まえがき
このページを開いたあなたは、「なんで前書きがこんなところに?」と思ったかなと思います。
もしくは15話を読み終わって16話を読もうとしたら作者が出張ってきて渋い顔をしたと思います。
しかし前書きとなる文章を挟むには前編と後編の間であるここしかなかったのです。許してください。
さて。
15話まで読んでここにたどり着いた人、もしくは目ざとく「まえがき」という文章を見つけて最初に読みに来た人には語らねばなりません。この話がなぜ生まれたのかを。
だいぶ長い文章になりますし、読み飛ばしたところで何も損はしないので、長い文章を読み続けないと死ぬ活字中毒マグロの方のみお読みください。
作者・あやちゃんbot(以下作者)はAI技術に興味を持っています。
仕事にてAI技術(詳しくは話せませんが、チャット系や生成イラスト系ではないやつです)をずっぷりと利用しつつ、いつAIに自分の仕事そのものが取って代わられるかな~という見極めをしており、AIの発展と世の中での取り扱いについて日々目を光らせているというのが正確なところです。
そんな中、ツイ廃としてTwitter(自称𝕏)に入り浸っていた作者がGrokという新しいおもちゃに触れた時、遊び倒すようになったのは自然な流れかと思います。
しかし、Grokに「えっちな女の子と空を焼くハムスターが戦う小説」とかをリクエストしていた作者はほどなくして飽きてしまいました。なぜなら作者は文章を書くほうが好きだったからです。
正確に言えば、予期していなかった伏線の発見と回収に成功したり、脳内のキャラクターを「ただの設定の羅列」から「人格を持つキャラクター」に昇華させるには、オリジナルの長編物語を執筆するしか方法がなかったのでした。友だちがいればTRPG沼にハマってたと思うんですけれどもね。
そんなこんなで、例えば「自分のアカウントのツイートをランダムに読み上げ、その内容を能力として戦う変身ヒーロー」のような「自分で書いた方が面白いじゃんこれ」現象が発生し得ない文章をAIに書かせ、偶然が生む予測不能のエンターテインメントを楽しむくらいしかできなかったのでした。
なぜなら作者には「(寿司に関連した技を使うヒーローが)寿司の具材のように素早く動き回る」といったトンチキ文章が書けなかったためです。書けるかそんなもん。
しかし、GrokがGrok3にパワーアップし、それによりさらなる転機が訪れます。「GrokをTRPGのGMのように使い、ゲームブックのように遊ぶ」という遊び方が少し話題になったのです。
もちろん、早速試しました。謎の武装組織に捕らえられ廃墟に閉じ込められた主人公・アキくんとヒロイン・フユちゃんが「次はどうするのか」を定期的に文章で入力し、物語をGrokと二人三脚で紡いでいく遊び。選択肢を選んでクリアを目指すゲームとはまた違った没入感を得ることができました。
実際にはダメージの蓄積やスタミナ管理といった数値的な判定なんてなかったので無駄っちゃ無駄だったのですが、それでも「自分達の残り体力を考え、ペース配分をして無理に走らない」などの選択肢を入力し、その無駄を楽しむことができました。
「必殺マジカルスーパーパンチを放ち、敵も廃墟も吹き飛ばして脱出する」みたいな対話無視の選択肢を入力することもできましたが、アキくんとフユちゃんには必要なかったのです。
ゲームブック風遊戯が終わると、感想戦のターンです。
「これまでの選択を振り返り、良かった判断・良くなかった判断を挙げてください」とか言えば、自分の選択をなんか褒めたりタイム短縮ポイントを教えてくれたりしてくれるのです、楽しい。
また、一時の危機を乗り越え仲良くなった二人がひたすらいちゃつく後日談をひたすら書かせることもできます、楽しい。……楽しい?
……そう。ゲームブック遊びのために作った「キャラ設定」は、物語を通して作者の中で「人格を持つキャラクター」になったのです。
その経験により、作者は一つの気付きを得ました。
「キャラ設定」を「人格を持つキャラクター」に変えるためには「物語」が必要だという話は先程もしましたね。
しかし、AIに物語を書かせ、そこで成された肉付けをキャラ設定にフィードバックし、という無限ループを発生させることでキャラクターを練り上げていけることにはこれまで気づいていませんでした。
なぜなら、「キャラ設定に基づいて本文を書き、少し推敲し、物語として仕上げる」といった行為は、これまで無限に繰り返せるようなコスパの良いアプローチではなかったためです。
ですが、今は違います(ぎゅっ)。「読みたい物語」ではなく、「キャラクターのシミュレーション」としてAIでキャラとストーリーのプロットを物語にし、得られた気付きを設定にフィードバックし、また物語にし、というサイクルを手軽に回すことができるのです。これはこの上なく楽しいサイクルでした。
アウトプット論として「質より量の精神で粗い物をとにかくたくさん作り、それらから得られたフィードバックを踏まえて質を高めていく」というのが効率良いアウトプットの方法だとされているらしいです。
荒い文章を大量に書くというのはめんどくさいものですが、そこをAIにやってもらえばいいのでは? という気付きが得られたのです。最初から完璧な文章を書こうとして失速する、というのはアマチュア物書きのあるあるネタだと思います。
自力でAIの使い方を試行錯誤している時には知らなかったのですが、こういった「壁打ち」AI活用は他にも複数の書き手が行っていたらしいです。独自に考えた結果他の人と同じ結論に至る時というのは、だいたいの場合において”正解”だと思っています。
こうして。Grokくんと壁打ちを繰り返してキャラクターとプロットを練っていき、これまでになかった試行速度のスピード感を武器として自分史上最強最かわなヒロインを作る、というプロジェクトが動き出しました。
数度のループを経て、Grok3がシミュレートしてくれる限界に達しました。なぜなら今のAIにはキャラクターのイメソンを考えたり、カップリング妄想をしたり、言葉遊びや軽妙なギャグの掛け合いを考えたり、最初と最後の印象的なシーンをリンクさせたりといった「オタクが一番好きな部分」を考える能力がないからです。
そして、それは物語を書く人間だけが持つ、世界で最も楽しい仕事なのです。マグロで言う大トロです。
(余談ですが、作者がマグロの部位で一番好きなのは中トロと赤身がグラデーションになっている部分です。実家の近くの回らない寿司で食べることができたのですが、実家を飛び出してからはまったく縁がなくなってしまいました。)
そんなわけで、プロジェクトは「何度もGrokに書かせて練った成果を使って物語を書くぞ」という段階へとシフトしました。
これまで自分が書いていた物語は一話辺り五~八千字ほどだったのですが、今回はサクサク進めようと思い、結果として二千~二千五百字くらいになっていました。まあ「Grokくんにプロットを一つ渡し、一回出力させる」範囲の文字数が基準になっており、2クールアニメを想定した全二十四話くらいになっているため、全体の文字数は普通に多いという説もあります。
もちろん書きたい部分は前述の「大トロの部分」であり、状況説明や繋ぎのシーンなどはGrokの出力を流用しようと考えていました。これには執筆スピードの向上と、作者はこれまでPixivにうちの子の話を投げることしかしていなかったため「一度はPixivの『AI生成作品』タグを使ってみたい」という実績獲得めいた目論見があったのです。
しかし。実際に書いてみればわかることですが。
「貸せ! 俺が書く!!」を繰り返した文章は、九割以上が自分の文章なのでした。
ここで、Pixivのヘルプを見てみましょう。「AI生成作品とはなんですか?」ページには以下のように書いてあります。
「AI生成作品とは、制作過程のすべて、もしくはほとんどをAIによって生成された作品をいいます。
具体的には、下記の要件を満たす作品をAI生成作品といいます。(中略)
小説・マンガ・うごイラ
・ストーリー・書き出し・配置・作画・アニメーション等の制作過程を総合的に鑑みて、すべて、もしくはほとんどをAIによって生成された作品。
・例えば、テキストや画像などのフォーマットを問わず、一定の指示を元に生成されたリソースをそのまま、または組み合わせて、あるいは軽微な加工や修正を経て投稿する場合。ただし、小説作品で挿絵のみに利用するなど、AIによって生成されたリソースや作品を補助的なコンテンツとして利用する場合はAI生成作品設定を「はい」に設定せずとも構いません。」
……さて、九割以上が自分の文章になってしまったような作品を「AI生成作品です!」とお出しするのはPixivの定義通りと言えますでしょうか? いいえ、私はそうは思いません(某英語学習アプリ風機械音声女性ボイス)。
そんなわけで。「AIの文章の大部分を残すつもりで書いたが、九割以上手書きの文章」を「100%手書きのAIの文章を残すことを放棄した文章」にするプロジェクトが始まったのでした。
そして。キャラクターの深堀りを試みるうちに、Grokくんが知らないキャラクターと、Grokくんが知らないエピソードが生えてきました。元の文章を残すという枷が外れ、その上で最高の伏線回収を思いついちゃったんだから仕方ないですよね。俺のハンドルは俺のもの、お前のハンドルも俺のもの!
こうして、いつものようにイメソン当てはめ大好き伏線回収ジャンキー野郎による大暴走執筆作業が始まる──。
結局最初の目論見がご破産となったため、じゃあカクヨムあたりに手を出してみようじゃないか、と思ったのでカクヨムに来ました。縦書きプレビューができるのって素晴らしいですね。今後ともよろしくお願いします。
タイトルについてですが、なんか気に入ったのでプロジェクト名の「アキフユリビルド」をそのまま流用しています。アキとフユの話をリビルドしたからアキフユリビルドです。
いつものようにPixivに投げるならそのままでも良かったのですが、最近はあらすじを兼ねた長めのタイトルが流行っているようであり、折衷案としてサブタイを添えました。スピード進行のため5000文字目くらいで二人がくっつく話のサブタイがコレでいいのかはよくわかっていません。
前書きにも関わらずそれなりの分量となったこの文章をここまで読んでくれた人に、今更すぎるいつもの言葉を送ろうと思います。
楽しんで書くので、頑張って読んでください!
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