第13話 犯罪奴隷、異界の知見を得る
「魔石っぽいのに魔石ではないわね」
メイリーンが小さな魔石ぽい物を検分しながら呟く。
俺の鑑定にも『魔石のような物。魔道具には使用不可』としか出てこない。
「持っているスキルは『召喚』なんですけど、これしか出てこないんです」
ジーナがそっとスキルを使って呼び出したのは手のひらの上に余裕でのる小さな魔石のようなもの。
メイリーンによると魔力はかなり含まれているらしい。
『召喚』というスキルは珍しく有益であることが多いため歓迎されるものではある。お嬢の『くじ引き』が運要素が強いとは言えおそらく『異世界の物品』を呼び出す貴重性とも通じる。条件さえ合うなら『勇者召喚者』になれるかもしれないのだから。
ただ、ジーナは生き物は召喚できないとはっきり言った。
「生物は召喚できないらしいんです。実は野菜や果物などの植物も魔物も反応しないんです。『生きて』いるものは呼べないらしいんです。スキルでは、どうしても私、役立たずですのでできること、少ないですけれど、私、頑張るのでどうか、働かせてください」
泣きそうになりながら語る少女の姿は胸が痛い!
「生来スキルなんて神様がくださったオマケのようなものよ! 人間努力できる環境が有ればそれなりに伸びると思うの! いろんな経験積んで迷宮でレベル上げましょ。人生勢いとハッタリ! 体力あればけっこうなんとでもなるよ!」
お嬢。
励ましているんでしょうが、いろいろ問題有り発言も混じっていますよ。勢いとハッタリは大事ですが、それを主力になさらないようにしてくださることを願いますよ。強く。
「スキルや適性はあれば便利だけど、大事なのはえっと人柄だと思うの。もちろん、できないっていうことは悔しいし、癇癪起こしそうだけど、それだけがわたしじゃないもの! ジナエーナも一緒に迷宮に行こう! ジェフとメイリーンすっごく強いから安全にレベル上げできるよ!」
「あら。お嬢さま。おうちに帰りたいとおっしゃっていたのでは?」
興奮気味のお嬢にメイリーンが水をさす。
「ぇ。あ。あー。パパとママたちに一冬会えないのはさびしいけどぉ、りょーしゅさまが一冬ガパルティで活動して欲しいってお願いされたのはわかってるしぃ」
シドモドと言い訳をはじめるお嬢にジーナとメイリーンが小さく笑う。
「シュナッツ少年とクロエ嬢とすれ違いたいのかと」
情報を足せばぱちりと目を瞬かせたお嬢。これは忘れてたな。お嬢。
「それはいやぁ!!」
はしゃぐお嬢をなだめつつ、ジーナが困った笑顔で寝床を温める温石を準備してきますと腰をあげた。
「わたし、ジナエーナの役に立てることないかしら?」
お嬢がぽつんとこぼした善意をジーナ嬢はそっと拾いあげる。
「ありがとうございます。そのお心だけでうれしいです」
すこしもどかしげなお嬢の前にメイリーンがにこにことかがみ込む。
「お嬢さまはお嬢さま用のお部屋をもうご覧になりましたか?」
「見ているわけないじゃない。帰ってきて夕食してくつろいでたでしょ?」
「三階に主寝室があるそうですよ。ですからそこがお嬢さまのお部屋ですね。一階部分の半分と二階の一部は店舗用に区切られているそうですよ。明日、役場に行く前にお店部分も見ましょうね」
不貞腐れたお嬢に情報を流していく。
「倉庫部分はたくさんあるそうですよ。保存のきく物は置いていけますね」
「つまり、置いておいたら売っておいてもらえる!?」
最近、荷物の余剰を邪険にしているなと思っていたらやっぱり邪魔だと思ってたんすね。お嬢ってばかわいいなぁ。
「必要でしたら一部現金換金作業は致しますよ」
セバスチャン氏がすまし顔で口を挟む。
「食べられる物は置いていかないと思うよ? あんまり」
お嬢の発言にセバスチャン氏の眉が面白いほど下がる。
「よくわからないガラクタもいろいろ出るの。置いていくのはそのあたりかも」
お嬢はくじ引きで食品を出していることが多いがそれ以外に衣服や布、履き物に金属や木製の道具も出してくる。
金物の足のついた木の板。ちょっとした低いテーブル。コドハンで出した組立式の棚。あと俺が主武器に使っているよくわからない金属の棒。(シュナッツ少年は物干し竿とか言ってた)
女性陣に人気のある洗剤。硬いクッション。音の鳴る卵。彩りよく塗られた細い木の棒。
「ほぅ」
「うん。このあたりとか?」
ひょいとお嬢が出したのは彩りよく塗られた細い木の棒。
「おや。色鉛筆ですか。芸術系は世の中安定してからでしょうねぇ」
いろえんぴつ?
「異世界の画材?」
メイリーンがセバスチャン氏に問えば、氏は静かに頷く。
異世界の物品に関してお嬢が寝た後に聞き取りをおこなったところ物干し竿とは洗濯物を干す為の棒であり、武器ではないという知見を得た。
「ステンレスですかねぇ? 頑丈で錆びにくいですね」
とりあえず、次にいい武器をお嬢が用意してくださるまではコレで。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます