第12話 ここから先は危険度最高レベルよ
「いっ、今!何か声が!?」
慌てて課長の背中に隠れたウマミイを見たヤマダが
「れいかさん、また取り憑いてるってマジなんすね」
興味深そうに声をかけてくる。部長は苦笑いしながら
「磁気を遠ざけてもダメだ。どうやら前より強力になっているらしい」
課長が、震えているウマミイに
「無害だから大丈夫。それよりうちに行こう」
部長とヤマダも頷いて退勤準備をし始めた。ウマミイも震えながら今日一度も開いていないカバンを持って入口付近に立つ。
タイムカードを次々に押して企画部の面々が退社していき、ウマミイも押してそれについていく。
会社から出て、三人はウマミイの家と反対方向へ足早に歩き出した。
課長と部長が並んで歩きながら
「れいかちゃん、ずっと話しかけてる?」
「今はずっと鈴中さんに文句言ってる」
「山行ったら離れそう?」
「どうだろう。まだ実体化してないだろ」
雑談を始め、ヤマダがウマミイの横に並び
「鈴中さんは彼氏いるんすか?」
小声で尋ねてきた、ウマミイは挙動不審になりながらも
「いっ、いやあ?どうかなー」
などと何とか誤魔化し、前方の二人の会話を聞こうと近づくとまた頭に
「あんた!ショウジはうちの!近づかんで!」
少女の声が響いて、ウマミイは思わずヤマダの背中に隠れてしまう。ヤマダは羨ましそうに
「れいかちゃん感じてます?良いなあ、俺何も感じられなくて」
ウマミイは震えながらもどうにか3人についていく。
3人は歩き続け、横断歩道を渡り、そして少し歩くと住宅地に囲まれた山道を登り始めた。ウマミイもついていこうとするとカバンの中のファイフォーンが激しく振動して、ウマミイが取り出すと、画面に映った深刻な表情のルリが小声で
「ウマミイ、ここから先は危険度最高レベルよ。エス様には既にウマミイの今朝からの状況について連絡を入れたわ。少し待っていて」
ウマミイも小声で
「この山が危ないの?部長様から変な声もするし……エスさんは何をしてくれるの?」
ルリは少し嬉しそうな表情になると
「エス様からご返答を頂いたわ。状況把握してウマミイの守護を開始したので心配せずに進めとのことよ」
ウマミイは何とか頷いたあとに、勇気を出してファイフォーンを握りしめ山道を進み始めた。
細い一本道の未舗装山道が山頂付近まで続き、その先には大きな古い、2階建ての木造屋敷が建っていた。
先を進む部長達は自動で開いた門から敷地内へと入っていく。ルリが小声で
「この山に入ってから、二万回のハッキングを受けたけど、エス様のご助力で完璧に遮断できたわ。独自の電波網が山全体を覆っているみたい」
「うう……部長様……すごいとこに住んでいるのね」
ウマミイは恐る恐る屋敷の門へと近づいて行く。
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