのだ。

 東映側のプロデューサーであった中曽根千治が、東映入社直後に『0課の女

赤い手錠』の製作係であったことを考えると、すべては必然であった。スケバ

ン刑事・麻宮サキ(二代目)のオリジンとして、杉本美樹扮する0課の女・零

がいるのだ。

(資料:『ビークラブスペシャル スケバン刑事研究』バンダイ刊)


 いったい、テレビ映画でこんな複雑なファクターに、誰がついていける? 

映画評論家の中には、完全に煙に巻かれている人がいたと思う。

 前出の春日太一氏など、よくついていけるな、と感心する。かく言う私(1955

年生まれ)などは、「毒が回った」というしかないのだ。

 今は東映オンデマンドという配信チャンネルがある。『0課の女 赤い手錠』も『スケバン刑事Ⅱ 少女鉄仮面伝説』も、ひと目で見ることができるのだが……後者をテレビで見ていたときの感慨は、もう戻ってはこないのだろう。


追記

 橋本以蔵が曾根中生に師事していたことがあるという。

 『ビークラブスペシャル スケバン刑事研究』に、そういう記述があるのだ。

 すると、『スケバン刑事Ⅱ 少女鉄仮面伝説』のルーツは、『0課の女 赤い手錠』

でなく『天使のはらわた 赤い教室』からも伸びていたことになる……!

 橋本以蔵が、蟹江敬三を見習っていた時期もある? 正直慌てたが、この師事の期間はハッキリしない。この点は触れないことにした。


『0課の女 赤い手錠』

監督/野田幸男

原作/篠原とおる

脚本/神波史男、松田寛夫

零/杉本美樹


『天使のはらわた 赤い教室』

監督 /曾根中生

原作/石井隆

脚本/石井隆、曾根中生

土屋名美/水原ゆう紀

村木哲郎/蟹江敬三


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